作品タイトル不明
第27話「魔術の射程距離を伸ばす」
「というわけで、次はこれを作ってみようと思う」
お茶会の翌日、俺は『通販カタログ』を見ながら、メイベルと話をしていた。
開いたページには、黒い筒が写ってる。
表面はつやつやしていて、先端には透明な板がついてる。
起動すると、赤い光が灯るようになっているらしい。
「これはどういうものなのですか? トールさま」
「『レーザーポインター』って書いてあるよ」
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『レーザーポインター』(レーザー 照準器(サイト) としても使えます!)
この『レーザーポインター』で、あなたの指示を確実に伝えましょう!
『レーザーポインター』の光を使えば、どんなにごちゃごちゃした場所でも、あなたの意図がはっきりと伝わります!
人を指導する立場の方には、特におすすめです!
この商品を使えば、的確に「めあて」を伝えることができるでしょう!
この商品から発する赤い光は、おどろくほど遠くまで届き、見せたい場所をくっきりと浮かび上がらせてくれます。
距離は、通常商品の約5倍!
くっきり感は10倍増し!
騒がしい場所や、声が届かない場所でも、指し示した目標ははっきりと見えます。
あなたの指示は間違いなく伝わり、まわりはすぐに静かになるでしょう。
なお、当社の『レーザーポインター』は、クロスボウやエアガンにつけることで、『レーザー 照準器(サイト) 』としても使用可能です!
命中率は10倍アップ。射程距離は5倍に伸びるでしょう!
(競技用です。決して人には向けないでください)
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「……すごいものがあるのですね」
メイベルは俺の説明を聞いて、目を輝かせてる。
俺もおどろいてる。
『えあがん』はわからないけど、『クロスボウ』はこっちの世界にもあるからね。
要は、飛び道具に使うと命中率や飛距離が上がるってことだ。
「でも、トールさま『指導する立場の人にはおすすめ。的確に「めあて」を伝えることができる』というのはどういう意味なのでしょうか?」
「兵士の隊長が、倒すべき敵を的確に伝えられるという意味だと思うよ」
「『あなたの指示は間違いなく伝わり、まわりはすぐに静かになるでしょう』というのは……」
「叫び声をあげて向かって来る敵が、すぐに倒されて沈黙するという意味だね」
「『人には決して向けないでください』というのは……」
「 魔獣討伐(まじゅうとうばつ) 専用ってことだろうね」
「『競技用』というのは……」
「勇者にとっては、魔獣討伐は競技みたいなものなんだろうね。あの人たち、魔獣討伐のスコアとレベルアップの速さを競い合っていたから」
「わかりやすいですね」
「まったくだ」
俺とメイベルはうなずいた。
「魔獣討伐専用だから、魔族や亜人相手に使われた記録がないんだろうな。勇者が魔獣を倒して、レベルを上げるためだけに使ってたんだろう」
「勇者が強力な魔獣をあっという間に倒した伝説は、普通にありますからね」
「しかも無傷でね」
「射程距離5倍なら、魔獣なんか近づけませんよね……」
だよなぁ。近づく前に倒されちゃうだろうし。
巨大な怪鳥が、遠距離から勇者の魔術に翼を貫かれた記録とかもあるもんな。
「でも、今回の魔獣退治にはぴったりだ。人間相手に使えないなら、 誤射(ごしゃ) の心配もないからね」
「帝国の人が現地に来るという話もありますからね……」
「ま、それはいいや」
別に帝国と関わりたいわけじゃないからね。
俺は魔王ルキエのために、安全に魔物討伐ができるアイテムを作るだけだ。
「それじゃはじめるよ。メイベル。素材を用意してくれるかな」
「はい! トールさま」
そう言ってメイベルは一礼。
俺が『簡易倉庫』の中に用意しておいた素材を差し出してくれる。
光を出すんだから、当然『光の魔石』が必要になる。
これは照明用のものを 宰相(さいしょう) さんに分けてもらった。
前に話した『魔石使い放題プラン』の一部だ。
問題は、光を直進させる方法だけど……。
これは『闇属性』を使おう。
光と闇は相反する属性だから、光のまわりを闇で包めば、光を一方向にだけ飛ばせるようになるかもしれない。
やってみよう。失敗したら、作り直せばいいや。
「発動『 創造錬金術(オーバー・アルケミー) 』!」
俺はスキルを起動した。
『通販カタログ』に載っているような『レーザーポインター』をイメージする。
黒い、金属製の筒。
中には、光の魔石。そのまわりを闇属性と、闇の魔石で包み込むイメージだ。
水の入った袋に小さな穴を空けて、まわりから押しつぶす、って感じかな。
光の魔石の出力が大きくないと駄目だから、俺自身の魔力も注入して、っと。
「メイベル。金属の素材を」
「は、はいっ!」
メイベルが用意しておいた金属の塊を、テーブルの上に置いた。
俺は空中に浮かび上がらせた『レーザーポインター』のイメージ図を、テーブルの上に移動させる。
