軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

261 息子グラン、無双する

まずおさらい。

人間族の使うオーラには、大きく四つの特性がある。

スラッシュ(斬)。

スティング(突)。

ヒット(打)。

ガード(守)。

オーラで戦う冒険者は、誰しもこの四形質のどれかに適性があり、自分に合ったオーラ特性を駆使して戦うのがよいとされている。

たとえばウチの村に所属する冒険者でガシタはスティング(突)に適性を持った弓矢使いであり、ゼスターはヒット(打)適性を持ったハンマー使いだ。

セッシャさんはスラッシュ(斬)とスティング(突)に半分ずつ適性を持っていたため、その両方を生かす槍を主武器にしていた。

ことほど左様に、一口に冒険者と言っても千差万別様々な種類がある。

で、オーラ能力に目覚めたばかりの我が息子は、どんなオーラ適性を持っているかというと……。

「おりゃーッ!!」

全部に最適合していた。

斬突打守、すべてのオーラ特性を100%フルに発揮できる。

勇者選抜会の乱戦で、我が子グランはその力を遺憾なく発揮していた。

「相手の武器を奪いながら戦っている……!?」

あの子の他に数え切れないほどいる勇者選抜会への参加者。

彼らはそもそも名うての冒険者として、命を預けるに値する必殺武器を携えていた。

グランはそれを片っ端に奪いながら攻撃に使用している。

そして使い捨てている。

「最初に使ってた木刀は、もう壊れてしまっているな……!?」

所詮子ども用のオモチャみたいなものである。

グランが本気で放出させるオーラの勢いに耐えられるものではなかった。

だからあの子は敵から武器を奪うという変則的な戦いをしているのだが、これが多分に非常識。

「何だあの子ども!? さっきから色んな武器を使いこなしすぎじゃないか!?」

「前は槍を使ていたぞ!? それなのに今は剣を使って……! 次はハンマー!?」

「使える武器の幅が広すぎる!? 人間どれか一種類しか使えないんじゃないのかーッ!?」

オーラに適性がある以上、その適性に見合った武器しか使えないというのが冒険者のセオリーだ。

スラッシュ(斬)適性があるなら剣。

スティング(突)適性があるなら弓矢。

ヒット(打)適性があるならハンマーというように。

逆に言えばスラッシュ(斬)にしか適性のない冒険者が弓矢やハンマーを使っても大した効果はないということだ。

武器も適性に合ったものを使用しなければ。

しかし我が息グランは、全種類の武器をまんべんなく扱えている。

それはすべてのオーラ特性を充分以上に発揮できているからで、だからこそあの子は武器を選ばない。

元々オーラ全適性は父親である俺も持っているし、その父であるアランツィルさんも持っている。

親から子、子から孫へと引き継がれた特性だが、それがグランくんの代になっても猛威を振るっている。

「こ、こんなガキに舐められて堪るか! 潰せー!!」

勇者選抜会に挑戦する冒険者の一人が、奮ってグランくんに襲い掛かる。

何やら非常に大人げない光景にも映るが、しかし事実はそうでもない。

敵が振り下ろしてくる剣、グランくんもさっき別の敵から抜き取ったばかりの剣で受け止め、容易にいなしてしまう。

「うひはあッ!?」

体勢を崩したところへ一撃。

グランくんには手加減するよう何度も言い含めておいたので、相手さんはプロテクターを裂かれただけで外傷はなさそうだった。

それでももう腰を抜かして戦闘続行できそうにない。

「もうこの剣使わないよね? だったら貸してねー!」

そしてまた相手の武器をパクッて使用するグラン。

この繰り返しだった。

勇者選抜会の挑戦者たちも、このやりたい放題な子どもに圧倒され、戸惑うままに蹴倒されていく。

「わー! おねいさん、そのハンマー強そう! ちょっと使わして!!」

「きゃーッ!?」

やってることがただの追い剥ぎだった。

