作品タイトル不明
ユリウスの疑問と決意
すべてを話し終えたあと、ユリウスは頭を抱えていた。
「こんなに喋るつもりはなかったのに……!」
私も聞くつもりはなかったのだが、気付いたときには洗いざらい話していたという。
「これまで誰にも話したことなどなかった。この先もずっと他人に打ち明けるつもりなんてなかったし、胸の中にしまっておくつもりだったのに……」
どうしてだ? と真顔で聞かれてしまう。
私に聞かれても……と思ったのだが、彼はとにかく悩んでいるようだった。
「まさか自白剤の水でも飲んでしまったのか!?」
「あなたは私が水を勧めるたびに、拒否していたではありませんか」
「そうだった」
彼はどうしても、自らの秘密を話してしまった理由について知りたいようだった。
どうしてかそんなの知らない、と突き放すことは言いたくなかったのである。
仕方がない、と私も事情の一部を打ち明けることにした。
「実を言えば、私もある目的があって、神学校に入学したんです」
「アルヴィも?」
「ええ」
セシリアに頼まれたもう一つの任務――それは神学校に留年していた彼女の叔父、ラウル枢機卿の不審な死について調査すること。
「私の友人の叔父も神学校に通っていたのですが、ある日亡くなってしまい、その翌日にご遺体がきれいさっぱり消えてしまうという事件がありまして」
ラウル枢機卿の場合はオブリガシオン王国にいて、神学校に行くと言っていたわけではない。けれども何年も神学校に行きたがっていたのだ。
「遺体が消えただと?」
「ええ。関係ない可能性もありますが、友人は神学校に何か関わりがあるように思えてならなかったようで」
私は単独でアインホルン聖国の神学校に入学し、調査することとなった。
「事情は異なりますが、私達は〝いなくなってしまった人の行方を探る〟という共通点があったわけです」
神の思し召しで引かれ合い、こうして互いに事情を打ち明けるような状況になったのではないか。そう仮定してみる。
「神の思し召しか……たしかに、それならば納得できる」
ユリウスが抱える事情を知ってしまった以上、何もなかったかのように振る舞うのは難しい。
そこで私は勇気を振り絞って、ある提案をしてみる。
「よろしければ、これから協力して、調査しませんか?」
「私の兄と、アルヴィの友人の叔父がいなくなった謎について、共に調べると」
「ええ」
もしかしたらまったくの別事件である可能性が高いだろう。
それでもいい。
私はラウル枢機卿について調査したいし、ユリウスにも手を貸したいと思っている。
「神学校内で何か探るのであれば、二人で行動したほうが、不審に映らないかもしれませんし。その、昨日の裏庭でのことのようにやりすごすこともできるでしょうから……」
ユリウスは昨日の出来事を思い出したのか、じわじわ顔を赤く染める。
そうなる気持ちもわかる。
裏庭で大勢の人達が逢瀬を重ねている光景なんて、大きな衝撃だろうから。
「しかし、本当にいいのか?」
「それは私の台詞です。決めるのはあなたですから」
「私が決めても問題ないと?」
「ええ」
「わかった」
ユリウスはそう言って、少し待っているように言う。
もしかしたら一人で考える時間が欲しいのかもしれない。
しばらくすると、クラスメイト達がやってきた。
ホィンもやってくる。
「アルヴィ、かなり早かったんだね」
「ええ……。昨日の三人のことが気になって」
「来てる?」
「いいえ。それどころか、彼らの席もなくて」
「え、嘘!!」
教室内の席の位置も変わっていると教えて上げると、ホィンは「本当だ!」と驚いていた。
「退学してしまったってこと?」
「そうだとしたら、ブラザー・マテオからホームルームに話があるはずです」
「そ、そうだよね」
そんな会話をしているうちに、ホームルーム開始の鐘が鳴る。
ブラザー・マテオがやってくる前に、ユリウスも戻ってきたようだ。
教室が少し騒がしくなる。
席の位置が変わっていたこともあるが、ハンス、ルーカス、マクシミリアンがいなくなったことにより、二人ひと組座る机が一つなくなっていたのだ。
それによりハンス、ルーカスと座っていた二人の席が変わっていて、戸惑いの表情を見せている。
さらに、マクシミリアンの席が空席になっているのだ。隣に座っていたクラスメイトは、不安げな表情を浮かべていた。
ブラザー・マテオがやってくる。
彼は顔色一つ変えることなく静かにするようにと言い、ホームルームを開始した。
ハンス、ルーカス、マクシミリアンについては最後に言うのか。
そう思っていたのに、ブラザー・マテオは何も言わずにホームルームを終えた。
マクシミリアンと同席だったクラスメイトが立ち上がり、ブラザー・マテオに質問を投げかける。
「あの、マクシミリアンはどうしたのですか? ハンスやルーカスもいないようですが」
「彼らについては気にすることではない。これ以上聞いた者には、処罰を与える」
それを聞いたクラスメイト達は、サーーーッと血の気が引いたような顔色になる。
ブラザー・マテオはそれ以上何も言わずに、教室から去って行った。