軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第404話 君の勝ちだよ

このままディルさんの優勝かと思われたそのとき、ついにセリウスくんが森から飛び出してきた。

「来た! セリウスくんだ! って、空を飛んでる!?」

文字通り、飛んで森から出てきたのだ。

さらに猛烈な風に乗って、ぐんぐん空へと舞い上がっていく。

一応マップ上でセリウスくんの位置を確認していたのだけれど、まさか走るのをやめて飛行しているとは思ってもみなかった。

「空から一気に追い上げてるぞ!?」

「ど、どっちが勝つんだ!?」

「分からねぇっ! めちゃくちゃ際どいところだ!」

セリウスくんは地上約百メートルまで上がっていくと、綺麗な放物線を描いて、今度は地上目がけて落ちてくる。

落下予想地点は、まさにゴール地点の門だ。

「って、まさか、あのままゴールに突っ込むつもり!?」

「ルーク、ゴール地点に!」

「う、うん!」

空飛ぶ公園から様子を見守っていた僕とセレンは、慌ててゴール地点に瞬間移動しようとする。

「っと、フィリアさんも一緒にいくよ!」

「……む? もう朝か?」

「ずっと寝てたでしょ! もうすぐゴールだよ!」

二人を連れてゴール地点の門に瞬間移動。

そこに空から猛スピードでセリウスくんが迫ってくる。

飛行することだけに全身全霊を注いでいるためか、まったく着陸態勢を取ろうという気配がない。

一方のディルさんは、ゴールまであと百メートルにまで来ていた。

列を作った村人たちの大歓声が彼の走りを後押しする。

「あと少しだ! 頑張れ!」

「いい勝負だ! 抜かれるな!」

「空から来てるぞ!」

「……いい勝負? 空から……? まさか……」

そんな観客たちの声で、ようやく空から迫るセリウスくんに気づいたようで、ディルさんが慌てて後方を見た。

「……マジか……」

そう小さく漏らすと、ディルさんは最後の力を振り絞って加速する。

だけど、そのときにはすでにセリウスくんが頭上を飛び越えていた。

「ぬ、抜いたああああああああああああああっ!?」

「ゴール直前の大逆転だあああああああああっ!」

「お、おいっ、けど、このままだとっ……」

大歓声を響かせる村人たち。

しかし同時にある懸念が瞬く間に広がっていく。

このままだとゴールできたとしても、セリウスくんは思い切り地面に激突してしまうだろう。

あの勢いだと、いくらセリウスくんでも絶対に無事じゃすまない。

先にゴールすることだけに精いっぱいで、着陸のことなんて何も考えていないように見える。

「かと言って、ゴール前に助けちゃうと失格になっちゃう!」

「私に任せろ」

フィリアさんがそう告げた次の瞬間、ついにセリウスくんが勢いよく門に飛び込んできた。

長さ五メートルほどある分厚い門だけれど、ギリギリ途中で落下せずに潜り抜けていく。

ゴウッ!!

門を抜けた先で、凄まじい上昇気流が発生する。

フィリアさんが魔法で起こした風だ。

それでもセリウスくんの落下の勢いを完全に抑えることはできなかった。

まだそれなりの速度を保ったままで、地面にぶつかってしまうかと思われた、そのとき。

「セリウス!」

すんでのところでセレンがその身体をキャッチ。

「って、重っ……」

だけどいつの間にかセレンよりも大きくなってしまった彼の身体は、落下の勢いもあって予想以上に重たかったらしく、そのまま二人一緒にゴロゴロと地面を転がってしまった。

「いたたた……ちょっと前まで私より小さくて、身体も軽かったはずなのに……」

「う~ん……」

二人とも無事のようだ。

僕は慌ててセリウスくんにポーションを飲ませる。

するとセリウスくんはカッと目を見開いて、

「け、結果は!? ぼくは勝てたのかっ!?」

まさにその瞬間だった。

ディルさんが門を潜ってゴールしたのは。

「……無念……」

ディルさんも不眠不休で走り続けて限界だったのか、その場に崩れるように倒れ込む。

「セリウスくん、おめでとう。君の勝ちだよ」