軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第53話「魔王領の交易と流通について考える」

──トール視点──

俺たちが西の森を訪ねてから、数日後。

「お待たせいたしました。光の 羽妖精(ピクシー) ソレーユ、実験のお手伝いに来ましたの!」

光の 羽妖精(ピクシー) ソレーユが、俺の部屋にやってきた。

以前よりもかなり、顔色と肌のつやが良くなってる。

魔力 循環(じゅんかん) が改善した身体が、ほのかに光ってる。

光の 魔織布(ましょくふ) の服が透けそうなくらいだ。

「ソレーユは錬金術師さまのために、光の攻撃魔術をなんでもお使いいたしますの。ささ、ご命令くださいなの!!」

「ありがとう。それじゃ実験の前に、魔王陛下に連絡するね」

俺はすぐに伝令の羽妖精さんに飛んでもらった。

『UVカットパラソル』の実験は、魔王ルキエ立ち会いのもとで行うことになっていたからだ。

返事はすぐに戻ってきた。

ルキエたちはすでに、出発の準備を整えていたらしい。

すぐに魔王ルキエと宰相ケルヴさんは、ライゼンガ領にやって来ることになった。

「ルキエ・エヴァーガルド陛下と 宰相閣下(さいしょうかっか) がそろっていらっしゃるとは!」

「き、緊張しますので」

連絡を受けたライゼンガ将軍とアグニスは、急いで歓迎パーティの準備を始めた。

ルキエとケルヴさんがそろって領地に来るのは滅多にないことだから、みんなで歓迎しよう、ということになったんだ。

パーティには俺やメイベル、ライゼンガ領の者のほかに、羽妖精たちも招待された。

だから俺は、パーティ会場に、羽妖精用のスペースを作ることを提案した。

窓際に、他から見えないようなスペースを作って、そこに飲み物やお菓子を置いておけば、人見知りの羽妖精たちもパーティに参加できると思ったからだ。

窓の近くなら、羽妖精たちも簡単に出入りできるからね。

「なるほど! さすがトールどのだ。すぐに手配しよう!」

ライゼンガ将軍はふたつ返事で了解してくれた。いい人だ。

将軍に任せておけば、歓迎パーティは大成功に終わるだろう。

パーティが終わったあとは、その日のうちに『UVカットパラソル』の実験が行われることになっている。

俺にとって重要なのはそっちの方だ。

ルキエからの書状によると、帝国が国境近くでまたなにかやらかすらしいから、その前にパラソルで、光属性の魔術を防げるか試したいんだ。

だから──

「俺はパーティには不参加でもいいよね? メイベル」

「どうしてそうなるのですか!? トールさま」

メイベルはびっくりした顔で、俺を見てる。

ここは、将軍の屋敷の一角にある、俺の部屋。

あれからさらに数日が経って、今日はパーティの当日だ。

ルキエと宰相ケルヴさんも、もう 屋敷(やしき) に着いてる。さっき会って話をしてきた。

それが終わって、メイベルはパーティに参加する準備を始めたんだけど──

やっぱり、俺が欠席というわけにはいかないみたいだ。

「わかった。パーティに出たくない理由を説明するから、よく聞いて」

「はい。トールさま」

「俺は昔、帝国で、貴族の子どもが集まるパーティに出たことがあったんだ」

俺は言った。

メイベルが、なにかに気づいたような顔になる。

彼女も、どうして俺がパーティを苦手にしているのか、わかってくれたようだ。

「まだ、 公爵家(こうしゃくけ) にいた頃だね。だからパーティにいたのは貴族の子どもたちで、みんな強い戦闘スキルを持ってたんだ」

「……そうだったのですか」

「帝国は戦う力を持つ者が偉い社会だからね。戦闘スキルがなかった俺は……そのパーティで、あんまりいい思いをしなかったんだよ。その場には父親……バルガ・リーガスもいたから」

