軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

31 ダリエル、身を固めた

唐突だが。

一年経った。

この俺、ダリエルがラクス村を訪れてから一年。

様々なことがあった。

魔王軍を追放され、自分が魔族だったと思っていたのに人間族だと判明し、この村の住人となり、この村のために働いて過ぎ去った一年だ。

実り多い年であったと思いたい。

俺も今ではすっかりラクス村の一員で、村の皆との絆も深まったと思う。

この一年で村にどのような変化があったのか?

俺自身にも。

その辺りを順に見ていってみよう。

まずラクス村全体についてだが、これは大いに発展した。

やはりミスリル鉱山が人間族の手に戻って来たのが大きい。

近隣に重要拠点ができたことでラクス村の重要度も釣られて上がり、人の出入りが多くなった。

鉱山で掘り出されたミスリルは、ラクス村に運ばれ色々な工程を経て武器にまで加工される。

村外れに築かれた鍛冶場には、スミスじいさんが呼んだ鍛冶師たちが多く務め、日夜ミスリルに鎚を振るっているのだ。

出来上がった武器は荷駄に乗せられ、各地へと運び出される。

ミスリル武器は、他のどんな素材で作られた武器よりも強力で、高価。

その取引は莫大な利益をもたらし、村の発展に寄与した。

村に移り住んできた鍛冶師たちは高給取り。

元々村に住んでいた人たちも、そんな鍛冶師に薪やら薬やら獣肉やらを売って羽振りがいい。

それでも発展はまだまだこれからで、やるべきことは多いがな。

そして俺個人についての近況だが……。

結婚した。

相手はマリーカ。

きっかけは、あのサウナでの出来事であるのは言うまでもない。

あれからトントン拍子で話が進んで、気づいた時には挙式していた。

しかもそれだけに止まらない。

子どもも生まれた。

流れが速やかすぎて怖いくらい。

生まれたのは元気な男の子。

名をグランと付けた。

俺が父のごとく慕う人から、勝手に名の一部を拝借した。

魔王軍の暗黒兵士時代。魔法も使えない俺では嫁など来ないだろうと完全に諦めていたのに。

齢三十を過ぎて家庭を持つことができるとは第二の人生本当に充実している。

赤ん坊用ベッドで眠る我が子を覗きこむたびに感涙で視界が曇る。

そんな俺を見て、妻となったマリーカが言うのだ。

「アナタ。ここで感動されたら困りますよ?」

この一年で急速に人妻の魅力を備える彼女。

「まだ一人目なんですからね?」

と自身のお腹をさする。

……。

どうやら俺はまだまだ頑張らなければならないらしい。

まあ、子だくさんは田舎じゃ珍しくないか。

あと、村長の娘であるマリーカと結婚したことでもう一つ変化があった。

俺が村長になった。

出世だ。

話が出た時はさすがに一度辞退したけど、結局押し切られる形でなった村長に。

俺を村長に推す意見としては……。

『お前のような重要人物が一つの肩書きも持っていないのは都合が悪いだろうが』。

とか言う。

旧友リゼートを介した魔族とのミスリル取引も続いているし、鉱山のノッカーたちはいまだに俺のことを第一に信頼している。

何かがあった時に動くのは率先して俺であり、その俺が村長程度の称号を持っていた方が何かと動きやすいというのだ。

これからも村のために働くに決まってるだろうがな俺としては、反論しようもない指摘だった。

村長の娘であるマリーカと結婚したことで正統な継承ルートも定まったし。

なので村長になった。

俺が訪れた時に村長だった人は、もう村長ではなく義父さんだ。

我が愛する妻の父親なので。

義父さんは、元々村長とギルドマスターを兼任していたが、俺に村長を譲ることでギルドマスター一本に専念。

だから完全に引退というわけではなく、村の冒険者をまとめる方向で俺と一緒に働いてくれている。

とは言っても村を運営する仕事のほとんどを俺に任せて初孫グランを溺愛する毎日であるが。

村長として俺の仕事は多い。

鉱山を取り戻す前の僻村だった頃ならそう大変でもなかったろうが、今は大忙し。

まあ村の行く末を俺の采配に任せてくれるというのだから、責任重大だが同時にやりがいがある。

男と生まれたからには一国一城の主!

いや一村だけど。

それから……。

めでたいことの多くあったこの一年だが、悲しいこともあった。

スミスじいさんが逝った。

年経た鍛冶師として多くのことを知り、匠の技を持っていたスミスじいさんが、それら貴重なものと共にあの世へ去ってしまった。

死因は老衰。

ラクス村での鍛冶場開設が本決まりになってからは精力的に働いていた。

本拠の鍛冶師里から多くの若い鍛冶師を呼び、自分の技を広め、ラクス村での鍛冶場再設に大きく寄与してくれた。

長患いすることなく急に逝ってしまった。

あの日は、鍛冶場の開設作業が一区切りついて、皆でお祝いの酒盛りをしようと飲み騒いだ。

その中でスミスじいさんが人一倍はしゃいで、年甲斐もなく夢を語り、村に骨を埋めてやると喚き散らして酔い潰れて。

弟子たちに運ばれ寝床に付いたまま、起きてくることがなかった。

葬儀はウチの村で出した。

遺体は故郷の鍛冶師里へ帰そうかと話し合ったが、前日の本人の発言を尊重したいと墓もラクス村に立てた。

お弟子さんたちが言うには、元々体を壊していたそうなのだが無理を言ってラクス村に駆け付けたという。

その道行から意外なほど元気になってビックリしたと言うが、じいさんは人生最後の数ヶ月、自分がもっとも輝いてた時期に戻ったのであろうか。

まさか俺のヘルメス刀を本当に遺作にして逝きやがるとは。

開設された鍛冶場は、じいさんの弟子が指揮して問題なく運営されている。

彼らの目標は、師が遺した教えを元に、師の技を超えること。

いつか彼らがヘルメス刀以上の傑作を作り上げると信じて。

一年の歳月を経て、我がラクス村は様々なことが変わった。

発展したところもあるし、足りないところもまだまだある。

これからまだまだ変わり続けるラクス村。

そのラクス村を舞台に、物語はさらに続いていく。