軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

304 ベゼリアの強さの秘密

まさかこんなことになるとは……。

突如として始まった四天王ベゼリアとの戦い。

過去バシュバーザやゼビアンテスを軽くひねってきた俺だから今回だって軽くひねられるだろうなんて思っていたがそんなことなく……。

むしろ滅茶苦茶追い詰められている。

「……まいったね。ここまで攻めても踏み止まられるなんて。一体どういうバケモノなんだい?」

「それはこっちのセリフだよ」

ここまで一方的に受け身に回って、反撃の一つもさせてもらえなかった。

主導権を奪おうとしてできないなど闘者にとっては屈辱でしかない。

今は互いに息切れして睨み合ってるが……。

……クソ、やはり年だな。

体が追い付いてくれない……。

ただそれは向こうも同じようで、顔中に汗びっしょりと掻いて、呼吸の仕方が今にも死にそうな感じだ。

「勘弁してくれたまえよ。こっちは格上相手に決死の攻勢をかけているんだ。スタミナの消耗は圧倒的にこっちが上だよ」

その上で勝負を五分に保たれている。

益々屈辱だった。

やはり日頃の実戦不足が祟っていおるな。

なまった体が無理することを拒否している……!

周囲からの視線も、困惑に満ち満ちていた。

魔王軍、冒険者。

種族職業関わらずこの戦いを目撃することになった者たちは、自分たちの予想とあまりにもかけ離れた実像に、唖然とするばかり。

「ベゼリアがここまで食い下がるなんて……!?」

「決死の覚悟が、実力差をここまで埋められるものなのか……!?」

実力差はある程度ならば、覚悟や精神力で埋め合わせることができる。

ベゼリアはまさにその実践者だった。

俺がへっぽこなので食い下がられているというわけではない!

「しかし、これ以上はさすがに体がついてこない……! さらに勝負が長引けば私の敗北は確実だろうね。そこで……!」

……!?

ベゼリアの魔力に淀みが……!?

「勝負をつけさせてもらうよ……!」

ヤツの放つ魔力がどんどん重みを増し、濁って、気味悪くなっていく……!?

こんな気配を放つ魔力は初めてだ。

よくわからなくても、何かしら大技の準備段階でらることは間違いない。

宣言通り勝負を懸けに来たか!

ならば黙って待ち受ける謂れはない。

速さこそ冒険者……オーラ使いの領分ならば、一足先んじて潰すのみ……!!

……と思ったが。

「……何ッ!?」

足が動かない!?

依然として足元にまとわりつく『囚牢粘縛』。動けば動くほど粘度を増します液体が、粘るどころかカチコチに固まって足を捕える。

「まるで琥珀のように硬く……ッ!? これを待っていたのかッ!?」

「大技を繰り出すにはどうしても時間が欲しかったのでね……! 悟られずに『囚牢粘縛』の粘度を……いや硬度を最大限にするのに苦労したよ。これで心置きなく最後の一撃を放てるというものだ!!」

いかん、今ベゼリアが準備しているのは間違いなくヤツの最強魔法。

まともに浴びたら確実に無傷では済まないし、もしかしたら死ぬ!

完成前に阻止するのがもっともいいはずなのだが、どうやって!?

足をがっちり固められて動けないなら、まず硬化した粘液を破壊して……いやそれ邪魔にあわない。

いっそ『凄皇裂空』を放って先にベゼリアを攻撃しようかと思ったが、すぐにダメだとわかった。

周囲には千人単位の人員が詰め込まれて、俺から見てベゼリアの背後にも多数の人影がある。

大勇者と称えられたアランツィルさんが切り札とした必殺奥義『凄皇裂空』だぞ。

これを放てばベゼリアはもちろんその背後にいる数百人も巻き添えになって死ぬ。

さすがにここで我が身可愛さに犠牲者を出すわけには……!?

「キミが優しいお陰で勝機が見えた。我が最強の殲滅力を持つ魔法が今、完成したよ……!」

勝利を確信するベゼリア。

……ヤバい。

「食らうがいい! 濁りし水魔法の極致『バイオハザード』ッ!!」

これは……ッ!?

水の腐食作用を極限まで高めた破壊魔法!?

流れを止めた水は濁って腐り果て、悪臭を放ちながらその内にあるものまでも腐らせ分解する。

あらゆるものは腐ってヘドロへ。

その暴力的なまでの自然の経過を攻撃魔法として利用したのがベゼリアの奥の手か!?