まわりの子どもたちに見下されてた俺に、あいつがなにを言ったのか、よく覚えてる。思い出したくはなくけど、忘れない。

自分が親になったら、子どもには絶対あんなことは言わないと誓ったから。

「だから、俺はパーティに苦手意識があるんだ。もちろん、魔王領の人たちが俺を下に見たりしないってのはわかってるよ。でも、どうも気が進まなくて……」

「お願いがあります、トールさま。過去に戻るマジックアイテムを作っていただけませんか?」

不意に、メイベルが言った。

「それで私が過去に戻って、トールさまを 侮辱(ぶじょく) した者たちに、攻撃魔術を放つことにいたします。もちろん、手加減はいたします。子どものトールさまに、残酷な光景をお見せしたくはないですから……」

「待って待って待って」

メイベル、目が怖い。というか本気だ。

過去に戻るアイテムは……さすがに勇者の世界にもないだろ。

あっても俺が作れるレベルじゃないだろうし。

「メイベルにそんなことはさせられないよ」

「……残念です」

「とにかくそういうわけだから、パーティには不参加ということにしたいんだ」

「わかりました。魔王陛下には、そのようにお伝えします」

「ごめんね」

「陛下、がっかりされるでしょうね……」

メイベルは肩を落として、そう言った。

「陛下はおっしゃっていたのです。『パーティで、トールの功績を自慢したい』と」

「……え」

「トールさまは、ライゼンガ将軍の領地にいらしてからすぐに、羽妖精の皆さんを味方につけるという偉業をなしとげられました。羽妖精さんたちはこれまで表に出ることもなく、魔王領のみんなと交流することもなかったというのに……」

いやまぁ、確かにそうだけど。

でも、俺は布を提供しただけだ。

それを服にしたのはメイベルとアグニス、それに城から着た服職人さんたちだからね。

俺の功績は、せいぜい半分くらいじゃないかと思うんだけど。

「でも、トールさまがパーティが苦手だとおっしゃるのなら、仕方ないですね」

不意に、メイベルは顔を上げて、

「ルキエさまはがっかりされるかもしれませんが、仕方ないですね。ルキエさまは、今回、『 認識阻害(にんしきそがい) 』の仮面だけを着けて、黒いドレスを着られるそうで……トールさまに見ていただくのを楽しみにされていたのですが……」

「……メイベル?」

「そういえばアグニスさまは今回のパーティではじめて、ドレス姿をおひろめされるそうですよ? これまでは発火体質のために、パーティに出ることができなかったですからね。トールさまがくださった地の魔織布のドレスは、きっとお似合いでしょうね……」

