軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

それから

その後、私とユリウスはブラザー・マテオに、霊廟のほうから駆けてきたレオンに襲われた、彼が何かの聖術を使おうとして失敗し、あのような状態になったと打ち明ける。

霊廟のほうからも複数の悲鳴が聞こえたので、調査してほしいと訴えた。

あとから駆けつけたブラザー達によってノルベルト・ケステン及びグレイ・フォン・オンケンの二名は保護された。

二人とも大量の血を失って危険な状態だったようだが、なんとか一名を取り留めたという。

意外なことに、レオンも死んでいなかったらしい。

ただ、治療に数年単位かかるようだ。

彼が行った吸血行為については、何も見ていなかったということにしている。

ただ私とユリウスは、外出先から戻ってきたときにレオンに襲われた。それ以外は何も見ていない、で乗り切ったのである。

そんな訴えが通用した理由は、レオンの意識がなく、私達のことについて語れないような状況にあったから。

もう一つはパウウル、フィン、ヘィン、ホィンの三人が太陽寮の生徒に私達がいないことを訴えて探し回り、大勢の人達を巻き込んで捜索してくれたことも理由の一つだろう。

なぜそのような大騒ぎにできたのか。それはノルベルト・ケステンが不審な行動をしていたことも助けとなったという。

なんでも彼は、私が外出してから太陽寮の生徒に所在を聞いて回っていたという。

様子が普通ではなかったらしく、皆の目には怪しく映っていたらしい。

その後、彼とグレイ・フォン・オンケンがいないことが明らかとなり、昼間のおかしな行動のこともあって、私共々どこかに連れ去ったのではないか、という疑惑が生まれたという。

パウウルとフィン、ヘィン、ホィンもノルベルト・ケステンからしつこく私の居場所を聞かれていたこともあって、ブラザー・マテオに報告して捜索を行うこととなったらしい。

そんな感じで事件は大騒動となり、学校側も私達の存在ごと事件をもみ消すことができなかったに違いない。

ルームメイトのみんなに感謝したのは言うまでもなかった。

ルベルト・ケステン、グレイ・フォン・オンケンの二名については、レオンの暴力により負傷という報告が発表された。

吸血行為については、当然ながら触れられることはなかったのである。

ただ、レオンの口ぶりからして、ああして 劣等生(フェアザーガー) に 兄弟(ブリューダー) にしてやると騙し、吸血行為に及んでいたのは初めてではないだろう。

突然姿を消した生徒の中には、レオンに血を吸われて、命を落とした者だっているはず。

ハンス、ルーカス、マクシミリアンの三人も、レオンに襲われた可能性が浮上した。

ただレオンの意識が戻らない以上、確認などできないのだが……。

その件について、ユリウスは話したいことがあるという。

月寮の彼の個室に初めて招かれた。

部屋は思っていたよりも広く、毛足の長い絨毯が敷かれ、マホガニーのテーブルに長椅子、本棚、勉強用の卓に椅子、大人三人が余裕で眠れるくらいの立派な寝台と、太陽寮の部屋とは天と地ほども異なっていた。

ユリウスに勧められ、ふかふかの長椅子に腰を下ろす。

彼の表情は少し緊張しているように思えた。

「このようなところに呼びだしてすまない」

人目を避けるため、ここしか思いつかなかったという。

寮を出るさいパウウルから心配されたものの、ユリウスのところに行くだけだと答えると、安心したように送り出してくれた。

「あの日のことについて、何から話したらいいのか……」

レオンの吸血行為は非常にショッキングだった。

数日経った今でも、悪夢のように夢にでるくらいである。

「この話を聞いたら、アルヴィは私からも距離を取るかもしれない」

いったいどのような事情を把握しているというのか。

覚悟を決め、ユリウスの話に耳を傾ける。

「我々上流貴族の多くは、 吸血鬼(ヴァンピール) と呼ばれる存在なんだ」

吸血鬼――それはおとぎ話に登場するような、非現実的な存在である。

まさか実在していたなんて。

ただレオンの吸血行為を目にしていたので、吸血鬼が存在していたのではないか、と考えていたのである。

「どうして吸血鬼という存在が上流貴族なのか、という話は、この国の隠された歴史を語らないといけない」

アインホルン聖国は聖騎士が守護し、神を信仰する敬虔な信者達が暮らす平和な国だったという。

そんなアインホルン聖国の人々を害なす者達が現れた。

吸血鬼と呼ばれる化け物だったという。

聖騎士達は吸血鬼を退治に出かけたが、返り討ちにされてしまった。それだけでなく、彼らは国を乗っ取ってしまったのだ。

「吸血鬼には弱点があった」

それは日光と、聖なるものと、臭いが強い食べ物。

「ただそれらも、アインホルン聖国の王族や貴族と婚姻を重ねるにつれて、克服していったという」

現在は弱点がほぼない吸血鬼として存在しているようだ。

「ただ彼らは臭いにだけは酷く敏感で、肉や魚ばかり食べる者の吸血行為を嫌った」

吸血鬼の食料となる血を提供する者の臭いを除去するために、断食が始まったのだとか。

まさか、断食が吸血鬼側に都合がよくなるように行うものだったなんて……。

ここでようやく、寮母とユリウスの不可解な会話を理解する。

寮母が言っていた月寮の食事だという 新鮮冷結血漿(フリージング・ブルート) 、 血漿薬(ブルート・メディカメント) 、 生き血(フリッシェス・ブルート) は、人の血から作られた吸血鬼専用の食料だったのだろう。

「しかしユリウスは、それらを口にしないと言っていましたね?」

「ああ、私は人の血を必要としない、 菜食主義(ヴェゲタリッシャー) だからな」

「それはつまり――?」

「吸血鬼ではない、ということだ」

母君がオブリガシオン王国出身だからなのか、ユリウスは吸血鬼ではなかった。

「吸血鬼ではないからこそ、一族から爪弾きされていたのだ」

まさかそのような事情があったとは……。

「ただ、吸血鬼の血を引いていることは確かだ。私がおぞましいだろう」

「いいえ、そんなことはありません!」

ユリウスはレオンのように我を失ったような、暴力的な行動はしない。

いつでも紳士で、優しく、私を対等に扱ってくれたのだ。

「これからも、ユリウスの 兄弟(ブリューダー) でいさせてください」

「いいのか?」

「はい!」

ユリウスは安堵したような表情を浮かべる。

吸血鬼の存在が明らかとなり、レオンの暗躍も目にすることとなった。

もしかしたらユリウスの兄バルドルや、ラウル枢機卿が姿を消した事件も、吸血鬼が関わっている可能性がある。

今後は視点を変えて、調査することとなるだろう。

この件に深入りすることにより、危険な目に遭うかもしれない。

けれどもユリウスがいれば大丈夫だ。

不思議とそう思える。

私達は行方不明事件の解決を目指し、今日も調査を重ねるのだった。