軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第223話 普通は天使が勝つのでは

『こういうの、普通は天使が勝つのでは……』

『ケケケ、見ろよ、天使のやつ、説得材料が少な過ぎて、さっきからロクな主張もしてきやしねぇ。もう心は決まってんだろ? ならそれに従えよ』

『くっ、ここままでは……っ! こうなったら力づくでも……っ!』

『ぎゃっ!? お、おいおい、それが天使のやることかよ!?』

心の天使と悪魔が戦い始めた。

不意打ちもあって、天使の方が優勢だ!

『ひ、卑怯者っ!』

『なんとでも言いなさい! 正義のためなら、いかなる手段も許されるのです! ライトブレードっ!』

『ギャアアアアッ!?』

ついには断末魔の叫びを上げ、悪魔が消えてしまった。

『ふふふ、私の勝ちですね! さあ、ルーク! 悪しき心は消滅しました! 私と共に、大人しく何もせずに試合を見守り――』

僕はその天使を鷲掴みにする。

『――え?』

「うん、正義のためなら、いかなる手段も許されるよね?(にっこり)」

『ちょっ、待っ……』

僕はそのまま天使を握り潰してやった。

晴れやかな気持ちでリングへと目をやると、今まさに試合が始まるところらしく、セレンとノエルくんが闘志を燃やし合っている。

そんな二人には悪いけれど、僕はノエルくんだけに村人強化スキルを使った。

あまりに強化倍率が高すぎると違和感が出そうなので、一・二倍くらいにしておく。

そして大歓声の中、試合が始まった。

盾を構えるノエルくん。

前の試合、盾の投擲でフィリアさんが破れたことを見ていたこともあり、セレンは警戒するように距離を取っている。

そこからセレンは魔法で攻撃することもできるのだけれど、盾で防がれることが分かっているので、じっと相手の出方を窺っているだけだ。

このまま硬直状態になるかと思いきや、ノエルくんが前に出た。

「「っ!?」」

いつもより速い動きに驚くセレン。

……いや、ノエルくん自身も驚いている。

村人強化スキルを使っているなんて知らないもんね。

あまり距離を詰められては危険なので、セレンは間合いを取ろうと後退。

敏捷性が高いこともあって、ノエルくんは強化されていても、なかなか近づくことができないでいる。

うーん、もうちょっと倍率を上げた方がいいかな?

その分、効果時間は短くなっちゃうけど……。

僕が判断に悩んでいると、突然、ノエルくんがその場で転んでしまった。

いきなりのことに観客が騒めく。

なんか今、物凄く不自然な転び方じゃなかった?

それにリングがちょっとキラキラしてる気が……。

立ち上がったノエルくんはしかし、またしてもひっくり返ってしまう。

まるで滑ってしまったようなこけ方だ。

「って、まさか……」

太陽光を反射して煌めくリング。

こんなに輝くはずがない。

「……リングが凍っている?」

セレンが笑った。

「どうかしら、ノエル? これじゃあ、まともに動けないでしょ?」

「滑る……」

どうやらセレンはノエルくんから逃げているだけじゃなかったらしい。

その間にリングを魔法で凍らせていたみたいだ。

リングが氷のリンクになっちゃった!

「今ちょっと上手いこと言ったかも? って、そんなこと言ってる場合じゃない!」

身動きが取れなくなって、ノエルくんがピンチだ。

だけど、まだ負けたわけじゃない。

セレンだって、ノエルくんにダメージを与える方法がないはず。

ピキピキピキ……。

「足が……」

氷結したのはリングだけではなかった。

それはノエルくんの足にまで侵食し、凍り付かせようとしていた。

「さすがに全身が凍り付いたら戦闘続行不能で負けよね?」

「っ……負け、ない……っ!」

ノエルくんは一か八かの賭けに出た。

まだ上半身を動かせるうちに、セレンに向かって盾を投げつけたのだ。

だけどセレンは一枚も二枚も上手だった。

そんなことなど予想していたとばかりに、リングの上をすいっと滑って飛んできた盾を回避。

最後の攻撃手段にして最強の防御手段を失ったノエルくんは、がっくりと項垂れる。

「ぼくの……負けです……」