「…………あの、ちょっと」

「そ、それに、ですね。恥ずかしながら私も、ドレスを借りることができたのです。も、もちろん、トールさまに自慢できるほどのものではありませんが……で、でもでも」

「………………メイベル」

「はい。トールさま」

「降参」

俺は両手を挙げた。

ここまで言われたら無理だ。断れない。

というか、ドレス姿のルキエやアグニスやメイベルは、すごく見たい。

これを見逃すという選択肢はないな。うん。

「そういうことなら……俺もパーティに参加するよ。服の準備をしてくれる?」

「承知いたしました。トールさま」

メイベルはクローゼットから、俺の服を出してくれる。

帝国から魔王領に送られてきたときに着ていたものだ。そのうち、新しい正装も作らないとな。

「本当はパーティの間に、新しいアイテムを作る予定だったんだけど」

「なにを作られるおつもりだったのですか? トールさま」

「流通に役立つアイテムを作ろうと思ってた」

俺は『通販カタログ』をめくりながら、メイベルに答えた。

「ルキエさまが来たあと、宰相さんと話す機会があっただろ? その席で聞いたんだ。魔王領と、国境の近くにある人間の町が 交易(こうえき) をしてるって」

魔王領と帝国は、国同士の公式の貿易とかはしていないけれど、町レベルの取り引きは普通に行われているそうだ。

魔王領でしか取れない作物や鉱物もあるし、人間の領土でしか手に入らないものもある。

それをやりとりするために、時々、荷馬車が行き来しているらしい。

帝国の皇帝や貴族がそれを 把握(はあく) しているのかどうかは、わからないけれど。

「その話を聞いたときに提案したんだ。『羽妖精さんに、超小型簡易倉庫を持たせたら、交易が楽になるんじゃないでしょうか』──って」

俺は言った。

メイベルの目が点になった。

「た、確かに、おっしゃる通りです。それが実現すれば、物資の輸送がすごく楽になります」

「だよね」

俺は続ける。

「超小型簡易倉庫なら、羽妖精さんでも持てるだろ? そこに商品や荷物を入れて運んでもらえば、魔王領の流通は一変するんじゃないかって思ったんだ」

街道を荷馬車が行き来すれば、帝国の兵士たちの目につくかもしれない。

でも羽妖精が超小型の簡易倉庫を抱えて移動するだけなら、誰も気づかない。

あとは、魔王領の商人さんもこっそり移動して、商売の前に合流すればいいだけだ。

ルキエの話では、間もなく帝国が国境近くで軍事訓練を始めるらしい。

そんな時でもこのやり方なら、あっちの兵士に気づかれずに交易ができると思うんだ。

「──と、そういうことを、宰相のケルヴさんに提案してみたんだけど」

「宰相閣下はどう言われたんですか?」

「流通が一変しすぎるから駄目だって」

話してる途中で宰相さんが頭を抱え始めたから、駄目かなって思ったんだけど、予想通りだった。

でも、仕方ないと。

却下された理由は、俺にも納得のいくものだったから。

『みんながびっくりしますし、簡易倉庫を紛失したら大変なことになりますから!』

──って、宰相さんは言ったんだ。

みんながびっくり、というのもわかる。

『魔獣ガルガロッサ討伐戦』のときに言われたけど、 輜重部隊(しちょうぶたい) が荷物を運ぶのは、他の人たちに『ちゃんと戦闘に必要な武器や食料を運んでいます』と、知らせる意味もあるそうだ。

だから簡易倉庫を使って『よくわからないけど大量のアイテムを持って来ました』というのは、相手に不安感を与えるらしい。

そりゃまぁ、荷馬車もなしに商人が (羽妖精を連れて)大量の商品を並べはじめたら、みんなびっくりするよな。

並べられた商品が、ちゃんとしたものかどうか、不安に思うだろうし。

だから『簡易倉庫』を商売に使うのは難しい。

それが宰相ケルヴさんの結論だった。

もうひとつ、宰相さんは言っていた。

『これからも簡易倉庫を使うなら、丈夫な鍵があった方がいい』──って。

簡易倉庫は便利すぎて、奪われたときのリスクが大きい。

だから、丈夫な鍵をつけた方がいい。

魔王城でも錠前は作られているけれど、簡易倉庫の便利さを考えたら、もっと強力なものが必要だ。

それに、強力な鍵があれば、普通の荷物輸送にも使える。

人間の領土で盗賊に襲われたときのために、とにかく丈夫で、荷物が奪われにくくて、扱いが簡単な鍵やロック機構が欲しいそうだ。

「というわけで、パーティの間は、俺は強力なロック機構を作るつもりだったんだ」

「そんなものがあるのですか?」

「うん。それっぽいアイテムを見つけておいた」

俺は『通販カタログ』のページをめくった。

そこには、管のようなものに包まれた、黒い鎖が載っていた。

──────────────────

地面と繋がる『地球ロック』で、あなたのバイクや自転車を守ります!

買ったばかりのバイクや自転車を盗まれた、そんな経験はありませんか?

当社の『チェーンロック』なら、もう心配はいりません!

スペシャル合金製のチェーンは熱にも寒さにも強く、いかなる刃物も受け付けません。

ダイヤルロック式のため、番号を知らない者には開けることもできません。

悪人はこのチェーンロックに触れた瞬間、その 手強(てごわ) さに絶望するでしょう。

もちろん、番号を知っている人には、手軽に開け閉めが可能です。

十分な長さがあるため、街路樹や建物の柱に繋ぐこともできます!

