軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

148 ダリエル、活躍者を賞する

さて、次の話へ動き出す前にすべきことがある。

後始末だ。

ラクス村を襲った凶賊、約百名。

実際には百人にちょっと届くかどうかで百人足らずというのが正確なようだ。

いずれも生かしたまま捕え、動けないようにしてある。

数が数なのでセンターギルドから派遣されるギルドナイトが派遣されて、違法冒険者専用の収監施設へ送るのだという。

一応の取り調べによる結果、ラクス村を襲ったならず者たちは皆、各町村のギルドに所属する冒険者だった。

しかもD級とかC級とか位の低い。

調査によれば皆いずれも性格に難ある者ばかりで地元ギルドでは評判が悪く、パーティを組む相手もおらずに孤立する者ばかりだったらしい。

ラクス村を襲った者たちの大半が。

そういう鼻つまみ者なので失踪して却って清々するばかりで、各ギルドでも気に留める者もいなかったんだとか。

……。

以上のことから推測できるのは、インフェルノは洗脳して配下とする者に一定の基準を設けていたということ。

性格が捻じ曲がっていること。

性根が腐っていること。

そういう者たちを好んで洗脳魔法で支配していた。

どういうことだろうか?

無論そういう自己制御のできない者ほど洗脳魔法にかかりやすいという見方もある。

しかしインフェルノが設けた選考基準には、さらなる意味があるような気もするわけで……。

「……考えても仕方ないか」

今ある情報で結論を出すのが不可能なら考えるだけ無駄。

俺は別の処置に心を向けることにした。

それは、今回の事件で頑張ってくれた人たちへのねぎらいだ。

肝心なタイミングで村を留守にしていたからな俺。

作戦で必要なことだったと言えども、不在中代わりに村を守ってくれた人たちには感謝を述べなくては。

そう思ってまず声をかけたのはレーディ。

なんてったって勇者だから、きっと防衛時には功一等の働きをしてくれたと思う。

「私特に何もしてない……!」

「あれー?」

しかしレーディは気落ちしていた。

防衛戦の中、あんまり活躍しなかったのを苦にしているらしい。

「よく思い返したら……! 最初に襲ってきた一団を制圧したのはガシタくんとゼビちゃんだし……! ガシタくんは敵に一杯矢を刺して、ゼビちゃんが風でふっ飛ばして……! 私はそれを見てただけ……!」

「いやいやいやいや……!」

「本格的な襲撃が起きてからは村の冒険者が総出で迎え撃ったんで皆に功があって……! 私は勇者だから人一倍働かないといけないのに……!」

「な、何だかよくわからないけど大丈夫だよ? レーディはきっとよく働いたよ?」

むしろ慰める側に回る俺だった。

「ほら、レーディはきっと勇者として皆の指揮をする側に回ってたんだよ? 集団せんは連携が大事だからね?」

「そうでしょうか?」

「そうだよ! 皆の代表に立って指揮が取れるのは勇者のレーディしかいないよ!!」

何とかうまくフォローできたであろうか?

「わたくしは頑張ったのだわ!」

それに対してゼビアンテスの女郎の元気なこと。

敵の使ってくる魔法モドキを見破ったり、実際風魔法で吹き飛ばして無力化させた敵が多いとかで大活躍だったそうだ。

そもそもコイツが防衛戦に加わっていたこと自体『どうなの?』という気がしないでもないが。

でも活躍したから業腹でも褒めないわけにはいかない。

俺不在だったんだし。

「え、偉いなー……?」

「はぁ!? 褒め方が足りないのだわ! わたくしがいなかったら村が滅んでいたレベルなのだから誠心誠意を込めて褒めるのだわ!!」

「あーはいはい。偉い偉い……!?」

「もっと褒めるのだわー!」

「偉い偉い偉い偉い……!?」

「まだ褒めるのだわ! もっともっとー!」

「うるせえええーーーッ!!」

わりと早めに我慢の限界が来てゼビアンテスを放り投げる。

次行こう次々!

