軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

即死だった

まぁまぁ、結果として悪くない方向に進んだんじゃないだろうか。

僕の魔力によるパワーアップで勝利したわけだし、『黒き薔薇』のおかげってことになっているけどこれはこれで使い道はあるかも?

ひとまず成功ということで。

ラギッタ伯爵の城を落とした『黒き薔薇の誓い』の皆は後処理をやっている。ツルピカーノが戦死したらしく、ゴルドーさんが新しいリーダーになったみたいだ。あまりよく聞いてなかったけど、ゴルドーさんの説明だと近いうちに国王派と連絡を取って合流するらしい。

そんなわけで、僕も後処理だ。

まだ夜は明けておらず、頭上には月が輝いている。

僕が魔力探知で探ってみたところ、何やら知っている気配を二つ発見した。

一つ目は城の上層部にある。なかなか禍々しい魔力を放つそれは――。

「ヴァイオレットさんじゃないか」

聖域で出会った友達だ。彼女はファンタジー的な幽霊っぽい存在で、消えてしまったけどこの世界のどこかに本当の彼女がいるらしい。

この気配はヴァイオレットさんの一部って感じかな。今は周りに人がたくさんいて近づけないから、静かになったら挨拶に行こうかな。

そして、二つ目の気配は城の地下にあった。

「こんなとこで何してるんだろ」

僕は後処理をサボってこっそり城の地下に潜入した。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

イプシロンは城の地下で、莫大な魔力の波動を感じた。

「この魔力は……?」

外で何かが起こっているようだ。

これほどの魔力を放てる人間をイプシロンは主以外に知らない。ただ彼女の主は魔力の波動を変化させるため、イプシロンに識別することはできなかったし、忙しい主がこんな辺境の城に訪れるとも思えなかった。

だとすれば、主に匹敵する実力者か、アーティファクトや自然現象の可能性もある。

どちらにせよ、地上では何か大きな事件が起こっているということだ。

「まずいわね……」

イプシロンは胸に刻まれた大きな傷を押さえた。

彼女はシャドウガーデンの任務でオリアナ王国に潜入していた。世界有数のピアニストとして芸術の国でも高い評価を得ていた彼女は容易に内部に入り込み情報を集めていた。

しかし、王城の深くまで潜入した彼女はそこでモードレッドに見つかったのだ。

戦いはモードレッドの奇襲で幕を開けた。

モードレッドが放った一撃は、イプシロンの胸を深く切り裂いた。

普通ならその一撃で終わっていただろう。

しかし――。

「うぅ……スライムがなければ即死だった……」

彼女の防御性能は高かった。特に、心臓は厚く守られていたのだ。

それでも、完全な奇襲を受けたイプシロンは本来の防御力を発揮することはできず重傷を負ったのだ。

事実上、その一撃で勝負は決まった。

あとは、不利を悟って逃げるイプシロンと、それを追うモードレッドの展開となった。だが重傷を負ったイプシロンが容易に逃げ切れるはずもなく、彼女は苦渋の決断をした。

計画のため仕掛けておいた爆弾を起爆させ、城の一部を爆破したのだ。

爆破に乗じて城から脱出し、モードレッドを振り切ったイプシロンだったが、教団の追手は彼女を執拗に追い回した。

季節は冬、オリアナ王国はどこも雪が降り積もり、イプシロンの逃走は困難だった。雪の上を歩けば足跡が残る。イプシロンの場合は血痕と血の臭いも……。

痛む傷を我慢して距離を離しても、追手はすぐに追いついてくる。

重傷を負った彼女の体力は次第に奪われていく。そして彼女は賭に出た。

ラギッタ伯爵の城に潜み追手をやり過ごすことにしたのだ。灯台もと暗し。まさか教団幹部の居城に彼女が潜んでいるとは思わなかったのだろう。イプシロンはそこで、数日の時間を稼ぐことができた。

しかし、先ほど起こった地上での騒ぎが問題だった。あれ程の魔力だ。時間が経てば人も注目も集まり、逃走は困難になる。

イプシロンはすぐに移動しなければならなかった。

だが、傷を癒すには時間が足りなかった。

「クッ……」

モードレッドの一撃はそれほど深く彼女を傷つけ、体力と魔力を奪っていたのだ。

彼女は地下道の壁に手を付けて立ち上がる。

傷口が開かないようにゆっくりと歩いた――その時。

前方から近づいてくる複数の気配を感じた。

少し遅れて、背後からも足音が近づいてきた。

「ああ、もう……」

ついてない。

イプシロンはスライムソードを抜き前へと進んだ。

追いつかれる前に、突破するしかない。

そして、会敵する。

「膨大な魔力を感じて来てみれば、こんな所に逃げ込んでいたか」

教団の追手。

それも、二つ名持ちが五人……。

「私に五人もよこすなんて、教団も暇なのね」

「それだけ危険視しているということだ。貴様らのおかげで、どれだけ我々の計画が狂ったか……ッ」

「光栄ね」

軽口を叩くが、重傷を負った状態で教団の二つ名持ち五人相手は厄介だ。

背後からの足音は着実に近づいている。

イプシロンは小さく舌打ちをした。