軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

15 ミスリル鉱山、人間族の手に還る

「う~む……」

違和感。

何がかっつーと、たった今のこの俺の行動が。

たった一人で百人近くの魔王軍兵士を圧倒して追い返してしまった。

率直に言って大活躍。

こんな大活躍するなんて俺らしくない!

と違和感バリバリなのである。

この俺ダリエルと言えば魔王軍きっての落ちこぼれ。

魔族のくせに魔法が使えず、まるで戦力にならない。

ならばとせめて雑用一筋で四天王補佐にまで抜擢され、そしてやっぱり魔法が使えない落ちこぼれなのでクビになった

そんな俺が、かつて所属していた魔王軍相手に無双。

まあ、雑兵のみの一隊だけだけど。

自分が実は魔族じゃなく人間族だとわかり、人間族専用の武器攻撃を覚えただけでこんなに違うものか。

まだしばらく違和感とれないんだろうなあ。

「さて……」

「「「「ダリエル様ぁーーーッ!!」」」」

「うおッ?」

いきなり雪崩打つように群がってくる小人たち。

元々この鉱山に住んでいる亜人種ノッカーたちだ。

「さすがダリエル様ですだぁーーッ!! 最高ですだぁーーーッ!!」

「悪い魔族の兵隊を一掃ですだぁーーーッ!!」

「戦ってもこんなにお強いなんて知らなかったですだぁーッ!?」

うん。

俺自身つい最近知ったんだけども。

ノッカーたちは穴を掘り続ければ幸せな種族なので世事に疎く、魔族と人間族の戦闘法の違いなどに気づくことはなかった。

まあ、その方が都合がよかった。

「本当にありがとうですだ! ダリエル様のおかげで勇気が出ましただ!!」

「ああ、そうよかったねぇー?」

本来臆病な気質であるノッカーたちが、勇気を振り絞って反抗した。

そのらしからぬ行動の後ろには、やはり俺という存在が大きかった。

そもそも魔王軍側の無茶苦茶な要求に、我慢の限界が来ていたというのもあったが。

それでも抗えたのは俺がいたから、俺が味方に付いてくれると確信できたから。

彼等は勇気を振り絞って戦うことができたのだ。

もっとも俺が一人で全部片付けるとはさすがに予想していなかったらしく、武器として握ったツルハシやらシャベルがなんとも虚しかったが。

「……で、キミたちこれからどうするの?」

これで勝利めでたしめでたし、とは行かない。

魔王軍の一隊は追い返したが、それが魔王軍の全部では当然ない。

本隊はまったく健在で、戦いはむしろ始まったばかりと言えるだろう。

これをノッカーたちの反乱と捉え、より大きな戦力を投じて鎮圧に来ることもありえる。

その辺り、当のノッカーたちはどう考えているのか?

「ダリエル様にお任せしますだ!」

「ダリエル様の言う通りにしてたらなんも心配ないだ!!」

やっぱりなんも考えてなかった。

そんなことだろうと思ったよ。

あとの展望を全部俺に丸投げにできるからこそ、彼等は細かいことを考えずに反抗という選択をできたんだな!

この野郎!

「大丈夫だ! オラたちダリエル様のことを信じていますだ!」

「ダリエル様が決めたことなら何も心配ね! 安心ですだ!」

……。

そんな手放しに信じられてもなあ。

何故そこまで俺を信頼してるの?

以前ここの担当官だったから? その時の付き合いから?

俺そんな、彼らの心に残るような仕事した覚えはないんだがな。

他がよっぽど酷かったのか?

何にしても、彼らをこのまま放置というわけにはいくまい。

魔王軍に反抗した今、ミスリル鉱山のノッカーたちは寄る辺ない者たち。

このままでは立ち行かない。

彼らが安穏とした生活を取り戻すには……。

「…………!」

俺、黙考すること数刻。

「本当に、俺の言う通りにできる?」

「できますだ!」

即答かよ。

しかもいい返事だなあ。

「俺の言う通りにして絶対後悔しない?」

「ダリエル様なら絶対間違いませんだ! だから後悔も絶対しませんだ!!」

「ダリエル様となら地獄の果てまでお供しますだ!」

むしろ俺の方が地獄に引きずり込まれてる印象があるんだけども。

よし、しかたない。

じゃあやるか!

そして俺がしたことは、ラクス村に帰ることだった。

村長に相談した。

「鉱山を取り戻せるって言ったらどうします?」

「はあッ!?」

俺は、俺の前歴に関することを上手く隠しながら経緯を説明。

・先日の村長の話を聞き、何となく興味本位で鉱山を見物しに言った。

・するとノッカーが魔族に虐げられていたので義心をもって救済。

・魔族を撃退し、ノッカーから英雄に祭り上げられる。

という感じにしておく。

「この際、ノッカーたちに鉱山ごと恭順してもらうのが一番いいと思うんですが」

「恭順って!? 誰に!?」

「そりゃ人間族に」

「ワシらに!?」

ノッカーは亜人種というので、厳密には魔族にも人間族にも属さない小種族だ。

だからどちらに帰属しなければならないという原則的な決まりはない。

扱いの悪さに不満を持ったので、魔族から人間族に鞍替えします、というのもけして無茶な話ではなかった。

「いや無茶だろう……!」

「そうすか?」

村長はしばらく度肝を抜かれていたが、やがて考えを整理して……。

「わかった。これが実現すれば我が村どころか人間族全体にとっても有益な話だ。だがだからこそ、もはやワシの一存で動かしていい話ではない」

「わかります」

「急ぎ、都市部のギルドに使いを送ろう。そして冒険者を多く派遣してもらい守りを固める。鉱山をこれからどう扱っていくかは、もっと偉い人に考えてもらうとしよう」

村長は、ここぞという時は肚も据わって判断力がある。

俺から見ても概ねよしと思える決断の下、様々な人が忙しなく動いた。

鉱山及びノッカーたちの警護は、都市部から派遣される冒険者が到着するまでは俺が一人で行った。

幸い魔王軍は攻めてこなかった。

偉い人たちの間で議論されたところ。ミスリル鉱山は人間族の下で管理運営されることが決まった。

人間族にとって実に数十年ぶりに、高級鉱物ミスリルの産出元が手元に戻って来たので大成果。

色んな方面がお祭り騒ぎだという。

しかしそんなことよりも大事なことは、鉱山共々帰順してきたノッカーたちの処遇。

これも心配なく、引き続き同地で働いてもらうことが決まった。

もちろん満足な待遇で。

人間族にとっては、数十年と手元から離れ、構造や設備などまったくわからなくなっている鉱山。

その鉱山に住み慣れ、表から裏まで知り尽くしているノッカーたちが指導役となってくれれば助かると言うことだろう。

ノッカーたちに再び笑顔が戻ってくれれば、俺もまた嬉しい。

さて変化はそれだけでなく……。

俺の住んでいるラクス村にも大きな影響があった。

かつての村長の話を思い出す。

ここラクス村は、人間族領とミスリル鉱山を中継する土地として大いに栄えていたと。

ある時期から鉱山が魔族側に渡り、同時にラクス村も廃れていったと。

しかしこの度、ミスリル鉱山は再び人間族の手に戻ってきた。

鉱山と共に、寂れていたラクス村も再び甦る。

……。

俺自身まったく意識してなかったんだが……。

「大変なことになってきた……」