軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第119話 見ての通りバーベキューだ

「一体いつになったら出られるんだ……」

率いていた部隊が城壁によって閉じ込められてしまい、その騎士はどうすることもできずにいた。

アルベイル家の家臣である彼は、先日のシュネガー家との戦争にも参戦している。

そこでラウルの力を目の当たりにしていたため、今回の戦いは楽勝だろうと踏んでいたのだ。

だが蓋を開けてみればこんな状況である。

少し前にどこからか魔物の雄叫びのようなものが聞こえてきたときは、魔境に棲息している魔物が襲い掛かってくるのではと戦々恐々としていた。

しかし今は静かなもので、そんな気配もない。

気づけば彼も兵士たちも、退屈のあまり地面に座り込んでしまっていた。

『聞こえるか?』

「っ!?」

不意にどこからともなく声が響いてきて、彼は思わず周囲を見回した。

『近くにはいない。お前の頭に直接話しかけているからな』

「頭に直接……?」

何らかの魔法か、あるいはギフトだろう。

敵の中にはそんな力を持つ者がいるのかと、彼は警戒を強めた。

『戦いは終わった。お前たちの大将は捕らえられ、本隊はすでに降伏している』

「な、なんだと……っ!? う、嘘を言うな! ラウル様が負けるはずはない……っ!」

告げられた内容に衝撃を受け、思わず叫んでしまう。

兵士たちが騒めき始める中、彼はこれが敵の罠ではないかと睨み、

「そうやって動揺を誘おうという魂胆だな!? その手には乗らぬぞ!」

『動揺を誘うもなにも、どうせ城壁に閉じ込められて何もできないだろう。わざわざそんな面倒な真似をすると思うか?』

「ぐ……」

正論を言われ、あっさりと反論できなくなる。

『もしそこから出たいなら命令に従うんだな』

「め、命令、だと……?」

『まずは全員、身に付けている武器を外して一か所に集めろ。……従いたくないというならそれでも構わないが、そのうち餓死者が出るだろうな』

「くっ……」

先ほどつい声に出してしまったせいで、すでに兵士たちが「ラウル様が負けた?」「じゃあ戦いは終わりか」「ここから出してもらえるんだろうか?」などと喜び始めている。

もはや士気を保つことなど不可能で、他に選択肢などなかった。

「分かった……降伏しよう」

彼が命じると、兵士たちはすぐに武器を捨てた。

元から戦いの大義が怪しかったことに加え、他の部隊と分断され、城壁によって閉じ込められるという前代未聞の状況だ。

反抗するものは一人もいなかった。

ズズズズズズズズ……。

「じょ、城壁が……っ!」

「やっと出られる!」

彼らを閉じ込めていた城壁が動き出し、ようやくこの閉鎖空間から脱出することができた。

その後は謎の声に従って複雑な迷路内を進んでいくと、やがて街が見えてくる。

「何だ、あの巨大な建造物群は……? こ、これが本当にたった一年で荒野に築かれた街なのか……?」

予想外の連続に、彼は眩暈すら覚えた。

「いや、そんなことより、本隊や他の部隊は……」

『心配するな。そこを真っ直ぐ進んでいけば合流できる』

「……わ、分かった」

警戒しつつも大人しく指示に従う。

そしてその先で彼が見たものは――

「この肉マジでうめええええっ!」

「こっちの豚もめちゃくちゃ美味しいぞ!」

「肉だけじゃねぇ! 野菜も信じられねぇ美味さだ!」

――バーベキューを満喫する仲間たちの姿だった。

「は……? な、何をしているんだ、これは……? じゅるり……」

漂ってくる香ばしい匂いに、自然と口から涎が溢れてくる。

『見ての通りバーベキューだ。もちろんお前たちの分も用意されている。好きに食べてもらって構わない』

「なっ……」

そこへ見慣れた者たちが声をかけてきた。

「おお、ペル殿! 貴殿も来たか!」

「早く食べねぇとなくなっちまうかもしれねぇぞ!」

「っ! シェル殿! それにバイデン殿も!」

旧知の騎士たちだった。

彼らも別の部隊を率いていたはずだが、どうやら共に降伏していたらしい。

「こ、これは一体どういうことなんだ……? じゅるり……」

「どうもこうも、ルーク様の計らいだ! むしゃむしゃ。俺たちがロクに飯も食わずに来たと知ってか、わざわざ用意してくださったんだぜ! むしゃむしゃ」

「食べるか話すかどちらかにしろ……じゅるり……」

「ペル殿こそ、涎を抑えられてないぞ」

実は今回の戦い、強行軍だったこともあって、十分な食糧が用意されていなかったのだ。

そのためどの兵士もかなり空腹に襲われていた。

「そんなことよりペル殿、早く部下たちに許可を与えた方がよいぞ。判断が遅れれば遅れるほど恨まれてしまう」

「っ!」

言われて振り返ってみると、部下たちが物凄い顔で彼を見ていた。

幾ら腹が減っていて目の前に焼かれた肉があると言っても、直属の上官を無視して勝手に食べ始めるわけにはいかないからだ。

このままでは恨まれるどころか呪い殺されかねない。

彼は慌てて叫んだ。

「ぜ、全員、食事を許可する!」

「「「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」」」