軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

28 ダリエル、ヘルメス刀を使いこなす

「そう! これが我が最高傑作なのじゃああッ!!」

タネが判明したところで制作者が荒ぶる。

「オーラを吸収して性能を変化させるミスリルの性質に、様々な別性質の金属を合わせた結果! オーラに反応して形状を変える合金の作成に成功したのじゃああ!!」

スミスじいさんは、その不思議合金をヘルメス銀と名付けたらしい

液体のように形を変えながら、ミスリルが独自に持つ硬さ、強靭さ、オーラへの反応性など損なうことなく保ち続ける。

その不思議金属を材質に用いて、名工スミスじいさんの超絶技巧をもって作り上げたのがこのナイフ。

基礎状態の時だけだがなナイフと言えるのは。

「オーラを流し込めば、それに反応して……」

伸びる。

しかも恐ろしい速度で。

フィットビタンが最初の一、二回見逃してしまったのも無理がないくらい。

瞬時に伸びて瞬時に戻る。

この可変性があるからこそ、普段はナイフ程度の刃渡りで充分ということだ。

「新開発された合金の名をとってヘルメス刀と名付けてみたぞ! たしかに我が最高傑作となったわ!!」

得意満面に言うスミスじいさん。

よい仕事ができてよかったね。

「なるほど……! 老人はオモチャ作りが趣味というわけか……!」

フィットビタン立ち上がる。

一番傷の酷い右太ももを抑えながらだが、あの傷で戦意を失わないのはさすがベテラン冒険者と評すべきか。

「仕掛けがわかれば恐れるに足りない。所詮意表を突くだけの隠し武器だ!」

フィットビタンは剣をかまえる。

最初は片手剣と盾の組み合わせだが、盾を斬り裂かれてすでに万全の体勢ではなくなっている。

「切っ先の射線に気をつければ問題ない! 要は飛び道具を相手に戦っていると思えばいいのだ! 弓矢のような! それで不慣れはなくなる!!」

いい判断だ。

そして間合いでの不利をなくすため懐に飛び込んできた。

「相手の射程の方が広いなら、間合いを取るのは愚の骨頂! 接近戦で畳みかけてやる!!」

斬間から剣を振り下ろすフィットビタン。

俺はそれを、伸ばしたヘルメス刀で受け止めた。

「!?」

相手と自分、双方の刀身は同じほどの刃渡りで鍔迫り合う。

「伸ばしたまま……!? 戻らない!?」

「変幻自在だって作り主が言ってただろう?」

適当な長さに変化したままで固定させることも可能なんだ。

それだけじゃない、長さだけでなく形状だって。

「オーラに反応して形を変える合金は万能だぞ」

たとえば今、刃を鋭利にしてソード形態にしてある。

オーラのスラッシュ(斬)性質を最大限に活かす形状だ。

「はッ」

刃をスッと引くだけで、鍔迫り合いになっていた相手の剣が斬られた。

花の茎を切断するかのように根元からポッキリと。

「ッ!? 同じミスリル材質の剣なのに……!?」

「素材が同じなら、あとは制作者の腕の差かな? あるいは使い手の差か?」

さらに伸ばした刀身の先端を鋭く変えれば、エストックのような刺突武器になる。

スティング(突)のオーラ性質がよく馴染む。

「ぎええええええッ!?」

さっきと同じように体中をつつかれ、小さい穴だらけにされる。

もはや武器は破壊されたのだから勝敗は決したと言うべきだが……。

「くそッ! アレを! アレを出せええええッ!!」

フィットビタン、自分の陣営に向けて何やら怒鳴る。

それに呼応するように、ドシンと投げ込まれる何か。

「これは……!?」

剣だった。

しかも並の大きさの剣ではない。

「大剣ってヤツか?」

当然のようにミスリル製。

これを作り出すのに、一体どれだけのミスリルを無断使用したのだろうか。

それに加えて……。

「新しく武器投入ってズルくない?」

「煩い! 私は勝たねばならないのだ!! それがキャンベル街のギルドから依頼された任務であれば! そして何より……!!」

投げ込まれたミスリル大剣を握り、両手で振り上げる。

「この私がD級冒険者に負けるなどあってたまるか! 私はフィットビタン! キャンベル冒険者ギルドで最強の冒険者なのだ! B級冒険者だ! 田舎の素人に負けるはずがないいいいッッ!!」

