軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

293 ダリエル、予想を外す

ゲッホ! ゴホッ! ペペペペペペペ……ッ!?

土が!? 土が口の中にッ!?

俺です!

……。

あー、ヤバい。死ぬかと思った。

頭……、どころか上半身丸々土に埋まって呼吸できない感じに!

冒険者たちが足もって引っ張り上げてくれたから何とか助かったが、もし助けがなかったら窒息してたか!?

「ありがとう! 皆さん命の恩人だ! 本当にありがとう!!」

「村長は大人しく後ろで見ててくださいよ……!」

……あ。

若手冒険者たちの俺のことを見る目の色が『オッサンがしゃしゃりでて……!』という感じだ!?

若者たちから邪魔に扱われている!?

「来て見て驚きましたが状況は最悪みたいです。魔王軍ですよ。しかもあんな大軍……!」

若手冒険者の一人が状況を見ながら言う。

「様子見兼ねての第一陣じゃとても防ぎきれない規模です。村に連絡してもっと援軍を送ってもらわないと。オレらが死守しますんで村長は後方へ下がってください」

「いやいや」

そういうわけにもいきませんよ。

俺もラクス村と……そしてミスリル運用に関わる責任者の一人ではあるからね。

「まずは俺が交渉してみよう。相手の目的が何であるかも探らないといけないしね。殴り合いの前に話し合いが正式な作法だよ」

しかし……。

……どういうことだ!?

俺としては遭遇するのはリトゲス率いる商会の手勢だとばかり思ってたんだけど。

何故かその代わりに魔王軍が現れている。

しかもすんごい規模。

これじゃあ商会とやり合うために送り込んだ冒険者の援軍、五十人程度じゃ屁のつっぱりにもならないなあ。

どうしてこうなった?

「ゼビアンテス! ゼビアンテスやーい!?」

まずは状況をもっともよく把握しているだろうゼビアンテスを呼ぶ。

元々は商会を警戒して配置しておいたヤツだが、こんな形で窮地を救ってくれるとは。

魔法で伝えてきた『ヤバい』という報告も、この魔王軍のことを指しているのだろう。

とにかくアイツのおかげで助かった。

で、そのゼビアンテスはどこだい?

「あ、あそこにいた」

空を飛んでいるから非常に見つけやすかった。

サカイくんと研究していたミスリル翼を着けてご機嫌に飛び回っている。

「ホホホホホホホ! いいのだわ! 爽快に飛び回っているのだわ!」

「さすがですのお姉さま! 一緒に風になりましょうの!」

なんか知らない女の子も一緒に飛び回っておる。

あともう一人……。

「ひゃああああああッ!? いい加減誰か助けてえええええええッ!?」

ベストフレッドさん!?

なんであの人まで一緒になっておる!?

「おらああああッ! 降りてこんかああああああッ!?」

「やばッ!? ダリエルなのだわ!?」

ようやく俺の存在に気づいて眼前まで降下。

「で、何があったのかね?」

「それよりも前にねぎらいの言葉一つ欲しいものだわ。今回わたくしめずらしくよく働いたのだわ」

「ぐッ?」

言っていることは正しくても、言ってるのがゼビアンテスだとどうも納得いかない。

しかし俺は大人だからな。

度量のある方が一歩引かなければ……!

「いや本当によくやってくれた。キミがいてくれたおかげで本当に助かったよ」

「アナタも幸運だわね! このわたくしを褒めるという稀有な機会を与えられて!」

本当に稀有だよ。

で? そろそろ状況説明してくれないか?

「わたくしは最新ミスリル翼が最高にキマるポーズを探すのに忙しいんで説明なんかしてる暇などないのだわ」

「お姉さま! 今度はわたくしとペアで新しい軌道を試しましょう!!」

だから誰なんだよその女の子は?

