軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第448話 まるで歓迎されていないようだな

「……まったく意味が分からん! 破壊されたはずの防壁が勝手に修復された? 都市に侵入した魔物は空から降ってきた塔が圧殺していった? 挙句の果てには、あのグレートロックドラゴンが地面ごと宙に浮かび上がって、空の向こうに消えていっただと……?」

クランゼール帝国の都市ベガルダに忍び込んだ女は、そこで自ら集めた情報の奇想天外さに困惑し切っていた。

「人間どもが嘘を口にした可能性はない。なにせ幻惑の魔法を使い、強制的に情報を引き出したのだからな。となると、偽りの情報を信じていた……? いや、だが自らの目で見たと語る者も少なくなかった」

女はイライラと頭を掻き毟る。

「だとすればすべて事実……? 俄かには信じられぬが、いったんそうと仮定してみるしかあるまい……。くっ、いずれにしても、この意味不明な話の真実を突き止めなければ、我らの悲願達成にとって大きな障害となるやもしれぬ」

切れ長のその瞳を向けた先には、都市中央に立つ領主の居城があった。

「……さらに詳しいことを知るには、やはり中心的な人物に当たってみるしかあるまい」

さらなる情報収集のため、女は足早に歩き出す。

◇ ◇ ◇

「エデル=アルベイル……って、まさか父上!?」

サテンから念話越しにもたらされた報告に、僕は思わず叫んだ。

『わ、分かりません。ルーク様の御父上がそのお名前であることは存じていましたが、生憎と私は直接その方を拝見したことがありませんので……。ですが、伝え聞く特徴には一致しているかと……』

父上は国家転覆を諮った罪で投獄され、普通に考えれば死罪となったはずだった。

だけど地下牢から脱走してしまったのだ。

それ以来、王宮は全国に指名手配し、その行方を捜し続けてきたものの、手がかりすら掴めていない状態だった。

恐らく他国に逃げられたのだろうと思われていたけど……。

『さらに四人の同行者の姿が確認できます。巨大な棍棒を手にした大男に、魔法使い風の男、眼鏡の男、それに小柄な男……』

間違いない、四将だ。

父上の武功を支えてきた最側近のこの四人もまた姿を晦ましていたのだけれど、やはり父上と行動を共にしていたらしい。

僕はすぐさま瞬間移動で村の入り口に飛んだ。

「っ……」

衛兵たちがあちこちに倒れていた。

アマゾネスたちにも同じ目に遭わされてたけど、彼らは決して弱いわけじゃない。

でも、今度は相手が悪かった。

「ふん、大人しく道を開ければ痛い目を見ずに済んだものを」

「……父上」

その全身から発せられる凄まじい威圧感は、かつてとまったく変っていなかった。

いや、むしろ以前よりも増しているかもしれない。

とても自らの野望を打ち砕かれ、敗軍の将となった人物とは思えなかった。

「ルークか」

父上が僕に気づく。

「ふん、あれから少しも大きくなっていないな。やはり仮にお前に『剣聖技』のギフトが発現していたとしても、十分に使いこなせなかっただろう」

いきなりディスられた!?

どうせ僕はこの三年間でほとんど身長伸びてないよ!

「……どういうつもりですか、父上? 指名手配中の身で、堂々とこの村に不法侵入してくるなんて」

色んな感情をどうにか抑え込みながら問い詰める。

この緊急事態に、村の衛兵たちが続々と集結しており、父上、そして背後に従える四人の男たちを完全包囲しつつある。

ちょうど今、狩猟チームが不在しているのは痛いけれど、それでもこの村には十分過ぎるほどの戦力がある。

衛兵たちはもちろんのこと、冒険者たちもいれば、東方のサムライたちやアマゾネス、それにゴリちゃんを筆頭とするマッチョ軍団もいる。

いくら父上と四将が強くとも、たった五人で戦いを挑むのは無謀だろう。

しかし臨戦態勢を取る衛兵たちに囲まれながらも、父上は平然として、

「どうやらまるで歓迎されていないようだな」

「……当然でしょう」

「私は別にお前に復讐しにきたわけではない。むしろ逆だ」

「逆?」

「私に力を貸せ。お前のその『村づくり』とかいう出鱈目な力が必要になった」

命令口調で告げられたのは、予想外の言葉だった。

てか、復讐の逆とかじゃない気が……。

「どんな理由があるか知りませんけど……それが人にものを頼む態度ですか?」

「……なに?」

頑張って言い返すと、父上の目が鋭くなる。

その圧力に圧し潰されそうになりつつも、僕はこの村の長としての矜持できっぱりと告げた。

「僕は今、王家から直々に自治権を認められたこの村のトップです。対して、父上は指名手配中の犯罪者。もちろん何の権限も権威もありません。そんな人物の要求に応じるはずがないでしょう。そもそも何の詳しい説明もないですし」

「貴様……少し会わぬ間に、随分と偉そうな口を利くようになったではないか?」

父上が剣の柄に手をかける。

一触即発の空気の中、四将の一人が慌てて父上を宥めた。

「お、お待ちください、エデル様。ここは私が代わりに……」

四将の中で最も知略に長け、軍師と呼ばれていた男、ネオンだ。

確か『指揮官』というギフトを持っていたっけ。

「失礼しました、ルーク様。あなた様の言い分は至極真っ当なもの。むしろこちらはお願いをせねばならない立場であることは重々承知しております。ただ、そのお願いは、決して我らの個人的なものではありません。むしろ、人類の存亡に関わる重大なものなのです」

「人類の存亡に関わる……?」

いきなり大きくなった話のスケールに付いていけず、僕は思わずオウム返ししてしまった。