大剣を振りかざしたまま突進してくるフィットビタン。

あの大型武器の質量で、こちらの変幻自在も力押しで押し潰してしまおうという魂胆か。

俺はヘルメス刀にオーラを流し込み、刀身を伸ばした。

長く長く伸ばした。

「今さら何をしても無駄だ! 死ねええええッ!!」

「もう一つだけ、試すように頼まれててな」

スラッシュ(斬)に対応する形態変化。

スティング(突)に対応する形態変化も試し終った。

性能はおおむね良好だ。

次に試すべきはヒット(打)。

このヘルメス刀で、打撃攻撃に対応する形態変化を。

長く長く伸ばした刀身がグニャリと曲がって、紐のようにたわみ出した。

振り下ろす腕の勢いを受けて、紐のように柔らかくなった刀身がしなる。

そのしなりは、先端へ行くほど加速していき……。

バチンッ!

「ぐわああああッ!?」

フィットビタンの大剣とぶつかり合った瞬間、その巨大刀身を粉々に打ち砕いた。

「鞭、か……」

それがヘルメス刀の打撃攻撃形態。

ヒット(打)のオーラをたっぷり乗せた鞭打は、同じミスリル材質をものともせず相手の方だけ破壊した。

「高威力すぎてこっちがビックリしたわ……!?」

持ち主のフィットビタンは、自身が直接攻撃されたわけでもないのに得物が砕けた衝撃で吹っ飛ばされていた。

「ぐおおおおお……! ぐおおおおおお……!?」

もはや立ち上がる気配はない。

大剣を手に取った時点で死力を振り絞った感じだったし、心も体も折れてしまったのだろう。

「ここまで追い込むつもりはなかったんだが、悪いことした……!」

「我が最高傑作の試運転には絶好だったの」

もはや勝負はついたと確信したのか、スミスじいさんが寄ってくる。

「スラッシュ(斬)、スティング(突)、ヒット(打)。三つのオーラ性質を一つの武器で最大限発揮する。それが本作品の最大のコンセプトじゃからのう!!」

だからこそスミスじいさんは、使い手に俺を選んだ。

すべてのオーラ性質を100%の出力で発揮できる俺でなくては、この武器を最大限に活かせない。

どれか一つのオーラ性質に特化した冒険者なら、それに対応した武器を一種持たせるだけでことが済む。

わざわざ他の形態に変化させるなど無駄でしかない。

「まあ、それでもガード(守)だけは対応してないですね」

「あれだけは特殊じゃからのう。攻防は別にあった方がいいじゃろうしこれからの課題じゃな」

こうして俺の手に、俺専用の武器、ヘルメス刀が握られた。

金属でありながら自在に形を変える性質で、斬る、突く、打つのすべての攻撃を行える。

この新武器の試しに付き合わせてしまったフィットビタンには申し訳なく思うが。

まあ、挑んできたのは彼の方だし自業自得ということにしておこう。

結局その後、鉱山から駆けつけてきたギルド幹部によってキャンベル街の関係者は一掃された。

そもそもキャンベル街から派遣されてきた冒険者は、センターギルドの応援として派遣されたのであり、自身の裁量など許されていなかった

にも拘らずラクス村で勝手放題に振る舞い、あまつさえ貴重なミスリルを勝手に加工したと言うことで、当人だけでなく街そのものに責任が負わされることになりそうだ。

「俺には関係ないがね」

俺は、ラクス村のために働いていくのみだ。