魔法が展開させる腐食空間が広がり、こっちに迫ってくる!?

水や土や空気が、問答無用に瞬時のうちに腐っていく。

猛烈な腐食速度。

まさに殲滅魔法の名に相応しい。

「降参しろ! そうすれば魔法を止めてやろう! オーラで防げるなどと甘い考えはするなよ! 我が腐食空間は長時間持続し、一部の隙間でもあればそこから浸食して食い尽くす! 骨も残さずだ!」

ベゼリアの警告通りだろう。

ヤツの腐食攻撃は、オーラ能力に対して最悪の相性を持っている。

斬る刺す打つの差こそあれオーラの性質は純粋な破壊現象。

ただの水や炎なら蹴散らすだけで無効化できようが、空間そのものを腐食の必殺領域にされてはどうにも不利だ。

足元を硬化粘液で固められた俺は逃げることもできない。

ベゼリアは、俺に敗けを認めさせることで互いに無傷の勝ちを得ようとするようだが……。

……こっちも黙ってやられてたまるか!

「『阿鼻叫喚……」

「何ッ!?」

「……焦熱無間炎獄』!!」

我が手から繰り出される極熱の黒炎。

かつて歴代最強とまで言われた四天王グランバーザ様が殲滅魔法として誇った極大炎撃だ。

この尽きることない無間の炎であれば……。

腐食の力も焼き尽くせる!

「ぐおおおおおおッ!?」

狙い通りベゼリア渾身の殲滅魔法は、俺の火炎魔法と相殺され無力化された。

……ちょうどいい具合に威力を調節できたな。

本来の威力のまま放ったらやっぱり多くの人を巻き添えにして丸焼きにしていたことだろう。

「ダリエル……、お前、お前……!?」

観戦していた一人であるリゼートが、恐る恐る尋ねる。

「何故魔法の使えないお前が……!? しかもグランバーザ様の必殺魔法!? お前は、魔法を使えないんじゃなかったのか!?」

「使えないよ、元々はな」

人間族であるし、そのお陰で魔王軍を追放されたんだからな。

「以前バシュバーザと戦ったことがあってな。その時にヤツの魔法因子を譲り受けた。それで使えるようになった」

「そんなことが!?」

お陰で今の俺はオーラも使えるし魔法も使える、至上唯一にして恐らく最後の人間となるだろう。

硬化粘液を砕いて、自由を取り戻す。

俺にはまだまだ余裕はあるが、ベゼリアは今の極大魔法で多大な魔法力を消費したようだ。

休憩して魔力を回復させない限り同じ必殺魔法を連続で放つことはできまい。

切り札を失った以上は……。

「お前の負けだ」

「そうだね……。勝てるとは思っていなかったが、しかし実際歯が立たないことを見せつけられては悔しさを無視できないよ」

いやこっちこそ。

一瞬敗けたかと思ったよ。

圧倒的な力を持つ相手に押し潰されそうなことは何度かあったけれど、実力的に劣るとみられる相手にここまで食い下がられたのは初めてだ。

彼が最初に言った『覚悟を見せる』という目的は達せられたと言っていい。

ベゼリアの決意とその硬さ、多いに見せてもらったが、だからと言って彼の構想に賛同したくなったかと言えばそうでもない。

「……だが、アンタがここまで強いとは知らなかった。これほどの実力があればバシュバーザが生きてた頃でも力押しで主導権をとれたんじゃないのか?」

そして彼をリーダーとして正しい舵取りを行い。彼自身の理想を進めることだって充分できただろうに。

今さら俺に頼る必要もなく。

「た、たしかにおかしいのだわ! ベゼリアがここまで強いはずがないのだわ!」

「それはお前がアホだから気づかなかっただけだろうゼビアンテス?」

こうして元同僚すらビックリさせるベゼリアの大健闘だったが……。

「いや、ゼビアンテスの言う通りだ……!」

……明かされる意外な事実。

「私個人の力では、到底ダリエルくんに敵いようがない。魔王様から貸し与えられた力を加えても結局は勝てなかった」

『はん、だから言っただろう』

そう言ったのは誰だったか。

『最初から俺の言う通りに戦っていれば勝てたのだ。周囲にいるクズどもを巻き添えにし、何人も惨たらしく殺しながら戦えば、甘いこの男は必ず隙を見せる。そうすれば弱いお前でも付け入ることができたろうに』

そんなことを言う外道は……。