軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第454話 いい筋肉してるじゃなぁい

「一体どういうことですか……っ?」

ヴァンピア族の男は困惑していた。

ヴァンピア族の中でも高位の存在である彼は、生まれながらにして死者を操る力を持つ。

それを利用し、都市の墓地に眠る死者たちをアンデッドとして復活させることで、街に混乱を引き起こしたのだ。

だが、どういうわけか、突然その力が上手く使えなくなってしまったのである。

それどころか墓地に足を踏み入れただけで、体中から力が抜けていくのを感じる。

「突如として聖なる力が増大した……っ? しかもここだけでなく、街中の墓地が同じ状況だとは……っ!」

仲間のヴァンピア族たちからも同様の報告を受けていた。

「仕方ありませんね……しかし、最低限の混乱は引き起こせたはず」

それでも彼は慌てることなく、待機していた配下のヴァンピア族たちに命じた。

「さあ、この機に乗じ、人間どもの血を吸って吸って吸いまくるのです! そうしてやつらを我らの忠実な眷属に変えていくのですよ!」

「「「御意」」」

一斉に街中へと散っていく吸血鬼の群れ。

見た目は人間と大差ない彼らは、人々に紛れながら密かに吸血を行い、徐々にこの街を自分たちの支配化に置いていくつもりだった。

そのときである。

「な、なんですか、あの巨大な建物は……? 先ほどまであんなものはなかったはず……?」

どこからともなく現れた巨大建造物。

しかもここから距離があるというのに、猛烈な悪寒が全身を駆け巡った。

よく見ると人々がその建物内に逃げ込んでいく一方で、すでに墓地から解き放たれたアンデッドたちが、逆に建物から逃げるように遠ざかっていく。

「なんという凄まじい力を有した聖域なのですか……っ!? あんな場所に逃げ込まれては、我らヴァンピア族の能力を使うことができなくなってしまう……っ!」

そもそも彼らヴァンピア族は、あまり個々の戦闘力が高くない。

彼のような力のある者なら話は別だが、並みのヴァンピア族はせいぜい人間の平均的な兵士と大差ないレベルだった。

死者を操ったり、血を吸った相手を支配下に置いたりすることで、その足りない戦闘力を補ってきたのだ。

それが封じられてしまうと、もはや彼らに打つ手はなかった。

せいぜい二百人程度しかいない彼らが、単純な戦力だけでこの都市を支配するのは不可能なのだ。

「つまり……お手上げ、ということですね」

「くえくえくえっ! そんなところに逃げ込むとか、さすがにズルいだろう!? 外に出てこい、虫けらどもっ! くえくえくえっ!」

ゴイル族の男は、地下道の入り口前で怒鳴り散らしていた。

しかしどんなに訴えても、中に逃げ込んだ人間たちはそれを嘲笑うかのように、無視を決め込んでいる。

「くえくえくえっ! 一体どうなってやがるんだ!? オレたちが最初に来たときは、街中にこんな穴、なかったはずだぞ!?」

しかもこの穴、どうやら建物の中にまで繋がっているらしい。

穴に逃げ込もうとする人間を入り口前で狙って待機していても、成果はゼロだった。

当初は予期せぬ空からの大襲撃に大混乱に陥ったゴバルード共和国の首都だったが、人々の大半が地下へと避難し、すっかり落ち着きを取り戻しつつあった。

街の兵士たちも、わざわざ地上に出て空の敵と戦うのは得策ではないと判断し、今は地下で待機している様子。

と、そのときである。

苛立ちながら空をぐるぐる回っていたゴイル族の男は、いきなり空が暗くなったことに気づいて「え?」と顔を上げた。

「なんじゃこりゃああああああああああああっ!?」

いきなり現れたのは、聳え立つ巨大建造物。

恐らく百メートルに迫る高さで、空を舞う彼を軽く見下ろしてきている。

「ってか、あっちにも!? 向こうにも!? 何だこれはあああああっ!? くえくえくえ~~~~~~っ!」

一棟だけではない。

街のあちこちに何棟も出現していたのである。

理解不能な事態に、しばらく呆気に取られていたゴイル族の男だったが、やがてハッとして、

「こんな高さじゃ、上から攻撃されちまうじゃねぇか!? オレたちゴイル族の飛行能力を舐めるなよっ! 本気を出せば、雲の上まで飛べるんだぜっ! くえくえくえっ!」

力強く翼を羽ばたかせ、上空へと舞い上がっていく。

一気に先ほどの高層物を見下ろせる高さへ。

「くえくえくえくえっ! どうだ、見たかっ!? オレたち相手に、上を取ろうなんざ、百年早ぇんだよおおおおっ! ……って、これじゃあ、地上の人間どもを攻撃できねぇじゃねぇかあああああああああああっ!?」

さらにその頃、ルーク村から強力な救援部隊が送り込まれた各都市では。

――クランゼール帝国第二都市パルス。

「なんだ、この化け物じみた強さの連中はっ!? 我ら屈強なアルマル族が、手も足も出ないだとおっ!?」

絶叫するアルマル族の男の視線の先にいたのは、青髪の少女や全身ピンク色のマッチョたちだ。

「うふっ、魔族もなかなかいい筋肉してるじゃなぁい♡」

「特にあいつは何なんだ!? まさか、大猿系のアルマル族!?」

――ローダ王国王都。

「なんだ、この、巨人たち、は? しかし、我ら、とは、似て、非なる?」

驚くジャイアル族の男の前に立ちはだかるのは、巨人兵である。

しかも、かつてこのローダを襲った頃に比べると、ドワーフたちの手で大幅に強化されていた。

魔力砲が火を噴き、ジャイアル族を吹き飛ばしていく。

「ば、かな、こんな、はず、は……」