軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

291 ゼビアンテス、大空合体する(魔族side)

始まる、ゼビアンテスvsシルトケの対決。

新旧風の四天王対決。

降って湧いたような真剣勝負に魔王軍が揺れる。

「シルトケ様とゼビアンテス……様が?」

「一体どっちが勝つんだ?」

四天王は、最高の魔導士だけに与えられる究極称号。

その名を得た二者の戦いともなれば凄まじきものになることは疑いない。

一方はなりたてでまだ若く、しかも今回が実質的な初陣になるため誰もまだ実力を知らない。

可憐なる若芽シルトケ。

対してゼビアンテスは、その自由気儘ぶりが周囲から呆れられてはいたものの、実力は間違いなくトップクラス。

それはもう周知の事実であった。

シルトケの若さは、ゼビアンテスにどこまで通用するのか。

注目される点はそこであろう。

「……はーん、見覚えないボーヤやお嬢ちゃんがウロチョロしてると思ったら。まさまこんなのがわたくしの後釜だとはだわ……!」

ゼビアンテスはいまだに空中に浮遊し、シルトケもそれに食い下がるように宙を飛ぶ。

風使いの争いは必然、大いなる空の上で行われる。

「ちょっと若すぎるんじゃないのだわ。幼い? こんなガキどもに栄えある四天王の役職が務まるとは到底思えないのだわね。引退した身ながら心配するのだわ」

『アンタにだけは言われたくねえよ……!!』と居合わせた魔王軍兵士の誰もが思ったという。

「ぎゃあああああッ! 落ちるうううううううッ!?」

そしてゼビアンテスの体にしがみついている中年男性をそろそろ下ろしてやれよとも思った。

「舐めていると痛い目を見るんですのよ! 所詮アナタは勇者を阻止することもできなかった負け犬! 史上最低の四天王であることが決定済みですの! 若く可能性のあるわたくしとは違うんですのよ!」

「自信がない者ほど若さをアピールするのだわ……」

ゼビアンテスの周りで吹く風が、鋭さを増していく。

「何故なら実力が伴っていないから。今が弱いヤツほど、いずれ強くなるかもしれない未来に期待するものだわ。若さという可能性に縋ってね」

「うぐッ?」

「しかしわたくしの体験から言わせてもらうと、今がダメなヤツは時間が経とうとダメなのだわ。何故なら今を頑張った者だけに未来がやってくるからだわ」

「ぬぐぐぐぐぐ……!?」

どんなに自分勝手な厄介者でも、ゼビアンテスの実力が本物であることは皆知っている。

その強さによって頂点に居続けた女なのである。

「自慢の若さも時間と共にズンズンズンドッコ衰えていくのだわー? 結局は常に強さと美しさを追求するわたくしのような女が天下を獲るものだわー?」

「う、煩いんですの……! この、この……!!」

煽られ続けるシルトケ、憤懣募ってついに口に出す……。

「オバサン!!」

「はあッ!?」

言ってはいけないことを言った。

と地上から見上げる魔王軍兵士全員が思った。

「何を言ってるのだわ!? わたくしはまだオバサンではないのだわ! 肌もまだまだ張り艶たっぷりなのだわ!!」

「そんなこと言ってもわたくしから見れば充分オバサンですの! 肌の艶だって何もしなきゃなくなっちゃうから、いっしょーけんめー保とうとしてるんでしょう!? 今までの悪口だって、所詮自分にないものを持っているわたくしへの嫉妬ですの!!」

