軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第323話 姉上のを使えばいいのに

「ガイさん、エドウ城ってあれですよね? あの高い建物」

「うむ。あれがトコガワ将軍の住む城である。もっとも、あの部分は天守閣といって、基本的にはやぐらとして利用されている」

街の中心に聳え立つ塔のようなもの。

屋根が何重にも重なっていて、確かにあの頂上からであれば、あまり高い建物のないこのエドウの街を見渡すことができるだろう。

「じゃあ、あそこに移動しちゃいますね」

僕は瞬間移動を使い、遅刻しそうなのにまだ家臣と揉み合っているマサミネさんを連れて、エドウ城へと飛んだ。

「殿っ! 急がねば遅刻しますぞ!」

「それこそ、伊達家の沽券にかかわりまする!」

「はっ!? そうであった! こんなことをしている場合ではない! 一刻も早く出ねば……」

「あ、もう着きましたよ」

「「「っ!?」」」

周囲の光景が切り替わったことに気づいて、マサミネさんとその家臣たちが絶句する。

「こ、ここは、エドウ城の門の前!? 一体いつの間に……っ? だが、これなら十分、間に合いそうじゃ!」

首を傾げつつも、急いで門のところへと向かうマサミネさん。

そこで衛兵に僕たちのことを話し、許可が得られたのか、しばらくすると城内へと通された。

ところでこのエドウ国は、代々トコガワ将軍が治めているそうだ。

元々はキョウ国の一部だったそうだけれど、長く続く乱世のどさくさに紛れて、トコガワ家が独立を宣言。

当初はそれを認めないキョウ国との間で紛争が続いたものの、今では独立を認められ、両国の関係も良好だという。

「余が将軍イエアスである。話は聞いた、旅の者たちよ。あの魔境の山脈を超えてきたそうじゃの」

畳敷きの広大な謁見の間。

その最奥で僕たちを出迎えてくれたのが、このエドウ国を治めるイエアス将軍だった。

かなり恰幅がいい中年男性で、マサミネさんと同様、頭にちょんまげを結っている。

だけど将軍というには、かなり柔和な印象だった。

「はい。山脈の西側、セルティア王国から参りました。僕は代表のルークです」

「見たところ、まだ十かそこらにしか見えぬが、仲間がいるとはいえ、その歳で山脈を踏破するとはの」

「いえ、十四歳です」

「……そ、そうであったか。しかし、それでも十分に若いじゃろう」

思わず間髪入れずに訂正してしまった。

マサミネさんがこっちを見て少しハラハラしているけれど、幸い将軍は特に気にした様子もない。

僕は慌ててあるものを取り出した。

「これは我がセルティア王国でも、有数の鍛冶師が打った 剣(つるぎ) です。どうか、お納めください」

「おお、よいのか?」

献上品である。

急に将軍と謁見することになったので、村にいた分身に瞬間移動で持ってきてもらったのだ。

「この剣、実は自動修復する機能がありまして」

「なんじゃと?」

実はビヒモスの素材を使った剣である。

「仮に真っ二つに折れてしまったとしても、しばらく置いておけば勝手に元通りになってしまうのです」

「そ、そのような剣が……俄かには信じられぬが……」

「では、実際にお見せいたしましょうか?」

このビヒモス素材の剣は、すでに村で販売されている。

注文が殺到していて、供給が追い付いていないけれど。

狩猟隊には特別に先行販売したので、今セレンやセリウスくんが持っているのもそうだ。

「試してみればいいのね? セリウス、ちょっとあんたの貸しなさい」

「え?」

セリウスくんの剣を受け取ったセレンが、それをゴリちゃんに差し出す。

「何で僕のを……。姉上のを使えばいいのに……」

「うふん、これを叩き割っちゃえばいいのねぇん?」

ぼやくセリウスくんを余所に、剣を手にしたゴリちゃんが、その腹に拳を思い切り叩きつけた。

バゴンッ、と強烈な音が響き、刀身がぽっきりと折れてしまった。

「ガイさん、この剣に回復魔法を」

「御意」

そしてガイさんが回復魔法を使うと、見る見るうちに刀身が元に戻っていく。

「放っておいても修復されるのですが、回復魔法でより早く治すことができるんです。人間の身体と同じですね」

「な、なんということじゃ……っ! 本当に修復してしまったではないか……っ!」