軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

23 名工、やってくる

鍛冶施設(跡地)から締め出された俺たちは、仕方なく村に戻ることにした。

「……いいんですかね、あれ?」

一応村長に聞いてみる。

「一介の冒険者が勝手にやっていい範囲を越えてると思うんですけど?」

いや、間違っても俺が言えた義理じゃないんですけど。

それはわかっている。

勝手に鉱山を奪還したのも俺。勝手に魔族と交渉して停戦を確約させたのも俺。

あるいは俺が好き勝手やっているのを見て、彼も触発されたかもしれんのだ。

「いや、あの若造の行動にはバックがあるのだろう」

「バック?」

村長の意味ありげな発言。

「あの若造は、キャンベルの街から派遣されてきた。恐らくミスリル鉱山の奪還で巻き起こる大きな利益に、あの街も噛みたいと言うことなのだろう」

「噛めないんですか? 今のままじゃ?」

「現状、あの街は近くにあるというだけで直接関係ない。あくまで鉱山の運営はすべてのギルドの上に立つセンターギルド。それに物資の通り道にあるウチの村だけが関係ある」

今のところすべてを取り仕切っている風のギルド幹部さんは、センターギルドの所属らしい。

彼自身、センターギルド所属のエリート冒険者を多く引き連れてきたが、それでも頭数に不安があったので、現地近隣で一番大きいキャンベル街に応援を要請したんだとか。

今のところキャンベル街が本件に噛める要素はそれのみ。

その応援部隊も、俺の活躍(?)で守備兵力を抑えられるようになってしまたのでお払い箱。

それらを鑑みると焦る気持ちもわからんでもない。

「俺、悪いことしちゃったのかなあ……?」

「かまわんよ。向こうには元々関係のない話だ。利を見てしゃしゃり出てくる方が図々しい」

村長の言うことにも一理ある。

ではヘタに同情せずにどっしりかまえておくとするか。

キャンベル街勢の蠢動は、あとでギルド幹部さんに相談するとして……。

とりあえず村の中心地まで戻ってきたら、変わったことが起きていた。

マリーカが、おじいさんをボコボコにしていた。

「なんでッ?」

平穏な田舎村で引き起こる惨劇。

村一番の美人の足元に、ズタボロの老人が転がっていた。

「あっ、ダリエルさんお帰りなさい」

「こんな凄惨な状況でフツーに出迎えされても!!」

マリーカは、もはやわかりきっていたことだが強い。

元冒険者だった父親の血を引いてか、素人同士の殴り合いでなら大抵勝つ。武器を持たせたらモンスターも倒せることだろう。

でもだからこそ老人に暴力を振るっては!

「マリーカ、どうしたのこれ?」

「これ? ああ! 聞いてくださいよダリエルさん! このおじいちゃんアタシのおっぱい触ろうとしたんですよ!」

未遂でこの仕打ち。

しかしそれは万死に値する。

俺からも地面に這いつくばるおじいさんに注意しておこう。

「おじいさん? ダメじゃないですか痴漢行為なんてしたら? 次やったら殺すぞ?」

「あだだだだ……! この村は、しばらく離れていた間に冗談が通じなくなったのう」

「…………」

「……すみません」

わかってくれたらよし。

俺の無言の訴えが通じたのかおじいさんは顔を青くしながら反省してくれた。

しかし待て?

このおじいさん村の者じゃないな?

さすがに小さな村だから、俺も一、二ヶ月ですべての住民の顔は覚えた。

このおじいさんは、俺の記憶にまったく照合しない。

「旅人か? しかしこんな何もない村に何用で?」

新顔の俺が言うなって話だが、今では俺も村の住民として不審者を捨て置くわけにはいかない。

実際既に痴漢未遂というイザコザを起こしているわけだし、場合によっては村の冒険者として治安維持しなければ。

「あのー、おじいさん? できればちょっとご同行願えませんか?」

村長宅にでも連行しようとしたが、おじいさんは地に這いつくばりながら何か凝視している。

……ん?

俺?

