軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

10話:格の違いってやつね

「なっ……」

セリーナは目を見開いた。

(まさか、私が駄々を捏ねるとでも思っていたの?)

それなら安心してほしい。

私の、カミロへの想いなど婚約してから半年くらいで消費された。

私と彼の関係なんて、責務と束縛しかなかった。婚約者という立場に縛られて、嫌いな人間と一緒にいる時間は、あまりにも苦痛だった。

カミロに罵倒される度に、自分を否定されているように感じたし、自分という価値がなくなっていくように思えた。

だから、言ってしまえば貰ってくれるならどうぞどうぞ、なのである。

もちろん、返品は受け付けませんが。

私はそっとまつ毛をふせ、俯いた。

しかし声だけは、演説するかのように大きく張り上げる。

「このままでは冤罪をかけられて婚約破棄されてしまいそうですもの……!!私は……嫌がらせどころか、聖女様とまともにお話すらしたことありませんのに!!!!」

私の言葉に、一瞬、会場が水を打ったように静まり返った。

直後、ふたたびザワザワと騒がしくなる。

私は陛下に制止される前にと、自分の意見を一息に言い切った。

「それなら!その前に自ら手放してしまいたいのです!陛下。騒ぎを起こしてしまい申し訳ありません!ですが……!この場をお借りして、どうかカミロ・カウニッツとの婚約を破棄させていただけないでしょうか……!?」

胸に手を当て、心からそう思っているとでも言うように振舞って見せる。

それに反応したのは陛下ではなく、カミロだった。

彼も、あの光景を記録されていたのは想定外だったのだろう。その顔は強ばっている。

しかし彼は、私の方まで歩いてくると、馴れ馴れしく肩に触れてきた。

「……僕が君を追い詰めてしまったんだね」

(誰ですの??)

別人かと思うほど甘ったるい声を出したカミロは、そのまま私の頭を撫でてきた。

(撫ッッ……!!)

ゾワッと鳥肌が立つ。

(人の頭を!!勝手に!!撫でないでくださいませ!!)

髪が乱れる!!超ッ……絶不愉快だわ!!

今の私はさぞ、酷い顔をしていることだろう。しかしカミロは、憂いを帯びた顔で私を見ると、眉尻を下げた。

手はそのままだ。私はあまりのことに硬直していた。

「君は、僕が聖女様と想いあっていると 勘違い(・・・) して、あんなものまで作ってしまったんだね。君は昔から、魔道具作りが得意だから」

しかしその目は、驚くほど冷たい。

見下しながら頭を撫でる──頭に手を置くとは、人のことをバカにするにも程があるわ……。

カミロは声だけは優しく言った。

そういえばこの人は、昔から外面だけは良かった。

「だけど嘘はいただけないな、リンシア。僕にも悪いところがあった。だから、嘘を認めてくれないか?僕も罪を被るから」

(この人何言ってんのかしら??)

きっと今の私は、信じられないものを見る目になっていることだろう。頭が花畑というか、話が通じないというか。

さながら宇宙人と会話しているかのようだ。

げんなりとした表情を、取り繕う余裕がなかった。

カミロ越しに、席に座る王太子殿下ならびにその側近たちが見えた。

一瞬、ルーズヴェルト卿と目が合った気がした。彼は、私の顔に気がついたのだろう。

驚いたように目を見開いていたので、私は相当酷い顔をしているのだらう。

もはや今更だわ。

そう思って、私はカミロの手をさりげなく振り払った。そして、にっこりと満面の笑みを浮かべ、言った。

「カミロ、私の方こそごめんなさい。あなたは聖女様と良い仲なのでしょう?愛し合っているとあなたは言ったわ。嘘をつかなくていいの」

「……そこまで追い詰めしまったのか」

もはや、どちらが真実を口にしているのか分からない嘘つき問題(この中で1人だけ本当のことを言っています、というアレ)状態だが、決して折れるつもりはなかった。

周りが固唾を呑んで様子を見守る中、存在を忘れられていたセリーナが叫ぶように言った。

「嘘ですわ!!それは、リンシアが作った偽物!!彼女は私を貶めるために……!私が、聖女だから!婚約者を取られると思ったんだわ……!!」

ハッとして、カミロと私の視線がそちらに向く。

すると、そこでは彼女が崩れ落ちるようにその場に倒れ込んでいた。

もはや、この場を乗りきらなければ後はないと判断したのだろう。

悲劇のヒロインよろしく、涙を流し始めた。しかも泣き方が激しい。大号泣だ。

「うっ……うわぁあああ!!酷い!酷いわ!!リンシアッ……!!私っ……私は!!」

あまりの泣きっぷりに、会場中がドン引きしていた。

私もあまりのことに呆気にとられている。

(す、凄いわ……目的のためなのでしょうけど、すごい泣きっぷり。私にはできない……)

格の違いを見せつけられたような気持ちだった。

これどう収拾つけるの?と誰もが思っただろう。少なくとも私は思った。

その時、陛下が声をはりあげた。