軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第425話 ストレス発散

「悔しいいいいいいいっ!」

武闘会の結果に、一番悔しがったのは恐らくセレンだろう。

前回は決勝まで進んで、ゴリちゃんへのリベンジを誓っていたというのに、今回は準決勝で破れ、ゴリちゃんと戦うことすらできなかったのだ。

「悔しい悔しい悔しいっ」

「ちょっ、セレン!?」

悔しいを連呼しながら、なぜか僕の服を無理やり脱がし始めるセレン。

「何してるの!?」

「ストレス発散!」

「ええええっ!?」

なんとも理不尽な言い分とともに、僕はひん剥かれて裸にされてしまった。

だけどセレンの暴走はそこで終わらなかった。

「って、その手に持ってるものは、まさか……っ!?」

「ふふふふ……痛くしないから……だから今すぐ、これを身に付けなさいっ!」

「嫌だああああああっ!!」

慌てて逃げ出そうとしたけれど、セレンに飛びつかれてあっさり押し倒されてしまう。

それから僕は成す術もなく、無理やりアレを着せられていく。

「うぅぅ……何でまたこんな姿に……」

「うんうん、やっぱりすごく似合ってるわ!」

嘆く僕を余所に、本当にこれで少しストレスが解消されたのか、満足そうに頷くセレン。

なぜか女装姿にさせられてしまったのだ。

女装ペナルティの地獄があった前回と違い、今回はとても平和的に大会が終わったなと思っていたのに!

「今回は何も悪いことしてないよね!?」

「そうね! だから言ってるでしょ! 私のストレス発散だって!」

「理不尽にもほどがある!?」

と、そのときだった。

『本体、大変だ』

いきなり影武者から連絡が入った。

『何かあったの?』

『クランゼール帝国の南部で、魔境から魔物が押し寄せてきてるんだ』

どうやらクランゼール帝国にいる影武者らしい。

『帝国南部の魔境?』

『うん。死の樹海って呼ばれてる、めちゃくちゃ広くて危険な魔境があるんだ』

荒野の村の北に広がる魔境の森とは、比較にもならない規模らしい。

僕はマップを開いて確認してみる。

帝国の南部というと、最近のレベルアップによって、ようやくマップで確認できるようになった地域だ。

『ほんとだ。延々と森が続いてる』

『その死の樹海の脅威から国を守るために作られた要塞都市があるんだけど、このままだと陥落させられそうなんだ』

『……ちなみに君は今、その要塞都市にいるの?』

『うん』

なぜ影武者がそんなところにいるのかはひとまず置いておいて、僕は意識をその影武者に移す。

「っ……これはっ……」

視界に飛び込んできた光景は、予想を遥かに超えた最悪のものだった。

大地に広がる黒い影。

最初はそれが何か分からなかったけれど、よく見るとそれは地面を埋め尽くしてしまうほどの無数の魔物だった。

それが一斉に、都市を護る防壁へと向かっていて、先頭の魔物に至ってはもう間もなく防壁に到達しようとしている。

防壁の上では兵士たちが集結し、応戦しようとしているけれど、明らかに多勢に無勢だ。

帝国兵側の戦力は、およそ千といったところ。

一つの都市を護る兵士の数としてはかなり多い方だろうけれど……。

「……魔物はたぶん、一万どころじゃない」

一万の魔物となると、たとえそれがすべてゴブリンだったとしても、凄まじい脅威だ。

ましてやあの広大な樹海の魔物である。

荒野の北に広がる森もそうだけれど、魔境の魔物というのは、一般的に非常に狂暴で厄介なのだ。

ついに最初の一体が、防壁のところに辿り着いてしまう。

全長四メートルはあるだろう、頭に三本の角を生やしたトリケラトプスのような魔物だ。

兵士たちがすぐさま矢を降らせるも、その硬い鱗に弾かれて体内まで刃が届かない。

ドオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!

次の瞬間、轟音と共に魔物が防壁に激突した。

「「「ぼ、防壁が……っ!?」」」

帝国兵たちが戦慄する。

厚さ三メートル以上はあろうかという防壁に、今の魔物の突進によって、穴が空いてしまったのだ。