軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

245 ラクス村、拠点になる

「そう、ラクス村は魔王城へ向かうための拠点として非常に適している」

「えええ……ッ!?」

その指摘を受けてドロイエがやや困惑。

しかし考えてみてほしい。

今や二年近く前、魔王軍をクビになった俺は絶望のあまりあてどもなく彷徨って、その挙句にラクス村へとたどり着いた。

そこから俺の第二の人生が始まるんだが、そこはまあ置いておく。

ここで俺が何を言いたいのかといえば……。

「魔王城とラクス村は、その程度の距離だってことだ」

一人の絶望した男があてどもなく歩いて辿りつける程度の。

「元々ミスリル鉱山に付随する村だからな。位置自体も人間領と魔族領の境目ギリギリのところにあって、互いに行き来しやすい」

お陰でゼビアンテスやらグランバーザ様やら気軽に遊びに来るし。

俺自身も実際歩いて経験したことだが、魔王城からラクス村まで向かう途中人里らしきものは一つもなかった。

それは上手くすれば誰にも見つかることなく魔王城まで潜入できるということでもある。

「下手したら、正々堂々ラスパーダ要塞経由で殴りこむよりも優良な侵入ルートかもしれない。ラクス村から魔王城へ向かうルートは。いわば裏口から入り込むようなものだ」

以前のラクス村であれば、それはもう貧乏なので敵領深くに入り込んだ勇者を支援するだけの物資人員は確保できない。

しかし今は違う。

ミスリル鉱山の復活で潤い、人と物資の出入りも凄まじい勢いで回っている。

これが隠れ蓑になって勇者を物質的に支援しているのも外部からはバレにくかろう。

「聞けば聞くほど優良ではないか……!?」

「でしょう?」

戦略において、正解が一つしかないことは絶対にない。

腹をくくるその時まで様々な可能性を模索し、比較検討する。思考を世界と同じくらいまで広げることが重要なのだ。

「レーディもそうすることで、ラクス村を拠点にする奇策に思い至った。補給、索敵、ただ正面から戦う以外の要素にも思い巡らせなければ気づけない作戦だ。これも、ここで修行した成果だな」

「…………」

レーディ、ここで意味ありげな間を一拍置いて……。

「……もちろんです!」

コイツそこまで深く考えてなかったな。

思い付きか。

まあ、いいや。

「ともあれ世界はできるだけ平和な方がいいので、グランバーザ様アランツィルさんに表へ出張ってもらいつつ、ラスパーダ要塞の再建に着手」

人間族と魔族が手に手を取り合ってな。

「そっちに世間の目を引き、レーディは静かにラクス村から魔王城侵入を狙う」

という段取りが、よかんべえと思う。

「もちろんその方針は、ラクス村の方々の協力が必要不可欠です。ダリエルさん村長として協力を受諾いただけますか?」

律義に尋ねてくる。

真面目だなレーディは。

「よかろう」

俺だって人間族。

勇者に全面協力する義務はあると理解している。

それに元魔王軍としても、魔王様のご要望には沿わないとな。

あの方の真意を聞いてしまったからにわ。

「わたくしが物申すのだわ」

『はいはいはーい』とばかりに挙げられる手。

ゼビアンテスではないか。

アホに発言権を与えた記憶はないぞ?

「この村から魔王城を目指すにしても、それでも遠くないのだわ?」

と言うと?

「わたくしが魔王城からここまで、風魔法で高速飛翔するにもヘトヘトになって充分な休養が必要となるのだわ」

「それはお前が貧弱なだけでは……?」

「ましてレーディちゃんは敵地へ入るのだから、それ以上の準備が必要となると思うのだわ。生きて帰ってくるまでが戦いなのだわ。このままのプランでは性急の感が否めないのだわ」

ゼビアンテスのくせに的確な点を突きやがる……!?

「その意見はもっともだ」

たしかに単純な距離だけ見てもラクス村から魔王城への即潜入は乱暴すぎる理屈だ。

そうでなかったらラクス村は、目障りなものとしてとっくに魔王軍によって滅ぼされていることだろう。

「たしかに近いとは言っても、ラクス村と魔王城の間にはまだまだ距離がある。

ラクス村から支援を送るにしても、数ヶ所の中継地がいるだろう」

それら中継地を結び、ラクス村~魔王城直通ルートを結ぶ。

そこを通ってレーディには魔王様の下まで向かってもらう。

「え? え? あれ?」

ゼビアンテスが問い、俺が妙策を上げるというやりとりを、傍でドロイエがオロオロしながら見回していた。

そんなわけで中継地点を作りたいと思ってるんだが。

「俺にいい考えがある」

ということで森にやってきた。

ラクス村から魔族領方向へ入った森だ。

そこはもう充分に魔族の領域であると言え、周囲から魔力の気配が伝わってくる。

ただ人の気配はない。

やはり俺が魔王軍解雇直後に彷徨っていた時と同様、この辺りに人里などまったくない。

化外の地であるらしい。

その方が都合がよかった。

敵の勇者がひそかに進むためには。

「さて……」

では俺は、俺のなすべきことをしよう。

まず胸の前面で両手を合わせます。

右手と左手、双方を合わせて神に祈るような形にしたあと、そのまま両手を猛然と突き上げる。

「きょえええええええッッ!!」

掛け声付きで。

合わさった手の先端で、天を衝くばかりの心持ちで。

そして限界まで上がった手をそのまま。右手と左手を絶対離さぬようにして。

まず右足を前に出す。

ダンダン、とツーステップ。

右膝が直角に曲がるくらい思い切り前に出す。後ろの左足がピンと伸びるくらいになるのも忘れずに。

そのままの体勢で、右足でもう一度ステップを踏む。

ダンダン。

地面に足跡が付くぐらい力強く。

そのあと息を吐きながら右足を下げ、左足とくっつける。踵とつま先がぴったり揃うように意識して。

そして今度は左足を、同じように膝が直角に曲がるくらい前に出す。

ステップを踏む。

ダンダン。

「キョエエエエエエエッ!!」

掛け声も忘れずに。

そして腰にひねりを加える。右に一回、左に二回。……いや、一回だったか?

「「「…………!?」」」

なんか傍から恐怖と困惑に満ちた視線を感じる。

しかも複数。

「ダリエルさん……!? 一体どうされたんですか!?」

「森の中で突如奇行を……!?」

「壊れたのだわ! アホが壊れたのだわ!」

煩いアホ。

誰も壊れとらんわ。

同行のレーディ、ドロイエ、ゼビアンテスがヤバいものを見るかのような目でこっちを凝視していた。

グランバーザ様とアランツィルさんは、早速要塞共同建設の話をまとめるために両陣営の本拠に向かてもらっている。

お二人の頑張りに負けないよう、俺もここで体を動かし続ける。奇声を上げ続ける!

「キョエエエエエエッ!!」

そうして奇怪な踊りを嗜むこと数刻。

いよいよレーディたちの表情が深刻そうになってきた。

「どうします? これ力づくで止めた方が……!?」

「いっそ殴って気絶させてでも連れ帰るべきか……!?」

「あんな姿奥さんや子どもには見せられないのだわ!」

煩いよ!

女性陣からの冷たい視線も耐えがたくなったので、早く来てくれ気づいてくれ!

「……下手くそな呼び寄せの舞だと思ったら」

来たか!?

「お前だったかダリエル? 我らドライアドの民に何用だ?」