エグい、ウチの子やることがエグい。

まあ、相手が女冒険者でもボコるついでにおっぱい揉むことはさすがになくなったが。

赤ん坊のことは揉みたい放題だったからなウチの子。

早めに躾けておかないと性犯罪者になってしまうってんでマリーカが厳しく矯正した甲斐があった。

「いや、それにしても……!?」

グランくんが無敵状態なのは何もオーラの質や量によるものだけじゃない。

あの子は剣、槍、ハンマー、弓矢。すべての武器の適切な扱い方を心得ている。

知識や技術があるということだ。

さすがにそういうのは才能一辺倒でクリアできないだろうし、山野を駆け回って遊んで身につくものでもない。

一体どうやって、あそこまで質実剛健になったのだウチの子は?

「にゃはははははは! 死ねーッ!!」

愉快げに槍を振り回す我が子を見て、気づいた。

あの槍捌き……、その隙間隙間に垣間見える癖に見覚えがあった。

「セッシャさん……!?」

同じ武器を使ったとしても、使い手一人一人に固有の癖があるものだ。

そしてそんな癖は、師から弟子へと受け継がれることも多い。

グランの槍捌きに見た、かつて勇者パーティに参加するほどの腕前を持った槍使いの動き……。

「まさかセッシャさんに指導を受けていたのか」

世捨て人同然の生活を送っていながら、勝手にヒトんちの息子に何を教えているんだ!?

いや、セッシャさんだけではない。

グランがハンマーを握った時、重なる姿はもう一人のラクス村A級冒険者ゼスター。

弓矢を持てばガシタを思い浮かべる。

……ヤツら、もしや俺の目を盗んでグランに自分の技を教えまくっていた?

皆して子どもを甘やかした結果、手の付けられない暴走戦士が生まれてしまったではないか!!

「ひっさつ! にんげんシールド!!」

「うぎゃああああああッ!?」

ガード(守)オーラも完璧だなあ。

なんと競争相手の冒険者にオーラを通して肉の盾にしている。

「ぎゃああああッ!? あの子どもが手を付けられない!!」

「逃げろおおおおッ!? まともにぶつかったら確実に終わる!!」

勇者を目指す腕自慢ですら仕舞いにゃ逃げ出すウチの子の強さ。

もうあの子一人に会場が蹂躙されていると言っていい。

しかしまだ、ウチの子の快進撃を止めようとする者が一人。

「恐ろしいものだ、英雄の血というのは」

あ、あの人は……!?

達人風の佇まい。入り口で会ったカミカゾさんとか言う冒険者。

「あのダリエル殿が出場するかと思いきや、その息子の方とはな。しかもまだ幼児と言っていい年で、各地の最強冒険者を一掃するほどの強さ。それがアランツィル様の血統というわけか」

剣をかまえる達人さん。

「しかし、このカミカゾとて勇者を目指しここまで来た。子どもごときに負けることなどあってはならぬ! この手に勇者の称号を得るために、手加減はしてやれんぞ」

「グラン、気をつけろー!」

俺も外野から声を入れる。

並みいる勇者選抜会出場の猛者においても彼だけは別格に思える。

舐めてかかれば手痛いしっぺ返しを食らうことだろう。

「よーし、ならこっちも必殺技だー!」

「え?」

グランが剣を振り上げ、オーラを刀身に込める。

あのかまえはまさか……!?

「『せーおう裂空』!!」

「なにいいいいいいいッッ!?」

振り下ろされるとともに放たれるオーラ斬撃。

しかも特大の。

大勇者アランツィルが編み出したオリジナル技で、同英雄の代名詞ともいえる。

それをたった六歳の子どもが放った!?

「なんだとおおおッ!? この、おおおおおおおッ!?」

カミカゾさんは何とか防御しようとするも防ぎきれるものではない。

すぐさま大オーラ斬刃に飲み込まれ、吹っ飛ばされてしまった。

まあ、彼の実力からして死ぬことはなかろうが……。

「ヴィクトリー!」

会場のど真ん中で勝利宣言する我が息子。

実際同じ場所に、彼と戦おうとする意思のある者はもう一人も残っていなかった。

全員叩きのめされたか戦意喪失していた。