軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

コミュ障二人

『黒き薔薇の誓い』は城を占領してから三日後に動き出した。

ゴルドーさんは国王派と連絡を取り、本隊と合流することになったようだ。今回の功績のおかげでもしかしたら正式な部隊になれるかもしれないらしい。

そんなわけで、僕らは進軍中。

国王派はオリアナ平原へと集っている。

ドエム派もオリアナ平原で戦うつもりだろう。

いよいよ本格的な戦争が始まるのだ、ワクワクする。

オリアナ平原を越えれば、王都はすぐそこだ。

国王派はまずオリアナ平原で勝利し、その後王都に進攻して攻城戦って流れかな。

パーツ探しの目的地も王都だし一石二鳥である。

イプシロンは僕の弟ということで部隊に入れてもらった。

おっさん三人と僕ら二人+指でしばらく進攻すると、僕の親戚が二人増えた。

うん、面識とかないんだけどね。

休憩中にイプシロンが新たなエルフを二人連れて来たのだ。

「カイと申します」

「オメガです……」

カイは金髪ショートカットの男装の麗人だ。すごいしっかりしてそう。

オメガは黒髪のハーフエルフだ。金と銀のオッドアイ、物静かなエージェントタイプ。

女性らしい肉体はスライムボディスーツで締め付けて隠している。

「二人は私の部下として動いてもらっています」

イプシロンが誇らしそうに胸を張る。

ミツゴシ商会の部下ってことか。イプシロンも偉くなったものだ。

「とりあえず親戚ってことでいいかな」

「はい、シド兄様」

「どうせ人手足りないだろうしごり押しでいけるでしょ」

結局、二人はごり押しするまでもなく『黒き薔薇の誓い』の一員として認められた。

まぁスパイとかこんな部隊に来るはずないしね。

新たに二人が増えたことで、僕らはおっさん三人とは分かれて行動することになった。

僕、イプシロン、カイ、オメガ、ヴァイオレットさんだ。

これで陰の精鋭部隊ごっこができる。

ヴァイオレットさんはファン〇ルみたいに使えそう。

ということで、その日の進軍を終えて野営の準備をしながら作戦を提案することにした。

既に日は沈み、焚火の灯りが僕らを照らしている。

「はい、みんな集合」

鍋の準備をしていたカイと、寝床の準備をしていたオメガを呼ぶ。

イプシロンは山へ肉を狩りに行っているけど、もうすぐ帰ってくるはずだ。

ちなみに僕は焚火番。焚火を見ているだけだ。

「シド様、何か御用でしょうか」

カイが今すぐ跪きそうな勢いでシュタッと現れる。

「任務ですか……」

オメガも残像を残してやってくる。

「いや、普通に来てくれればいいから」

「は、はい、申し訳ございません」

「やり直します……」

よく見ると二人ともガチガチだった。

カイは手と足が同時に出ている。

オメガは手がプルプル震えている。

彼女たちは元いた位置に戻ると、顔面蒼白で歩いてくる。

どう見ても普通ではない。でも言わない。

そもそもやり直す意味とはなんぞや。でも言わない。

「シド様、何か御用でしょうか」

カイが手足同時にやってくる。

「任務ですか……」

オメガもプルプル震えてやってくる。

「イプシロンが戻るまで焚火で暖まろう」

寒さに弱いのか……あ、もしかしてコミュ障か。

「恐れや不安を解消するには、まずそれを正しく認識する必要がある」

僕は焚火を囲んでカウンセリングすることにした。

「はい」

「なるほど……」

ついでだからポケットからヴァイオレットさんの指を取り出して温めると二人ともビクッと震えた。

「自分が何に対して恐れを感じているのか認識しなければ対策もできないからだ。よくある間違いは、恐れを否定し現実から目を背けることだ」

「勉強になります」

「戦場の極意ですね……」

「感情の否定は現実からの逃避でしかない。まずは恐れを受け入れるのだ」

二人ともとても真剣に聞いてくれる。

割と適当なこと言っているだけの僕は、その真っすぐな眼差しから目を逸らして明後日の方を向いた。

「さあ、焚火を見ながら自分と向き合うのだ。何を恐れているのか……真実を見出すのだ……」

「自分と……」

「向き合う……」

そんな感じで、イプシロンが来るまでに少し仲良くなれた。