金属塊(きんぞくかい) が変形して、 筒(つつ) へと変わっていく。
そこに光の魔石を埋め込んで、金属すべてに『闇属性』を付加。
さらに闇の魔石も組み込む。『闇属性』の『光と 相反(あいはん) する』という特徴を強化して、っと。
さらに『風属性』も付加しておこう。
『風属性』には『循環する』『遠くに運ぶ』という意味もあるからね。
『レーザーポインター』の光を、さらに遠くまで運んでくれるはずだ。
「……これでいいかな」
『通販カタログ』に載ってるのより、かなり大きくなっちゃったけど。
まぁ、これはしょうがない。
俺は勇者の世界には、まだ追いつけてないんだから。
「それじゃ実行! 『 創造錬金術師(オーバー・アルケミー) 』!!」
ころん。
テーブルの上に、円筒形の『レーザーポインター』が生まれた。
長さは60センチくらい。直径は10センチ弱。
かなり大きい。クロスボウにつけるのは無理かな。
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『レーザーポインター (レーザー 照準器(サイト) にも使えます)』
(属性:光・闇闇・風風)(レア度:★★★★)
光の魔力により、光源を作り出す。
強い闇の魔力により、その光をぎゅーっと潰して伸ばして、無理矢理直進させる。
風の魔力によって、光が当たった場所まで、魔力の流れを作り出す。
光の魔石と、闇の魔石が必要です。
魔石は消耗品のため、定期的に交換が必要(3ヶ月に一度、新品と交換してください)。
物理破壊耐性:★★★ (魔法の武器でないと破壊できない)
対人安全装置つき:人間や魔族、亜人相手には使えません。
耐用年数:15年。
1年間のユーザーサポートつき。
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「それじゃ実験してみよう。城の中に魔術の訓練場ってあったっけ?」
「ございます。すぐにご案内いたしますね」
「ありがとう。頼むよ。メイベル」
そんなわけで、俺たちは魔術の訓練場に向かったのだった。
「──だから、魔獣と戦うときは、前衛ができるだけ近づくべき。敵に囲まれるまえに、一気に、せんめつする」
「──それでは後衛の魔術部隊が危険です! 敵が急に接近してきた場合、魔術の発動が間に合いません!」
「──『 魔獣(まじゅう) ガルガロッサ』は、たくさんの配下を、連れてる。そいつらが集まってくる前に、倒した方が、いい」
「──ミノタウロスたちはそれでよいでしょう。ですが、我らエルフは防御力が弱く、側面から攻撃を受けた場合──」
「──そうならないように、 偵察(ていさつ) を、出す」
「──我らは敵に近づきすぎることを危険視しているのです!!」
ここは魔王城の一角にある、兵士たちの訓練場。
背の低い 壁(かべ) と 柵(さく) で囲まれた場所で、地面は土がむきだしになっている。
隅の方に、石で作られた標的が並んでいる。
魔術の訓練場はあそこかな。
「すいません。ちょっと魔術の実験をしたいんですけど──」
「──だから、すみやかに敵を倒すことが、被害を減らす一番の近道で──」
「──それについていく魔術師のことも考えてください!!」
訓練場の入り口近くで、ミノタウロスの戦士と、エルフの魔術師が口論してる。
それぞれの後ろには戦士と、魔術師っぽいローブを着た人たちが集まってる。
ということは、代表者同士の打ち合わせだろうか。
「戦士部隊の中隊長さんと、魔術師部隊の中隊長さんですね」
「もしかして、魔獣討伐の打ち合わせ?」
「はい。どうやって戦うか、作戦を考えてらっしゃるようです」
話を聞くと、戦闘中の陣形について相談しているようだった。
今回討伐する魔獣は『ガルガロッサ』という大型種で、配下の魔獣を大量に従えているらしい。
放っておくと、大型種が配下をどんどん呼び寄せるそうだ。
ミノタウロスをはじめとする前衛部隊は、突撃して一気に魔獣を 殲滅(せんめつ) したい。
魔術部隊は敵に囲まれないように、できるだけ離れて戦いたい。
でも、前衛部隊が突っ込んでしまうと、魔術部隊も前進しなければいけない。
離れすぎると、魔術が当たらなくなるからだ。
だからこうやって意見を出し合ってる、ということか。
「……すごいな」
思わず俺はつぶやいてた。
「帝国では、上の人間が決めた作戦に、下は無条件で従うやり方を取ってたからね。こんなふうに、現場のひとが意見を出し合うのはすごいと思うよ」
「そうなんですか。魔王領では、いつもの光景ですけど……」
メイベルは不思議そうに首をかしげてから、
「それじゃ、魔術訓練場の使用許可を取ってきますね」
──手の空いてるエルフさんに話をしに行ってくれた。
それから俺たちは、魔術の訓練場の方に移動したのだった。
「この線から標的までが、一般的な魔術の射程距離ですね」
メイベルは地面に書かれた白い線を指さした。
彼女の後ろには一定間隔で、魔術の発射位置を示す線がある。
