作品タイトル不明
第219話 攻撃を盾に誘導するなんて
そうして翌日、予定通りに準々決勝が始まった。
会場には昨日までより多くの観客が詰めかけていて、盛り上がりはまさに最高潮に達しようとしている。
その第一試合はフィリアさんとノエルくんだ。
二人とも狩猟チームでよく互いを見知った関係だし、どんな戦いになるのか楽しみだ。
試合開始と同時、フィリアさんが矢を番えた。
凄まじい突風が吹き荒れたかと思うと、それがその矢へと収束していく。
放たれた矢は、もはや目で追うことすら不可能だった。
気づいたときにはもう、ノエルくんの盾と激突し、そこでギュルギュルと高速回転していた。
そのまま盾を貫いてしまいそうなほどの勢いだったけれど、さすがにしばらくすると力を失って静止した。
だけど驚くべきことに、盾に刺さっている。
あの盾、確かミスリル製だったよね……。
それに矢が刺さるなんて、どれだけの威力があったのか。
「ふむ、やはり正面から貫くのは不可能か」
「……」
「だが、これならどうだ?」
続いてフィリアさんは、何と同時に十本もの矢を同時に番えてしまう。
そうして放たれた矢の雨が、ノエルくんに襲いかかった。
しかもそれらの矢はそれぞれ異なる軌道で動いていた。
風で操作しているのだろうと思うけど、こんな真似ができるなんて。
「っ!」
盾を構えるノエルくんに対して、矢は四方八方から迫ってきた。
これではさすがのノエルくんも、盾一つでは防ぎ切れないだろう。
誰もがそう思ったけれど、そこでノエルくんは信じがたい動きを見せた。
どういうわけか、自分の身体を無防備に晒しながらも、盾を空に向かって高々と掲げたのだ。
「ルアーシールド!」
次の瞬間、フィリアさんの操作を離れて、すべての矢がその盾へと吸い込まれるように飛んでいく。
そのまま次々と盾に直撃していった。
「なっ……攻撃を盾に誘導するなんてっ……いや、確か遺跡でも味方に向かった攻撃をこんなふうに自分に引き付けていたか……」
反則じみた技に、さすがのフィリアさんも唖然としている。
バルラットさんみたいに体力を削ってから隙を突いてもダメだったし、ほんとどうやったらノエルくんの鉄壁を破れるのだろう?
それでもノエルくんは防御に全振りしているので、なかなかフィリアさんに攻撃ができない。
少しでも距離を取られたら、まったく届かなくなるからだ。
お陰で試合は硬直状態に陥るかと思いきや、
「シールドバッシュ・改!」
えっ、あんな距離から!?
と思った次の瞬間、盾がノエルくんの手から離れ、フィリアさん目がけて一直線に飛んでいた。
突進の勢いを上乗せし、盾を前方に向かって投擲したのだ。
「なっ!?」
いきなり飛んできた盾に、フィリアさんは対応できない。
直撃を受け、吹き飛ばされてしまう。
「がっ!?」
そのまま盾と一緒にリングの外へ。
場外負けだ。
「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」」」
まったく予期していなかった結末に、観客が絶叫する。
これでノエルくんが準決勝への進出を決めたのだった。
準々決勝の第二試合は、セレンとガイさんだった。
ガイさんはアレクさんの冒険者パーティの一員で、『白魔法』のギフトを持つ。
加えて屈強な体躯から繰り出す、棍を使った武技も得意としていた。
治癒をしながら自らも前衛で戦えるという珍しいタイプだけれど、自分の身体に強化魔法をかけ、それによって身体能力を底上げしているらしい。
「破ぁぁぁっ!」
「っ!」
ガイさんが猛烈な勢いで振り回す棍を、セレンが素早い身のこなしで躱していく。
すごい、あれを完全に見切っているみたいだ。
ガイさんの棍捌きは見事だけれど、ギフト由来のものではなく、あくまでも努力で身に付けたものだ。
幾ら身体強化による上乗せがあっても、セレンには通じないらしい。
だけどそのときだった。
「光よ!」
「~~~~っ!?」
突如として鮮烈な光が弾けて、セレンが思わず目を瞑る。
「貰った!」
その瞬間、視界を奪われたセレンへ、ガイさんは渾身の一撃を繰り出した。