「ガシタ、今回も本当によく頑張ってくれたな!」

「アニキの舎弟として当然っす!」

この謙虚さよ。

ゼビアンテスにも見習わせてやりたい。

「ガシタは、最初に襲ってきた一団を一人で食い止めてたんだって?」

「そっす! でも何本刺しても怯む気配がないからちょービビッたっすよ! 弓矢って距離詰められたら終わりなんでなおさらっす!」

うむ。

そういう窮地をよく切り抜けたな。結局ガシタは自分も危機に晒すことなく一人として村に入れなかったそうだから、よく頑張った。

「洗脳魔法は、レベルが上がると特定の感覚までカットしてくるからなあ。痛覚切ってきた敵の相手は大変だったろう?」

「うっす! でも途中から『痛みに怯まないなら、無理やり気絶させればいんじゃね?』ということに気づいて戦法切り替えたっす!」

ガシタは矢に込めたオーラを操作して、命中の瞬間、標的の内側に衝撃を与えて気絶させる技術を修得していた。

『いつの間に?』と思ったが、たしかにその技ほど今回の敵に有効なものはあるまい。

「それで手早く最初の敵を片付けたあと、村内への応援に向かったっす!」

大活躍じゃないか。

村内ではラクス村所属の冒険者たちが総出で迎撃し、これまた大活躍だった。

勇者パーティに所属するセッシャさんにサトメ。

ガシタの嫁として村に定住するようになったアルタミル。

そしてつい最近ウチに居着き始めたリーリナ。

皆が一丸となってこそまったく村に被害が出ないよう守り抜くことができた。

村長として感謝に耐えない。

『セルメトを救う』&『敵の頭を潰す』という作戦だったとはいえ本来、村を離れてはいけない俺の留守中によく頑張ってくれた。

この頑張りには、ギルドを通して特別報酬という形で応えさせてもらおう。

そして最後に。

もう一つだけ着目すべき点があった。

ウチのマリーカだ。

帰ってきて『奥さんも戦ってましたよー』と言われた時心臓が止まりそうになった。

慌てて帰って問い質してみたら本当に戦っていたという。

幸い怪我もなく、むしろ獅子奮迅の活躍だったと聞いてまた困惑。

『何やってるの!?』と叱ったものの、マリーカは村長夫人として当然の役目だと言って毅然とする。

なので何も言えない。

せめて一言……。

「グランまで前線に連れてったって聞いたけどなんで? まだ赤ちゃんだよ? 危険すぎるでしょう?」

と抗議したが……。

「グランはアナタの息子よ。将来大きくなったらアナタを助けて村を守らなきゃいけない。強くならなきゃいけないの。今のウチに戦いの空気に慣れておいて損はないわ」

ママさん厳しい。

厳しすぎない?

まだ生後一年も迎えてない赤ちゃんに戦場の空気を体験させておこうとか?

「大丈夫よ。この子はアナタの子なんだから。私だって他の人との子だったらここまで思い切ったことしないわ。アナタの才能を受け継ぐグランだから、これぐらい平気だと思うし、これぐらい必要だと思うの」

「いや、まさか……!!」

まだ才覚の有無なんてわからない赤ん坊相手に……!

育児方針についてマリーカとよく話し合う必要があるなと感じた矢先だが、横から流れてくる雑音。

「やーでも村長の奥さん凄かったよなー!?」

「斬突打守、全部のオーラ特性使いこなすんだもんなー! 村長の同じで何なのあの夫婦!?」

……。

何ですと?

マリーカがオーラ四特性すべてを使いこなした?

んなバカな。

オーラの適性には得手不得手があり、得意なものがあれば必ず不得意なものが出てくる。

『全部大得意』というのは本来ありえないのだ。

その例外として歴代最強の大勇者と讃えられるアランツィルさん。

その血統を受け継ぐ俺も全適性の恩恵に預かっている。

しかしその血統の外で、本来ないはずの全適性がポンポン出てくるなんてありえるのか?

しかも俺の妻に……!?

偶然にしてもできすぎている。

俺とアランツィルさんの血統に連なる者ならまだしも……!?

「うん?」

そこで俺は気づいた。

俺の血統に連なる者なら既にもう一人いるではないか。

しかもマリーカは戦闘中、ずっとその子を胸に抱えていたという。

「グラン……、お前なのか?」

現在も母親の胸で我関せずな顔つきをしているマイサン。

この子が類まれなる才能を開花させて母親の体を通してオーラを発揮した?

マリーカはそれを通して無双したってことか?

「マジでお前なのか?」

グランは答えない。

この年齢で言葉を解するはずもなく、ただあるがままを受け止めるような表情をするのみだった。

……。

まあ結論は急ぐまい。

わかったことはただ一つ『ウチの子は天才』というだけでよかろう。

ウチの子天才!!