軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

201 レーディ、助太刀する(勇者&四天王side)

「お前はッ!?」

突然の乱入者に驚くドロイエ。

不意打ち気味にセルニーヤを襲ったのは他でもない、現役の人間族の勇者レーディであった。

セルニーヤも慌てて攻撃を防ぐしかなく、ドロイエたちに向けるはずだった魔法操作も不発に終わる。

「完全に死角から襲ったのに防がれるなんて!? 動きを止めただけで精一杯かッ!?」

ドロイエたちの目前に飛び降り、共にセルニーヤへと対峙する。

レーディ。

「お前何故こっちに!? 仲間と共にもう一人の方へ当たっていたのではいのか!?」

立ちはだかった敵は二人組。

一人をゼビアンテスドロイエの四天王が、もう一人を勇者パーティが当たる手分けになっていたはず。

「アナタたちが情けないから助けにきたんでしょう! 崖っぷちまで追い込まれて! もう一人の方は仲間が抑えてくれています!」

振り向くと、もう一方の戦場は勇者の仲間たち三人が鎖の乱舞をかいくぐり、一進一退の攻防を繰り広げていた。

何とか五分五分の形を保っている点で、圧倒されているドロイエたちとはまるで違う。

「中心である勇者を欠いて、あそこまで完成された連携を……!?」

「彼らだって無理してるんです! でも人数割いて救援に向かわせないとアナタたちが死んじゃうからって私を送り出してくれたんですよ!」

それを聞いたドロイエお胸が張り裂けんばかりだった。

プライドが亀裂の音をたてる。

「……勇者に助けられる四天王とは前代未聞ダナ」

彼女の胸の内を正確に見抜いたのは皮肉なことにセルニーヤだった。

敵ではあっても元四天王という同職同士、何が誇りで何が屈辱かを知り抜いている。

「四天王にとって勇者とは絶対の敵。勇者が魔王を狙うからには常に四天王の目的は勇者の抹殺ダ。その勇者に助けられるとは情けないことこの上ナイ……」

「お黙りなさい! 勇者の仕事は魔王を倒すことだけじゃありません! 自族への災厄を取り除くことも大事な使命、それは四天王だって同じはず!」

剣の切っ先を突きつけて言う。

「しからばアナタたちのように全人類を脅かす危険には、勇者も四天王も関係なく一丸となって当たるべきです! 区別などありません!」

「弁が立つことダ……」

「そういうわけで地の四天王さん! 一緒に戦いますよ! インフェルノを倒すまでは休戦ということで!」

「……言う通りだ」

「そうです! 今は私の言う通りにして共闘を……!」

「……セルニーヤの言う通りだ」

「へッ?」

しかしドロイエが賛同したのは敵であるはずのセルニーヤの方だった。

「四天王は、勇者などと手を組まぬ。勇者こそ打ち倒すべき最大の障害だからだ」

「まだそんなこと……!?」

「そして、魔族最強の座に就くからには誰の助けも借りぬ! 下がっていろ勇者! 魔王軍四天王の底力を見せてやる! 敵は我らの独力で退けてみせる!」

それがドロイエの四天王としてのプライドだった。

誰の助けもなく、独力で困難を打ち払ってこそ魔族最強の冠に相応しい。

今ここで誰かの助けを得て……しかもよりにもよって不倶戴天の敵であるはずの勇者に助けられては、以後四天王に座に居座り続ける資格を持たない。

それが四天王を引っ張ってきたドロイエの決意でもあった。

「ゆくぞゼビアンテス! この戦い、力を振るうのは私とお前だけで充分だ! 四天王の独力で困難を打ち払い! 力を証明するのだ!」

「レーディちゃん助けてなのだわああああぁーーッ!!」

「こらぁーーーーーーーッ!?」

しかしもう一人の四天王ゼビアンテスは自分の願望に素直だった。

保身という名の願望に。

「よくぞ助けに来てくれたのだわ! それでこそわたくしのお友だちなのだわあああーーッ!! 共に強敵をぶっ殺すのだわ!」

「だからそれダメだって言ったろうが! 私とお前だけで敵を倒さなければ、四天王のメンツが立たぬと……!?」

「メンツなんて意味ねーもので死んだら堪ったもんじゃないのだわ! 何より大事なものは命だわ! 生き延びるためなら悪魔とだって手を組んでやるのだわ!」

「コイツ!!」

何処までも素直なゼビアンテスに、ワナワナ震えるドロイエ。

同じ四天王でも、ここまで考え方が違う。

「……『裂空』!」

それを余所にレーディは、一人果敢に敵であるセルニーヤへ立ち向かった。

斬撃そのものをオーラの塊にして飛ばす『裂空』は、セルニーヤを標的にあやまたず駆け飛んでいくが、途中遮るように現れた礫交じりの暴風に阻まれ跳ね返された。

「……『裂空』が効かない」

「乱風障壁も、中に砂利を混ぜ込むことで強度が上がっているのだわ。まるで鎖帷子みてーなのだわ……!」

風の中に巻き込まれた礫が物理的に攻撃をはね返している。

本来なら投擲物を煽って軌道を変えさせる程度の役割しか持たない風の防御魔法が、四属性最高強度の土魔法に匹敵する堅牢ぶりであった。

