軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第179話 村は王都に一時移転しました

「これは一体どういうことだ!? 街などないではないか!」

「そ、そんなはずは……っ! 確かについ昨日まで、荒野の真ん中に巨大な都市が存在していたのです!」

「だとしたらなぜそれがない! まさか街が一夜にして消失したとでも言うつもりか!」

「ひぃぃぃっ!」

アルベイル卿の怒声が荒野の空へと響き渡る。

ついに荒野へと辿り着いたアルベイル軍二万が見たのは、ただただ広がる荒れ地と、その向こうにある魔境の森だ。

話に聞いていた都市など、影も形もない。

「まさか、最初から誤った情報だったということか?」

「いえ、そんなことは不可能なはずです。調査兵が実際に何度も見ていますし、村に行ったことがあるという領民は何人もいたのですから」

「……皆が……幻覚を……見せられていた……?」

「ほほほ、そんな大規模な幻覚などあり得ませんよ」

「ならば一体この状況をどう説明できるというのだ。街が動いてどこかに行ってしまったわけでもあるまい」

四将たちも困惑している中、荒野を必死に駆け回っていた斥候部隊が戻ってくる。

「こ、荒野の中心へと伸びる謎の道路を発見いたしました……っ!」

「道路だと?」

侯爵が馬を走らせていくと、そこには確かに一本の道路があった。

美しい石畳のそれは真っ直ぐ荒野を貫くように伸びている。

その道路に沿って進んでいくと、前方に何かが見えてきた。

「あれは……石碑か?」

道路が途切れた場所にあったのは巨大な岩だ。

そこには何やら文字らしきものが描かれており、侯爵はそれを読み上げた。

「『村は王都に一時移転しました。村長ルーク』だと? 何だ、これは!? 奴はふざけているのか!」

このときは石碑の内容など取り合うこともなく、斥候部隊にさらに範囲を拡大して周辺を探索するよう命じた侯爵だったが。

結局、何も見つけることができずに、ひとまずここからほど近い北郡最大の都市リーゼンへと兵を移動させるのだった。

そんな彼の元へ、王都から急報が届いたのは、荒野から引き返した翌日のこと。

「お、王都がっ……な、謎の軍に攻め込まれ、あっという間に王宮を奪われてしまったとのこと……っ!」

「何だと!? ネオンはどうした!?」

「お、恐らく、敵に捕らえられたのではないかと……」

「使えない奴め! だが謎の軍だと……? 奴の率いる兵を破って短期間に王都を奪うなど、そんな真似ができる軍は思い至らんぞ」

「そ、それが……王都の傍に突如として謎の都市が出現し、そこから兵が乗り込んできたそうで……」

「……は?」

「王都だ! すぐさま王都に向かうぞ!」

その後、アルベイル軍は王都へと引き返すこととなった。

無論、王都を奪い返すためである。

だがその道中、彼らは幾度となく襲撃を受けてしまう。

「また物資をやられましたっ!」

「兵たちも休むことができておりません……っ!」

夜の野営中、どこからともなく現れる敵兵。

彼らは軍の命とも言うべき武器や食糧を燃やすと、まるで消えるように去っていく。

どんなに厳しく警戒していても、敵兵の接近を捕捉することすらできない。

それどころか、夜通し敵襲を知らせる大音量の鐘が鳴らされ続けるせいで、兵たちはロクに休息を取ることができず、加速度的に疲弊していった。

次第に離脱する兵も増えてきてしまう。

しかし食糧不足もあり、兵数が減る方がかえってありがたくなるほど、アルベイル軍はこの謎の夜襲に悩まされ続けた。

「荒野との往復もあり、兵の疲労はピークに達しております。食糧も不十分ですし、ここは一時態勢を整えるべきでは……」

「ならん! 悠長にしていれば、諸侯の軍が参戦してくるだろう。そうなればますます王都の奪還は難しくなる。幾ら兵が欠けようと構わん! とにかく進軍を急がせろ!」

配下の案をアルベイル卿は一蹴する。

アルベイル軍の苦戦が知れ渡れば、これまで傍観を決め込んでいた諸侯が一気に打倒アルベイルへと動き出す可能性があった。

ゆえに一刻も早く、王都を再び手中に納めなければならないのだ。

そうして強行軍の末、ようやく前方に王都が見えてきたときには、兵数は半分以下にまで落ち込んでしまっていた。