軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

179 ダリエル、帰る

何のための戦いだったのか?

よくわからない戦いが終わって俺たちは集結する。

「とにかく、よく戦った」

恐らく矢面に立っていただろうレーディ始め、その仲間たちをねぎらう。

「キミたちが戦った相手は間違いなく『天地』のイダだった。魔族史の中で間違いなく最強の一角に入る四天王と戦い、よく生き残った」

それは充分に誇るべきことだった。

「でも……」

レーディがどこか不満げに言う。

「こんなものを勝ちと呼んでいいのかどうか……!? 終始、あっちは私たちのことを圧倒していました。せいぜい『断空』で一矢報いただけで……、敵の消え方も全然納得できませんし……!」

「あの天から降りてきた巨大な手は何だったのでござろう……!?」

セッシャさんの疑問に被せるように俺は言う。

「わからないことは考えても仕方ないんですよ」

「しかし……!?」

「仕方ないんですよ」

俺としても、あの巨大手が誰の手だったか、これ以上は追及したくない。

絶対面倒臭いことになる。

「見事な『断空』だった」

そこへアランツィルさんも寄ってくる。

結局何しに来たんだこの人。

「見事に『断空』を会得したな。みずからの感性で」

「恐縮です! すべてはアランツィル様がくださったアドバイスあればこそです!」

え? そんなことしてたの?

「『断空』はかつて『裂空』と並びスラッシュ(斬)の究極奥義とされた技だ。オーラそのものを斬撃として飛ばす『裂空』に対し、『断空』はあくまで剣身にオーラをまとわせて斬れ味を強化することに専念する」

説明を引き継ぐと……。

単純な切断力は『裂空』を遥かに上回る『断空』で、斬れ味鋭すぎて空間にすら作用するまでになった。

しかし実戦においてそこまで究極の斬れ味は求められず、却って消費するオーラの大きい悪燃費な技となった。

オーラ使用の効率もよく、攻撃範囲も広い『裂空』に押されていき、いつしか使い手も絶えてしまったという。

「斬れ過ぎる刃は扱いづらい。ということで『断空』は実戦向きでない欠陥技の烙印を押された。そんな技を引っ張り出さねば対抗できない『天地』のイダとはたしかに恐ろしい相手だ……」

「というかアランツィルさん。そんなマニアな技まで使えたんですか?」

「当然だ、私もかつては勇者だったんだぞ」

過去の勇者のことは全然覚えてなかったのに。

戦いに使えることだけは凄まじい博識ぶり。恐ろしい。

「レーディは幼い頃から勇者になるために弛まぬ努力をしてきた。多くの師から学びもした。それゆえに『断空』のことも記憶にあったのだ」

「俺には真似できんなー」

見様見真似でアランツィルさんの『凄皇裂空』をモノにした俺だが、だからこそ大切な段階をすっ飛ばしている。

そういう観点から見ても、より勇者に相応しいのはレーディなのだろう。

「ところでアランツィルさん?」

「なんだ息子よ?」

「何故ここにいるんです?」

アナタには大事なマリーカとグランのことをお願いしたはずだが。

まさか二人を置いてきたのか?

あの狐狸跋扈するセンターギルドのただ中に!?

「安心しろ、手は打ってある」

「どんな!?」

「一緒に連れてきてあるぞ」

アランツィルさんの指さす方を向くと、そこに超見覚えのある人影が。

「マリーカとグラン!?」

「たしかにセンターギルドに残していくのは不安だったのでな。一緒に連れてきた」

「バカーッ!」

戦場に連れ出したらもっと危険でしょうが!

だからそもそも俺自身別行動をとったのに本末転倒がわからないのか!?

「ホントこの人は戦場以外でろくすっぽ頼りにならねえ!!」

「ダリエルよ。もう少し父に思い遣りをだな……!?」

アランツィルさんポンコツぶりはもうどうにもならないので、話の本筋を進めることにした。

俺はラスパーダ要塞で目撃したことを皆に伝えることにした。

要塞の消失。

生き残っていたインフェルノ。

そして今回の『天地』のイダの襲来は、そのインフェルノに起因していることも。

「あの凶悪な子どもは、あの事件の黒幕を負っていたというのでござるか……!?」

「ラクス村を襲った凶悪集団の……!?」

インフェルノは俺がこの手で殺したはずだ。

脳天から一刀両断に裂き、死体は独りでに燃えて灰も残らなかったはずなのに。

ヤツも『天地』のイダ同様、この世の法則に囚われない領域からやってきたのだろう。

世界が何者かに蝕まれている。

そんな漠然とした不気味さがあった。

「インフェルノは人間領に潜伏しているそうです。だから『天地』のイダは進入してきた」

「標的はそれか……!?」

「そうならそうと断ってから入ればいいのに面倒なヤツめ……!?」

それを言ったら元も子もないが。

向こうも断りなく入ってきたから人間側としても迎撃するしかないよね。

それに断り入れても人間側としては受け入れられるわけもない。

「インフェルノを探します」

力強く行ったのはレーディだった。

「人間の領域に潜む災いなら、勇者の私が対処するのが筋です。全町村のギルドに要請してインフェルノの行方を追い、私たちで追って仕留めます」

たった一戦を経てレーディは随分逞しくなった。

戦いが人を強くする、まさに好例といえるだろう。

「よし、じゃあ俺も……」

「ダリエル、お前は控えなさい」

「えー?」

アランツィルさんの指示に俺、不満。

またですか。

「レーディの言う通り、人間の平和を守るのは勇者の仕事。どっしりかまえて彼女に任せるのだ。お前はお前の仕事をするがいい」

「俺の仕事……!?」

ラクス村の村長として村を守り、発展させること。

一家の大黒柱としてマリーカやグランを養っていくこと。

もうすぐ次の子も生まれるし……。

「そうですね、いい加減そろそろラクス村に帰ります」

そう考えると、ここにマリーカグランがいるのは好都合だった。

このままラクス村へ直帰してしまおう。

一旦センターギルドへ戻ったら、また詮無い引き留めをくらうかもしれないし。

「グランバーザ様のことも心配だし。村に戻ればゼビアンテスから推移を聞けるかもしれないしな」

「……ダリエルよ」

アランツィルさんから言われた。

「私の心配はしないのか?」

「え? なんで?」

「私はお前の実父なのだが。グランバーザのことは心配して何故血の繋がった私は心配しない?」

「だってアランツィルさん、何処も怪我してないじゃないですか」

「しかしだな」

「しかしでもないですよ。無傷で切り抜けたんだから心配の必要もないでしょう」

「それでもだな」

やっぱり戦いの外にいるとわけわからん人だった。

ともかく諫められた通り、インフェルノの追討はレーディたちに任せることにして……。

これから俺はグランとマリーカを連れて最寄りの町村へ向かい、そこから馬車でラクス村へと戻るのだった。

よい観光だった。