「……あの魔導士は強い。ただの四天王という段階を超えている。歴代を見てもあんなに強い四天王はそういなかったと思う」

というレーディの推察に、ドロイエは反論できなかった。

まったく同じことを思っていたからである。

「悔しいけど、駆け出しの私たちが一人一人でかかっても絶対勝てない。二人でも難しい。……ゼビちゃん」

「何なのだわ!?」

「地の人が乗り気でないなら、まず私たちで一緒に戦いましょう。例のアレ、できる?」

「例のアレ? あーアレなのだわ! アレね! わかってるのだわアレなのだわ!」

「……詳しく説明するから耳かして」

そうしてレーディから耳打ちされてやっと何のことかわかったらしい。

「あ、アレなのだわ!」

「だから言ってるでしょう! せーの、で決めるわよ!」

作戦が定まって実行する段になって、挑まれる側のセルニーヤも身構える。

「どんな秘策かは知らんガ。私の飛礫乱風を掻い潜って攻撃が届くカナ?」

ヤツの周囲では、無数の小石が風に乗って舞いさながら黒い吹雪のようであった。

しかし吹雪よりも数倍凶悪であった。

飛んでいる小石一個の打ちどころが悪かっただけで人は死ぬからだ。

「吹き荒れる礫は我が最強の武器にして防壁ダ。誰もこの荒れ狂う中をまともに進むことはできないし、どんな飛び道具も礫に潰され風に押し返されル。どんなものでも私を傷つけることはできナイ」

「だったら例外があるかどうか、たしかめてみましょう!」

レーディ、剣を振り上げる。

「同じ技ダナ。効かないことがわかりきっているのに繰り返すのは愚かシイ」

「同じかどうか見てみなさい! ゼビちゃん!」

「ハイなのだわ!」

レーディが剣を振ろ降ろすと同時に、ゼビアンテスが何かしらの魔法を発した。

しかし撃ち出されたのはレーディからの『裂空』のみ。

しかしその『裂空』は、前のものより奇妙な透明感を伴って……。

「ぬぐぅッ!?」

セルニーヤの体まで届いた。

肩を小さく裂いたに過ぎないが、荒れ狂う礫の暴風を見事突き破ったからこその命中。

「やったのだわ! わたくしとレーディちゃんの友情アタックが成功したのだわ!」

「何ダ!? 何が起こッタ!? 前回はしっかり阻めたのに、何の違いガ……!?」

想定外の事態にセルニーヤも戸惑う。

礫交じりの乱風障壁を超えて、どうやって『裂空』は届いたのか。

「それこそわたくしの手柄なのだわ!」

ゼビアンテスは誇らしげに語る。

「わたくしが唱えた真空魔法をレーディちゃんの技に合わせたのだわ! おかげでレーディちゃんの必殺技に真空特性が加わって、暴風なんか斬り裂いて行けたのだわ!」

それはかつてレーディとゼビアンテスが苦し紛れで繰り出した技。

炎魔獣サラマンドラという規格外の怪物相手に、通常の攻撃ではどうしてもとどめを刺せない。

魔獣の体表を覆う炎を突破し、厚い鱗を引き裂くには、強力なオーラ斬撃と炎を無効化する真空波を合わせることが唯一の方法だった。

この技でレーディとゼビアンテスは協力し魔獣に致命傷を負わせることが叶った。

そして今この時も……。

「それでも礫の方はどうにもならない……! 隙間を狙って放ったつもりでも威力のほとんどを殺されちゃった……!」

それでも前は届かなかった攻撃が、今度は届いた。

それはゼビアンテスと力を合わせた結果だった。

「なんだト……、まさか、まさかそれはオーラと魔力の融合攻撃ということカ……!?」

「わたくしとレーディちゃんのコンビネーションにビビッているのだわ!」

「そういうことではナイ! 主様が対魔王の切り札として用意した秘法ヲ……!? こんな小娘どもが自力で編み出したダト……!? 威力は弱く、理論も初歩。しかしジークフリーゲルに百年かけて修得させた『逢魔裂空』と本質は同じものヲ……!?」

身体的にダメージを受けたことよりもなお深刻なショックを受けてわななく。

「……私の言いたいことがわかりますか?」

レーディ。

前方へ油断なく警戒を送りながら、背後へ呼びかける。

この反攻を見届けたドロイエへ。

「本来敵同士の私とゼビちゃんだって、力を合わせればここまでやれるんです。元から仲間同士なら、もっと凄いことができるでしょう」

「…………ッ!?」

「相手は風と地を複合させて長所を組み入れている。こっちだって風と地がいるんです。上手く呼吸を合わせてください」

レーディとゼビアンテスの協力技を目の当たりにした動揺からか。

吹き荒れる礫風の勢いが衰える。

その隙を見逃すレーディではなかった。多少の石に当たるのはかまわずにこじ開けるように直進する。

「私が前衛になって時間を稼ぎます! その間にコンビネーションを完成させてくださいね!」

「あッ、待て……!?」

止める間もない。

勇者の助けなど絶対にいらないと言ったのに。

それでも勇者は、援けの必要な者ならば誰のためにでも戦う。