持つ者と、持たざる者。

若さを。

ラクス村に入り浸るようになってから五年あまり。

ゼビアンテスも二十代の半ばを終えようとしている。

「そんな、いっしょーけんめー色々やってるわけではないのだわ! むしろ家事なんかは絶対しないのだわ! 手が荒れるから!!」

「それはやんなさいですの!!」

シルトケがゼビアンテスを押している。

その衝撃的な光景に、魔王軍兵士の誰もが固唾を飲んで見守る。

戦いって本当はこういう形ではないはずだが。

「ぬがあああああーーーーッ!! こうなったら見せてやるのだわ! 問答ばっかで示される実力なんかないのだわ!!」

「何を見せるというんですの!?」

「当然、わたくしが超絶華麗ということを証明する実像をだわ!」

「超絶加齢!?」

ゼビアンテスの魔力が凄まじき高揚を見せる。

やっとちゃんとした戦いになるのか、魔王軍兵士たちがため息をつくと……。

「させませんですの! 先手必勝!!」

相手の規則が整う前にシルトケの方が打って出た。

やや不意打ち気味で、可愛い顔に似合わずすることエグい。

「我が最強魔法『スパイラルミキサー』を食らうんですの! 真空斬刃を織り交ぜた竜巻の中でグルグルされながら斬り刻まれるんですのよ!」

「はーん」

しかし。

シルトケ渾身の極大風魔法だが、ゼビアンテスの一唸りによってあえなく消滅してしまった。

相手の体に到達する前でかすり傷一つ負わせることができていない。

「なッ!?」

「芯の通っていない風魔法だわねえ。そんなんだからちょっと気圧操作するだけで風向きがばらけて消えちゃうのだわ」

アホだが最強の風使い。

それがゼビアンテスに下された評価。その評価にたがわぬ凶悪ぶりであった。

「まあ、それでも派手さ、インパクトでは及第点を上げてもいいのだわ。さらに隠し味で真空斬刃を織り交ぜているところに知性を感じるのだわ。よってインパク知なのだわ」

「く……ッ!」

「アナタにだったら見せてあげてもいいかもね。わたくしが追い求める美の極致を」

「美の極致?」

「今から見せてあげるのだわ」

ゼビアンテスがパチンと指を慣らす。

それに呼応するように、大空から聞こえてくる空気を斬り裂く重い音。

「なんだこれは……!?」

「耳が押し潰されるような……!?」

地上の兵士たちも重低音に戸惑う。

「あッ!? なんだあれは!?」

「また鳥か!? 魔導飛翔機か!?」

「いや!」

「その両方だ!!」

大空にはばたくのは大鷲のごとき翼を広げる鳥……。

……のように見えて違った。

その翼は銀色に輝いている。

金属の銀色だった。

全身銀色に輝く、鳥のようなそれは、雄々しき猛禽を象って造形された金属製の模型。

しかしより見る者を混乱させるのは、命なき金属の塊であるはずのそれが、水から翼をはばたかせて飛行しているということだった。

鳥の姿をしているのは、ただ模して製造されただけだろうに。

銀色の金属鳥は、ゼビアンテスが差し出した手の上に留まった。

彼女を主と認めているかのような振る舞いであった。

「な、なんですのそれは……!?」

「驚いたかしら? これこそ総ミスリル製で作られた金属の大鷲なのだわ」

「総ミスリル製!?」

その銀色は、純銀すらも及ばぬほど澄んだ白光を放つが、それこそまさにミスリルの特徴だった。

「まさか鉱山から採れたミスリルで……!?」

「魔力を吸収するミスリルの特性を生かし、蓄積された魔力をエネルギー源としてある程度自律稼動するのだわ。この仕組みを完成させるのに一年かかったのだわ」

たしかに、彼女の言うことが本当だとすれば凄まじい技術革新であった。

魔導士の命令で独立稼動する金属体。

「しかし! 本当に驚くべきはこれからなのだわ!!」

「なんですって!?」

ミスリル鷲がゼビアンテスの手から離れ飛び立つ。

何かしらの指令を魔力越しに受けたかのように。

「何故この子を鳥型として生み出したか! その理由をアナタたちは今目の当たりにするのだわ! 行くぞ大空合体だわ!」

ゼビアンテスの号令に呼応するように、ミスリル鷲は目まぐるしき変化を始める。

いや変形か。

鳥を象った頭部、爪なのが折りたたまれて本体に収納される。

するとミスリル鷲はまさしく翼だけのような形態へと成り替わった。

その金属ミスリル翼が……。

「ゼビアンテス様の背中に張り付いた!?」

「な、何いいいい!?」

空中にて合体するミスリル翼とゼビアンテス。

ここに完成する有翼ゼビアンテス形態。

「見たのだわ! ミスリル翼自体に機動性と行動力を持たせたことで、いついかなる時も合体、装着できるのだわ! この仕組みを作り出すのに丸三年をかけたのだわ!!」

それを目の当たりにした多くの者たちの感想は『アホか……!?』というものだった。

そんなよくわからないものを作るのに三年かけたとか、無駄な労力すぎる。

しかし、当の対戦者シルトケは……。

「……負けましたの」

「「「「ええッ!? なんでッ!?」」」」

あっさりと負けを認めたのだった。

「その煌めき、そのフォルム。わたくしなどでは及びもつかない美が凝縮されていますの。今のわたくしでは、そのような傑作はとても作れません。潔く認めるぐらいしかできることがありませんの……!」

「一目見てそこまで感動できる辺り、見どころのある子なのだわ。わたくしの後継者として相応しいと言っておくのだわ」

なんかよくわからないうちに互いに認め合って戦いが終了したのだった。

まずは旧四天王側に一勝が上がった。