大切なものを大地につなぎ止める『地球ロック』も可能です。

力強く大地に結びつけられたあなたの愛車は、地球を動かすことができないかぎり、びくともしないでしょう。

まさに最強のロックシステムと言えます!

地球ロックも可能な『チェーンロック』で、安全なセキュリティ生活をお過ごしください!!

──────────────────

「この『バイクと自転車』というものについては……よくわからないんだけどね」

「荷馬車のようなものでしょうか」

「たぶんね。探せば資料が見つかるかもしれない。あとで調べてみるよ」

「でも、私はこの『地球ロック』という言葉の方が気になります」

「わかるよ。俺もそれが気になってた」

俺はうなずいた。

「『地球』については文書で読んだことがあるよ。勇者がいた世界のことだ」

「魔王領にも記録があります。勇者たちはみんな、地球という世界から来たらしいです」

「で、このカタログには『街路樹や建物の柱に繋ぐことで地球ロックが可能』『力強く大地に結びつけられたあなたの愛車は、地球を動かすことができない限り、びくともしない』と書いてある。つまり──」

「……お待ちください。トールさま」

メイベルは青い顔で、カタログを見てた。

その気持ちはわかる。

『通販カタログ』に書かれていることが正しいなら、この『チェーンロック』には、とんでもない能力がある。

「つまり──この『チェーンロック』は、物質を大地と結合させる能力があるってことだ」

自分の声がひきつってるのが、わかった。

この『チェーンロック』は、物を封じて、つなぎ止めるアイテムとしては最強に近い。

大地そのものを、アイテムの一部として利用できるんだから。

「本当にこの『チェーンロック』は、物質と大地を結びつけることができるのでしょうか……」

「たぶんね。おそらく、チェーンによって大地と一体化するんだと思う」

「でも、私は信じられません。そんなことが可能だなんて」

「そうだね。でも、帝国には勇者について語られた、こんな言葉があるんだ」

俺はメイベルにもわかるよう、帝国に残る勇者の伝説──その一節を読み上げた。

確か、こんな言葉だったはずだ。

『勇者の歩みを止めることは、何者にも叶わない』

勇者はあらゆる場所に入り込んで、魔獣や魔族と戦い続けた。

高い山も、深い谷も、魔王の結界さえも、勇者の歩みを止めることはできなかった。

つまり──

「勇者を止めるには、文字通り大地につなぎ止めるしかないってことだ。だからこの『チェーンロック』は、暴れる勇者を止めるためのアイテムでもあるんだと思う」

勇者の世界では、そういうアイテムが必要だったんだろう。

無理もないよな。『UVカットパラソル』なんてアイテムがあるくらいなんだから。

魔王やドラゴンと渡り合う連中が生活している世界では、そういう抑止力が必要だったんだろう。そのための『地球ロック』なんだろうな。

勇者の動きを止めるためには、大地そのものの力を借りる必要があったんだ。

さもないと、荷馬車のような大きな物も、あっさりと持って行かれちゃうんだろう……。おそるべき世界だよな。勇者世界って。

「もちろん、このチェーンロックは大地に繋ぐだけじゃなくて、普通の鍵としても使える。だから『簡易倉庫』の扉をロックするのにいいと思ったんだけど……」

そう言って、俺は『通販カタログ』のページを閉じた。

机の上の『超小型簡易倉庫』を、メイベルが用意してくれた服のポケットに入れて……っと。

「でもこの『チェーンロック』を試すのは、パーティと『UVカットパラソル』の実験が終わってからにするよ。そっちを片付けないと、落ち着かないからね」

「わかりました……あれ? トールさまは、今『試すのは』って……?」

「そ、それより、俺はメイベルのドレス姿が楽しみだな!」

俺は素早く話題を変えた。

「メイド服のメイベルもかわいいけど、たまには他の服も見てみたいよね。うん。今回は、そのためにパーティに出るようなものだもんな」

