軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第110話 閉じ込められた

城壁の途切れた部分から突入したラウル軍は、すぐにその異常に気が付いた。

すぐ目の前にまた新たな城壁が立ちはだかっていたからだ。

さらに右にも左にも巨大な壁が存在している。

しかし四方を囲まれているのではなく、壁の一部が途切れており、どうやらそこから先に進むことができるようだった。

「ちっ! 城壁ごときで俺の進軍を止められると思うなよ!」

ラウルはそのまま兵を進めた。

右を曲がるとその先は行き止まりになっていたため、再び右へ、次は左にへ、また左へ……そうして左右どちらにも進める直線通路に出てしまう。

「くそっ! 何だ、これは!?」

さすがのラウルも戸惑い始めていた。

せいぜい何枚かの城壁が行く手を阻んでいるだけかと思っていたら、どうもそんな生易しいものではなかったらしい。

ついには袋小路に辿り着いてしまったことで、ラウルはこの城壁群の正体に思い至った。

「こいつ、迷路になってやがるのか……っ!?」

しかも城壁によって築かれた巨大迷路だ。

こんなものが一晩のうちに出現するなど、どう考えてもあり得ない話だった。

「(まさか、これもすべて奴のギフトの力じゃねぇだろうな……っ!? もし本当にこんな真似が可能だとしたら、もはやこれまでとは戦い方そのものが一変しちまう……)」

それこそ確かな真実だったが、ラウルは首を振って否定する。

「(いいや、そんなはずはねぇ! あいつのギフトは『村づくり』だ! こんなもん、どう考えても村じゃねぇっ! 恐らく、奴の傍に相当な魔法の使い手がいやがるんだろう……っ!)」

一夜にして更地に要塞を作り上げたという、伝説の土魔法使いの話を思い出す。

どんな手を使ったかは分からないが、それに匹敵するような存在を、ルークが仲間に引き入れたと考えるのが自然だと、ラウルは決めつけた。

「(だが、これほどのものを築くのに相当な魔力を消耗したはず……っ! その伝説の土魔法使いってのも、数日はロクに魔法を使えなくなっちまったって話だからな!)」

むしろこれはチャンスだと、ラウルは思い直す。

もしこのレベルの土魔法使いとまともに戦っていたら、かなりの苦戦を強いられていたかもしれないのだ。

しかし今ならこの城壁の迷路を突破しさえすればいい。

「全軍で動いていたら面倒だ……っ! 幾つかの部隊に分けて、正しいルートを探れ!」

ラウルは指示を飛ばす。

このまま五千の兵で進んでいては、迷路の攻略に時間がかかってしまうだろう。

そこで何隊かに分けることにしたのだ。

どこか一つの部隊でも迷路を抜けることができたなら、即座に全軍に正しい道順を伝えさせ、再び合流すればいい。

……結論から言えば、この判断は大きな失敗であった。

「どうやらこのルートは行き止まりのようだな……」

本隊から分かれ、ルート調査のために先行していたその総勢五百人ほどからなる部隊は、先が行き止まりになっていることを突き止めて、元来た道を引き返そうとしていた。

部隊を率いているのは、アルベイル家に長年仕えている家臣の一人だ。

「それにしても、一体これは何なのだ……? 城壁で作られた迷路など……我々は一体どんな敵と戦っているんだ……?」

大人しく上の命令に従いつつも、経験豊富な彼ですら、未だ遭遇したことのないこの事態を前に困惑の極致にあった。

自分たちは荒野に築かれた街を攻めるはずだった。

それなのに、まだその街の姿すら見ることができていないのだ。

と、そのとき。

ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!

「何だっ!? 地震か!?」

「た、大変です! 城壁が……っ!」

「っ!?」

部下が指さす方向に目をやって、彼は絶句した。

信じられないことに、この大迷路を構成している城壁の一部が、彼らの目の前で動き出していたのだ。

しかもそれは、彼らが入り込んだこの袋小路に、ちょうど蓋をしてしまうような形で。

「ぜ、全力で走れええええええええええっ!」

慌てて叫ぶが、もう遅い。

巨大な城壁が彼らの退路を完全に塞いでしまった。

「閉じ込められた……?」