「おい、そこのヘッポコ冒険者」

とおじいさん呼ぶ。

それ即ち俺のことだろうが、即座にマリーカがおじいさんを踏みつける。

「ぐふえッ!?」

「誰がヘッポコですって? ウチのダリエルさんを侮辱するならただじゃすまないわよ?」

マリーカやっぱり強い。

でもその踏み付けはやめるべき、ご老体の背中をそんなに踏んだら腰へのダメージがヤバい。

「ぐえええええ……ッ!? それでもヘッポコはヘッポコじゃろう! そんなヘボい差し料をしていたら……!!」

差し料?

ああ、俺が腰から下げている剣のことか。

なんかジッと見てるなあと思っていたら、これが気になってたのね。

「ちょっと抜いてみよ」

おじいさんは言う。

別に従う義理もないが、拒む理由もないから素直に抜刀してみる。

「……やはり、相当な古物じゃのう。研ぎすぎて刀身が半分近くなくなっとるではないか。だから鞘に収めてもグラグラするんじゃ」

それを見ていたというのか。

「いやまあ、だが、よく手入れされておる。だからこそこんなガラクタになっても使えているんじゃが、これはもうどう見ても実戦で使っていい段階を越えておる」

こんなになるまで使いこんでくれたら剣の方もさぞや嬉しかろうと、おじいさんは言う。

だが……。

「もはや使えない武器を使おうとする冒険者は危機管理がなっとらん。これをヘッポコと言わずして何と言う?」

「それは……!?」

「冒険者なら、自分の命を預ける武器はしっかりと選びんさい。ワシが言いたかったのはそれだけじゃ」

俺もマリーカも反論できない主張だった。

この剣は、村にあった備品をそのまま使わせてもらっているもの。

古びた品物であることはわかっていたが、それでも居候の身で新品が欲しいなどと言いづらい。

「で、でもダリエルさんは、この剣で充分戦えているわよ。こないだの大蛇だって、この剣で倒したんでしょう?」

それでもマリーカは、何とかして反論を試みる。

「魔族の兵隊だって、この剣で倒したんでしょう? ダリエルさんみたいに強い人なら、武器がダメダメでも無敵なのよ」

マリーカ。

それはあまり言い触らさない方がよいのでは……!?

「……その話、盛ってない?」

ホラ! おじいさんも疑わしい目つきになっている!

それ以前に、このおじいさん何者なんだ!?

判明しないまま話が目まぐるしく突き進んでるんですけど!?

「その大蛇というのは、モンスターか? その辺わからんと凄いかどうかもわからんが……!?」

「ブレイズデスサイズってヤツです」

「はあッ!?」

大蛇のモンスター名を告げた途端、目に見えて驚きだすおじいさん。

「あの死神蛇を、こんな朽ちかけの剣で斬り殺したと言うか!? 本当に盛ってない!? ありえんじゃろ!?」

「そんなにありえんですか?」

たしかにあの大蛇の鱗は硬質で、並大抵の攻撃は弾き返しそうだったけど。

「でもよく思い出してみたら、とどめは剣じゃなかったしなあ……」

「何を使ったというんじゃ?」

「投石」

「とうせきッ!?」

益々驚愕するおじいさん。

そのオーバーリアクションぶりに思わず心配してしまう。

興奮のまま昇天してしまわないかと。

「アホかあ! 石投げただけでモンスター殺せたらワシら鍛冶屋の存在意義がないわあ!!」

え?

鍛冶屋?

「おっさん! ちょっと手を見せてみろ!」

「えー?」

おじいさんからおっさん呼ばわりされるのは釈然としないというか……!

「いいから! ワシぐらいの職人になれば、手を見るだけで冒険者の程がわかるもんじゃ!!」

俺の手を無理やり取って、凝視する。それだけじゃなくベタベタ触りまくる。

「あの……?」

さすがに同性から触られまくるのは、いい気持では……?

「な、なんじゃこのオーラ質は……? スラッシュ(斬)、スティング(突)、ヒット(打)、ガード(守)。すべてにおいて最適性をもっておる……!?」

本当にわかっている!?

このおじいさんは一体……!?

「これは……、改めて名乗らねばいかんな……!」

おじいさんは、最初とはガラッと態度を変えて言う。

「ワシは鍛冶師スミス。ミスリルを鍛えられると聞いてやって来た」