「……トールさまったら」

「そういえば、パーティをやるのが決まったときに、水属性の 魔織布(ましょくふ) をあげたよね。あれでドレスを作ったの?」

「い、いえ……あれは……」

メイベルは不意に、顔を赤らめて、

「ドレスにしようと思ったのですが……ちょっと失敗してしまいまして」

「失敗?」

「……水の魔織布って、身体に合わせてかたちを変えますよね?」

「そうだね。水は器に合わせてかたちを変えるもので、そのイメージを魔織布に付加してるから」

「だからできあがった服は、身体のかたちがはっきりとわかるものになってしまいまして」

「なるほど」

確かに、水の魔織布は身体にあわせて形を変える。

それで服を作ると、身体のかたちがわかるものになるのか……。

「わ、私がいけないのです。服職人さんに、いただいた魔織布を節約して、その上でトールさまに喜んでいただけるような服をお願いします……と言ったら、水着のような服が出来上がってしまったのです」

「わかった。ぜひ確認させて」

「……え?」

「もしかしたら改善できるかもしれない。たとえば、魔織布を作るときに付加する水属性を弱くしたり、あるいは強くしたり。欠点があるなら、できるだけ改善したいんだ。だから、実際にメイベルにそのドレスを着てみせて欲しい」

「わ、わかりました……トールさまがおっしゃるなら」

そう言って、メイベルは部屋を出て行った。

しばらくして、彼女は空色のドレスを手に持って戻って来た。

それから俺に後ろを向いているように言って、部屋の隅で着替え始めた。しゅる、とメイド服が足元に落ちる音がした。続けて、衣ずれの音も。

俺は魔王城からやってきた服職人たちの言葉を思い出していた。

彼女たちも、水属性の魔織布には注意しなきゃいけない、って言ってた。

あれで服を作ると、身体のラインがはっきりと出る。だからリボンやフリルなんかで装飾する必要がある、って。

羽妖精たちはリボンもフリルも大好きだから、問題なかった。

でも、メイベルがドレスを作ることまでは計算に入れてなかった。

もっとメイベルのことを考えるべきだったな。一番、身近な人なんだから。

俺はまだまだ未熟だ──

「……こ、こちらを向いていただいても大丈夫です。トールさま」

不意に、メイベルの声がした。

振り返ると──ドレス姿のメイベルがいた。

きれいだった。

空色のドレスは、肌の白いメイベルにはよく似合っていた。

スカート部分が膝の上までしかないのも、大胆でいいと思う。

というか、メイベルは本当に魔織布を節約してくれたんだな。ドレスにはリボンもフリルもついていない。細い肩紐があるくらい。まるで水着のようだ。

水属性の魔織布はメイベルの身体に合わせてかたちを変えているから、胸やおへそのかたちまでもはっきりとわかる……うん。

「……トールさま……なにか、おっしゃっていただけませんか」

「きれいでかわいいと思う。メイベルにはよく似合ってる……けど」

「……けど?」

「メイベルが他の人の前でこれを着るのは……ちょっと嫌だな」

言葉が、自然と口をついて出た。

自分でも、びっくりするくらいに。

「そ、そうですか……そう、なんですね」

メイベルは、すごくうれしそうな顔で、笑った。

「わ、わかりました。では、このドレスは、トールさまの前でだけで着ることにします。というよりも、これは水着のようになっちゃいましたから、泳ぐときや、服が汚れるような作業をするときに着ることにしますね」

「う、うん。それがいいんじゃないかな」

「は、はい」

「……うん」

「……わかりました。そ、そうしますね」

とにかく、魔織布には改善の余地があることがわかった。これはあとで研究しよう。

そんなことを考えながら、俺はメイベルの『水の魔織布ドレス』を眺め続けて──

メイベルは、引っ込みがつかなくなったのか、俺の前でくるくると回って、短いスカートをひらめかせて──

そのうちに、パーティが始まる時間になったのだった。