軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

強者だけが注目してる感じの試合

武神祭の4回戦が始まった。

アンネローゼは観客席の最前列に座り、目当ての試合が始まるのを待っていた。

水色の髪が風に揺れ、同色の瞳は闘技場を見据えている。観客の数は昨日よりは増えていたが、それでもまだ半分に満たない。

「嬢ちゃんも、あいつの試合目当てか?」

声をかけられて、アンネローゼは振り返った。

「確かアナタは……」

「クイントンだ」

悪役プロレスラーの様な外見のクイントンが、アンネローゼの隣にドカッと座った。

「嬢ちゃんも昨日の3回戦、見てたんだろ?」

「そうね。そう言うアナタも?」

「俺は見るつもりはなかったんだが、偶然目に入ってな。ジミナ・セーネンの3回戦、あんたはどう見た」

クイントンは脚を前に投げ出して、アンネローゼに問う。

「対戦相手が転んで運良く勝ったようには見えなかったわ」

「ああ。あいつ、何かやりやがったぜ。俺にはそれが何なのか分からなかったが、嬢ちゃんなら分かるかと思ったんだけどよ。『ベガルタ七武剣』のアンネローゼさん」

クイントンの不遜な眼と、アンネローゼの鋭い眼光が一瞬ぶつかった。

すぐに、アンネローゼは顔を背け脚を組んだ。スカートのスリットから白い脚が露わになる。

「その名は捨てた。今はただのアンネローゼだ」

「そりゃすまねぇ。遅くなったが『女神の試練』合格おめでとう」

「ありがとう」

「それで、まさか嬢ちゃんでも分からなかったのか? 奴が何をしやがったのか」

「わ、分からなかったわ」

少しムッとしてアンネローゼは言う。

「まさか見逃すとは思わなかったのよ。油断したわ。ただ……ジミナ君の右手が動いたように見えた」

「ほう、右手が」

「右手で何をしたかはわからないわ。一つ言えるとすれば、とてつもなく速かったってこと」

「ふん。となると俺の予想は外れか」

クイントンはつまらなそうに鼻を鳴らした。

「予想?」

「使用禁止のアーティファクトか何か使いやがったかと思ったんだがな」

「なるほど……その可能性もなくはないわ」

「どちらにせよ、今日の試合で分かる」

「そうね。対戦相手は不敗神話のゴルドー・キンメッキ」

「俺は知らねえが、有名らしいな。一度も負けたことがないってよ」

「良くも悪くも、有名ね」

アンネローゼは苦笑した。

「強いのか?」

「そうね……。私はこれまで色々な国で戦ってきた。実戦もあったし、闘技場での大会もあった。過去の大会で3度、私はゴルドー・キンメッキと当たっている」

「ほう。ゴルドーは一度も負けたことがない……てことは嬢ちゃんが負けたのか?」

アンネローゼはクイントンを軽く睨んだ。

「そんなわけないでしょ。戦えなかったの。彼、相手が強いと逃げるもの」

「は? 何じゃそりゃ」

「彼は負ける可能性がある相手とは決して戦わない。勝てる相手とだけ闘って、強い相手と当たった時点で棄権する。ついた二つ名は不敗神話。誰も彼には勝てないわ。彼はその二つ名が嫌で常勝金龍と名乗っているようだけど」

「常勝と不敗。似ているようで全く別の意味だな」

ククッとクイントンが笑った。

「ま、要するに不敗神話さんは期待できねーってことか」

「どうかしら」

アンネローゼは唇の端で笑った。

「ん、どういうことだ?」

「不敗神話は確実に勝てる相手とだけ闘って、大会で上位に食い込んでいる。規模の小さい大会なら優勝経験もあるわ」

「ほう……なら弱いわけねぇな」

クイントンの目が鋭くなった。

「ええ。彼の強みは実力差を確実に見抜くことよ。その彼がジミナ相手には逃げなかった。つまり……」

「なるほどなぁ」

クイントンは狂暴な顔で笑う。

「ジミナの実力を不敗神話ですら見抜けなかったか」

「それともジミナがアーティファクトに頼った卑怯者か」

「付け加えると、不敗神話は確実に勝てる相手とだけ闘ってきた。彼はまだ一度も本気を出していないわ」

「面白くなるな」

「ええ、面白くなるわ」

クイントンが獣のように笑い、アンネローゼが唇を舐めた。

そして、二人の視線が闘技場の中心に向かう。

歓声とヤジが降り注ぐ中、ジミナ・セーネンとゴルドー・キンメッキが向かい合っている。

この試合の意味を真に理解している観衆は、まだ二人だけ。

「4回戦第6試合ゴルドー・キンメッキ対ジミナ・セーネン! 試合開始!!」

そして試合が始まった。