そして説明しろ。

「詳しいことはこのオッサンに聞けばいいのだわー。そろそろ腰回りが重くてダレてきたのだわ」

「ごっぷ!?」

そう言って投げ寄こされるのはベストフレッドさん。

「つーかあんまりレディの腰にしがみついてると仕舞いにゃセクハラで訴えられるのだわよ?」

「酷い! 一緒に来いと言ったのキミじゃないか!!」

ここにまたゼビアンテスのマイペースに巻き込まれた被害者が一人増えたようだ。

すみませぬベストフレッドさん。

「まったく……、ダリエルさん。やはりあの魔族の女性を送り込んだのはアナタだったのですね。いやお陰で助かりましたが……! 死ぬところでもあった……!」

「何が起きたんでしょう? あの魔族たちは商会と何か関係が?」

「いえ、まったくの無関係です。ついさっき別方向から、商会が引き連れたキャンベル街の冒険者がやってきました。それを何とか鎮圧して一息ついたところにあの軍勢が……!」

商会がよからぬことを働く予想は当たったわけか。

でも同時に魔王軍が動くのなんて完全な予想外だ。商会に意識がいって気づかないとは不覚という他ない。

「一体何のために……!?」

「先ほど指揮官らしき者との会話がありましたが、やはり目的はミスリル鉱山を奪回することのよう。それも当然かもしれません。魔族にとってもミスリルは喉から手が出るほどほしいもの……」

しかし今、挙兵してまで取り戻したいほどか?

現状で人間族と事をかまえるにはマズい理由が魔族側にもたくさんある。

それがあるからこそ俺も魔王軍動くまいとタカを括り、虚を突かれたのだが……。

動くはずのない魔王軍が動き出した。

しかも商会が牙を剥くのとほぼ同時に。

これは偶然か?

……偶然か。

「とにかく、状況はわかりました。俺からも相手側と交渉してみましょう」

「大丈夫ですかダリエルさん……!?」

まずは話し合いしかないだろう。

こっちは商会に対応するつもりで来たから、正規の大軍団を相手にできるような人数なんて持ってきていない。

商会が動かせる戦力なんて、街のゴロツキが精々だと思ってたからな……。

まあ、向こうに話の通じる者がいないでもない。

そう言うヤツがあの軍勢の中に交じってればいいのだが……。

「……お、リゼートがいるじゃないか」

かつて同じ釜の飯を食った旧友。

アイツがいるとは運がいいな。

「よし、アイツと話して来よう。冒険者の皆は警戒しつつ待機。俺がいいって言うまで攻撃しないでくれ」

「あんな大軍勢に怖くて仕掛けられませんよ……!?」

なんだ情けない。

ラクス村の冒険者ならいざとなったら一人十殺で斬り込む気概を見せてくれ。

「リゼート久しぶりー」

とにかく戦闘の意志がないことを示すためにフランクな態度で歩み寄る俺。

リゼートならきっと何があったのか気軽に教えてくれることと思うが……。

「待て!」

あちら側から鋭い声が飛ぶ。

「そこで止まれ! それ以上の合意なき接近は敵対行為とみなす!!」

「えー?」

そう言い放ったのはたしかにリゼートの声だった。

どうしたんだ、そんな冷たい?

他人行儀な?

「ダリエル! ……お前が来ることは予想ができていた。ミスリル鉱山が危険にさらされれば嫌でも出てこざるをえないと」

「この俺を誘い出すのが目的だったとでも? だとしたら資源の浪費も甚だしいな」

俺に会いたければ普通に訪ねて来ればいいだけだろうに。

千人単位の兵を動かし、それだけでも人的資源の浪費だというのに、派兵に際する物資や金銭の消耗はどれほどになることか。

「立案者は他の者だ。……お前は、彼の術中にまんまとハマったということだろう」

「何?」

「そして私は、どうしてもお前に聞きたいことがあって同行した。……ダリエルよ。虚偽の一切を交えず答えろ……!」

リゼートは言った。

「勇者を魔王様の下へ送り込んだのはお前なのか!?」