軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第291話 助太刀するわぁぁぁん♡

「はぁ、はぁ、はぁ……くっ、なんてしつこい連中なのだっ……」

彼女は息を荒らげ、背後からひたひたと追いかけてくるその群れを睨みつけた。

イビルハイエナと呼ばれる魔物の群れだ。

平均して二十匹ほどで群れを形成するこの魔物は、この砂漠で最も忌み嫌われている。

正直、戦闘力そのものは大したことがない。

だが狡猾で慎重なハイエナたちは、獲物がこの過酷な環境下で衰弱したり、あるいは他の魔物と戦って負傷したりして、自分たちが優位に立つ瞬間をじっと待ち続けるのだ。

決して獲物に休む時間を与えない。

群れの中で交替しながら休みを取ることで、いつでも獲物に襲いかかれるようにしておくのである。

もし奴らの前で眠りにつこうものなら、すぐさま奇襲を受けて餌になるだろう。

彼女を含む総勢十名にも満たないその集団は、もうかれこれ丸三日は後を付けられていた。

ただでさえ過酷な環境下のこの砂漠で、ロクに休みも取れずに歩き続け、すでに彼らの体力は限界に達しつつある。

「だ、大丈夫ですっ……あと少し、あと少しですっ……。あと少しで、小さなオアシスに辿り着けるっ……。そこまで行けばっ……」

そう元気づけるのは、腰に剣を提げた男性だ。

屈強な体躯の若い戦士だが、すでにその顔にも疲労の色がありありと浮かんでいる。

すでに意識が朦朧とし始めている者や、真っ直ぐ歩けなくなっている者も多い。

「(もうみんな、戦う気力も体力も残ってなどいない……。あの邪悪なハイエナたちには、それが分かっているはずだ……。きっと近いうちに仕掛けてくる……。それに、たとえオアシスに辿り着けたところで、状況が好転するわけではない……もはやこれまでか……)」

彼女は理解していた。

もはや彼女たちを待つのは、あのハイエナどもの餌となる未来だけだ、と。

「(国を取り返すこともできず、こんなところで死ぬとは……っ!)」

と、そのときである。

ついにイビルハイエナたちが動いた。

「「「うひゃひゃひゃひゃひゃ」」」

この三日間ずっと聞かされ続けてきた忌々しい鳴き声を響かせ、彼女たちの周囲をぐるりと取り囲んでくる。

すぐさま武器を手に取り、残る気力を振り絞って応戦しようとする。

彼女も「ただで死んで堪るかっ! 一匹でも道連れにしてやる……っ!」と鬼気迫る表情で、腰のナイフを抜き放った。

突如として空が暗くなったのは、まさにハイエナたちが躍りかかろうとした瞬間だった。

「……へ?」

空を見上げた彼女は、あまりにも信じがたい光景にこのピンチを忘れて呆けてしまう。

「じ、じ、じ、地面が……浮いてる……?」

最初は疲労のあまり見てしまった幻覚かと思った。

だがどうやら見えているのは彼女だけではないらしく、他のみんなもポカンと口を開け、空を見上げている。

イビルハイエナたちもまた、襲撃を忘れて立ち尽くしていた。

そのとき空飛ぶ地面から何かが降ってくる。

砂の上に着地を決めたのは、

「うふぅ~~んっ! 助太刀するわぁぁぁん♡」

筋骨隆々の大男だった。

……いや、果たして男と呼んでいいものか。

ピンク色のフリフリの衣服を身に着け、頭に輝くティアラ。

そして長い金髪はリボンでツインテールに結ばれ、顔にはバッチリ化粧が施されている。

完全に得体の知れない存在だったが、しかし当人が「助太刀する」と告げており、敵対的な人間ではなさそうだ。

今は頼るしかなかった。

「行くわよぉんっ!」

地面を蹴ったその大男が、凄まじい速度でイビルハイエナに接近。

ハイエナが遥か先まで吹き飛ばされていた。

「な、何という速さだっ!?」

高い俊敏性を持つはずのイビルハイエナが、反応すらできなかった。

あの筋肉を持ちながら、信じられない素早さも持っているというのか。

「「「うひゃひゃひゃひゃひゃ」」」

「奴らっ! 逃げていくぞ……っ!」

一瞬で大男の実力を悟ったのか、イビルハイエナたちが慌てて逃走していく。

だがその直後、

「逃がしはしないわ!」

「うむ、全滅させるぞ」

「「「~~~~~~ッ!?」」」

空飛ぶ地面から新手が降ってきて、イビルハイエナの群れに襲いかかったのだった。