軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第160話 すぐさま応戦せよ

「まったく、ご当主様には困ったものだ」

そう溜息混じりに呟いたのは、フレンコ軍を率いる将官の一人、ルドルフだった。

彼が仕えるフレンコ子爵は、仕事を家臣に押し付け、連日、ドルツの女を捕まえては楽しんでいた。

長年にわたって争ってきたドルツ子爵に勝利したことが嬉しいのは分かるが、まだ完全にこの地を支配できたわけではないのだ。

「色々と不安定な状況だ。せめて昼の間くらいは、しっかり指揮を執っていただきたいものだが……」

加えて、ドルツ子爵が一体どこにいるのかも分かっていない。

ここ領都を落としたときには、すでに姿はなかった。

恐らく敗北は確実と見て、先に逃げ出したのだろうが、いつ再び兵を率いて領都奪還のために攻めてくるとも分からないのだ。

「もっとも、現在のドルツの状況を考えると、それも容易ではないだろうがな」

元々は戦力が拮抗していたはずの両陣営。

その差が急激に開いてしまったのは、領民の大量離脱により、ドルツが大幅に弱体化したことが原因だった。

そもそも領民が減り続けているのだ。

再び軍を結成しようにも、十分な戦力を確保するのは簡単なことではない。

「だが今後、フレンコ領からも人が減っていく可能性は高い。いや、すでに少しずつ減ってきている。それもこれも、アルベイル公爵領に新たにできた村のせいだというのだが……」

謎の村の噂は彼も伝え聞いていた。

俄かには信じがたい話ばかりだったが、ドルツ領の状況を見れば信じざるを得ない。

フレンコの場合、地理的にドルツより影響が軽微だったが、今後、遅れて急激な領民の離脱が起こり、そのうち同じ運命を辿るかもしれなかった。

「ご当主様があの様子だと、我が領も危ないかもしれぬな……」

と、そのときだ。

城の二階部分に設けられた外回廊を歩いていた彼は、城内の庭に不思議なものを発見する。

「何だ、あれは? 階段? あんなところに階段などあっただろうか?」

地下へと続く階段だ。

占領した後に城内を隈なく探索したが、庭にそんなものなどなかったように思う。

その直後、階段から飛び出してきた複数の人影に、ルドルフは我が目を疑った。

「なっ!?」

武装した集団だ。

そしてどう見ても、フレンコ軍の装備ではない。

「て、敵襲だと!? 馬鹿な!?」

突然のことに理解が追い付かない彼に、更なる追い打ちが襲い掛かる。

少し離れた場所にも同種の階段が出現しており、そこからまた別の集団が城内へと乱入してきたのだ。

「あそこにも!? いや、向こうもだ!? い、一体何が起こっている!? くっ……て、敵襲! 敵襲だ! すでに城内への侵入を許している! すぐさま応戦せよ!」

動揺の極致にありながらも、彼は必死に声を張り上げた。

そんな中、彼が見たのは、この城から逃げ出したはずの人物で。

「あ、あれは、ドルツ子爵!? これはドルツ軍なのか!?」

装備がバラバラのためすぐには分からなかったが、ドルツ子爵がいるというなら間違いないだろう。

この城を取り戻すため、自ら乗り込んできたのだ。

「っ!?」

そのとき彼に向かって、地上から弓を引く者が見えた。

しかし彼我の距離は三百メートル以上あり、そんなところから射貫けるはずがない。

その楽観的予測は一瞬で打ち抜かれた。

放たれた矢が唸りを上げながら一直線に迫りくる。

ギリギリのところで身を伏せていなければ、彼の頭は吹き飛んでいたかもしれない。

轟音が鳴り響き、恐る恐る振り返ると、彼の背後の壁が隕石でも落ちたように凹んでいた。

「な、な、な……」

あんな化け物じみた矢を放てる人間など、見たことがない。

無論、ドルツ軍にそのような兵がいるという話も聞いたことがなかった。

だが彼を戦慄させたのは、その弓士だけではなかった。

氷の塊を射出しながら、二本の剣で次々とフレンコ兵を斬り飛ばしていく少女。

巨大な盾を構えた突進で、フレンコ兵数人を吹き飛ばす大男。

風を纏い、目にも止まらぬ速度で駆けながらフレンコ兵を圧倒する少年。

他にも尋常ではない強さの猛者ばかり。

事態に気づいたフレンコ兵が続々と集まってきているが、せいぜい百人ほどの集団を、まるで食い止めることができないでいる。

「い、一体、どうなっているんだ……」