軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

緻密な魔力制御を見るのだ

白い髪のイケメンである。

見た感じ強キャラっぽいが、どうやって現れたんだろう。空間が歪んだように見えたけれど、魔力とかは全く感じなかった。

「既に知っているだろうが、私がモードレッドだ」

イケメン君はモードレッドと名乗った。

「――話は聞いている」

誰に聞いたとかは言わない。誰からも聞いていないからだ。

「参考までに聞いていいだろうか。なぜこの場所が分かった?」

僕は意味深な薄い笑みを浮かべて間を持たせる。

「――過去が導いた」

「なるほど、過去か……」

モードレッドはフレイヤさんを見た。

「確かに、過去の残骸だ。憐れな女よ……」

フレイヤさんはモードレッドを睨む。知り合いかな?

「黒き薔薇が観測され、過去の残骸が現れた。偶然ではない。貴様の仕業だな、シャドウ」

僕の仕業かと聞かれれば、僕の仕業である。

しかしモードレッド君は見た感じこの凄い研究施設の重要キャラだ。しかも指と幽霊だけど二人の観客がいるこの状況、かっこよく陰の実力者感溢れる深みのある返答が求められる。

「終幕が近い――全てを清算する時が訪れたのだ」

深みのある声を響かせて、僕は魔力の波動を放つ。

青紫の魔力を炎のように揺らして僕の身体を包み、その風圧で漆黒のロングコートをはためかせる。

かっこいい。

「その魔力……本物か」

魔力で起こした風でモードレッドの髪を揺らす。

これが結構難しいのだ。

一瞬だけなら簡単なんだけど、持続させるとなると魔力の消費も多くなるし、制御も複雑になってくる。魔力の消費を抑えつつ圧力を高めるために、圧縮と開放を高速で繰り返しかつ一定の風圧を維持するには魔力を均一に保たねばならないのだ。

僕の風圧は常に一定。

つまり完璧に制御している、この事実にモードレッドも戦慄したはずだ。

「凄まじい魔力と密度だが……魔力だけで強さが決まるわけではない」

違う、そこじゃない。

僕はあえて風圧を細かく制御し強弱をつける。ほら、この緻密な魔力制御を見るのだ。

「ここで相手をしてやってもいいが……清算の時はまだ先だ」

モードレッドがそう言うと、空間が歪んだ。そして空間にノイズが走ったかのようにひび割れていく。

「次は正規の入り口から来るがいい――招かれざる者たちよ」

あ、これまだボスとは戦えないイベントだ。

「そうか……いいだろう」

魔力とは全く別の力で、空間から放り出されていくような感覚。

聖域で感じた力とやはり似ている――つまり。

「アイ・アム……アトミック」

僕は全部吹き飛ばせば大丈夫の精神で放った。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「これは……」

モードレッドは戦慄した。

去り際に放ったシャドウの一撃は、空間に甚大な被害を与えていた。

実験体のポッドは崩壊し、空間に穴が開いている。あと一瞬でも遅ければ、この空間全てが飲み込まれていただろう。

まるで、世界を飲み込むかのような黒い穴だ。修復には時間がかかるだろう。

「奴の魔力は空間に影響を与えることができるというのか……いや、そのためにあれだけの魔力を用意した」

そうとしか考えられない。

「つまり、奴は最初から知っていた。この空間がどういう場所にあるのか、そしてこの空間が持つ意味を……」

モードレッドの頰に冷たい汗が流れる。

「終幕が近い。全てを清算する時が訪れた」

モードレッドはシャドウが残した言葉を呟く。

終幕が近い――その通りだ。だからこそ教団は動き出したのだ。

そして、全てを清算する時――。

「我々に清算させるつもりか」

間違いなく、シャドウは知っている。何もかも全てを知っているのだ。

「計画を早めるしかない。奴は……『魔界』の存在を知っている」

そして踵を返した瞬間。

ポタリ、と。

何かが床に落ちた。

「何……?」

それは血だった。

真っ赤な血が、白い床に広がっていく。

その時初めて、モードレッドは右腕の感覚がない事に気づく。彼の右腕は、肩から先が千切れかけた状態でぶら下がっていた。

「シャドウ――これほどか」

モードレッドは冷たい瞳でシャドウが消えた空間を見据えた。