標的に近づいたり離れたりして、攻撃魔術の命中率を上げる訓練をするらしい。
「ここは射程距離ぎりぎりですね……。ここからだと、標的に当てるのがせいいっぱいだと思います」
「標的は、あそこにある石の板だよね?」
「そうです。中央の丸に近いところに当てられるように訓練するんです」
「よっしゃ。じゃあ『レーザーポインター』で命中率が上がるかどうか、やってみよう」
俺はポケットに入れた『超小型簡易倉庫』 (自分用に作り直した)から、『レーザーポインター』を取り出した。
やっぱり、ちょっと大きいな。
肩に担ぐと安定するかな。よし。これでいい。魔力を注いで──っと。
──ポゥ。
よし、起動した。
「トールさま! 標的のところに、大きな赤い点が現れましたよ?」
「あれが、『レーザーポインター』の効果だ。あれを目標に魔術を撃つんだ……と、思う」
「……なるほど」
メイベルは興味深そうに、標的を見つめている。
魔術訓練場の標的のところに、大きな赤い点が浮かび上がっている。
闇属性の効果か、赤い点のまわりに黒いふちどりがついてる。すごく見やすい。
さらに『レーザーポインター』から目標までは、まっすぐ、赤い線が出現してる。
これを使って狙いを定めるわけか。わかりやすいな。
「これで実験の準備はできたけど。魔術を 撃(う) っちゃっていいのかな?」
まわりには誰もいないから大丈夫だと思うんだけど。
でも、一応、許可を取った方が──
「──つまり、われわれの後ろから、魔術で魔獣を攻撃できれば──」
「──そんなことが可能なわけがないでしょう!!」
──うん。みんないそがしそうだ。邪魔したら悪いな。
施設を使う許可はさっき取ったから、いいかな。
実験を始めよう。
「メイベル。氷系の魔術は使える?」
「はい。トールさまのおかげで、水の魔力循環がよくなりましたので、大抵のものは大丈夫です」
「じゃあ、氷の攻撃魔術を撃ってみて」
「はい。それでは『アイシクル・アロー』!!」
メイベルは魔術を発動した。
赤い点の中心に、氷の矢が命中した。
「すごいな。メイベル」
「……あれれ?」
「どしたの?」
「撃つとき、狙いがそれた気がするんですけど……当たりましたね」
「当たったならいいじゃないか。次はもうちょっと、距離を伸ばしてみよう」
俺たちは標的までの距離が1.5倍のところまで移動した。
メイベルは魔術を発動した。
命中した。
俺たちは標的までの距離が2倍になるところまで移動した。
メイベルは魔術を発動した。
命中した。
俺たちは夢中になって、魔術の実験を続けた。
訓練場の入り口では、まだ打ち合わせが続いてる。
ここからじゃ聞こえないけど、なにを話しているんだろうな……。
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「──どうしてわかってくれないの、ですか」
「──わからないのはそちらでしょう!? 魔術師には、安全な距離が必要なのです!」
「──われわれが魔獣と戦っている間に、魔術師は離れて──」
「──魔術師には射程距離があるから、それは不可能だと──」
「──ん? 誰かが魔術の実験をしていますな」
「──標的からずいぶん離れていますね。あんな距離で当たるはずが……」
「──おや」
「──あれ?」
「──あれれれれれれ?」
「──ええええええええっ!?」
「「………………」」
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俺たちはさらに距離を伸ばして、魔術を放って──
あ。ここまでが限界か。
訓練場の端まで来ちゃった。これ以上はさがるのは無理だ。
確認できたのは、射程距離3.5倍まで。
メイベルの魔術は、すべて標的に命中してる。実験は成功したんだけど──
「おかしいです、トールさま!!」
「どしたのメイベル」
「氷の矢の限界距離を超えています。どうして命中するのですか!? しかも、まったく同じ場所に……寸分のずれもなく……」
「しょうがないじゃないか。勇者の世界のアイテムなんだから」
「……そうなのですけど。エルフとして納得いかないのです……」
それはわかる。
でもまぁ、やっちゃったものはしょうがないよね。標的を確認してみよう。
俺たちは手をつないで、標的のところまで移動した。
近くに来ると、石の標的のところに、氷が張り付いているのがわかる。メイベルが放った『アイシクルアロー』だ。でも、氷がついているのは、『レーザーポインター』の光が当たっていた部分だけ。その他の場所には、まったくついていない。
メイベルが放った氷の矢は、寸分違わずまったく同じ場所に当たってたことになる。
つまりこれは──
「『レーザーポインター』が生み出した魔力の流れに、魔術が引っ張られたのかな?」
「魔力の流れ、ですか?」
「この『レーザーポインター』は目標まで、光の魔力と闇の魔力を飛ばしてるよね? つまり、『レーザーポインター』から目標までの間には、魔力のラインができてるんだ」
「……あ」
俺の言いたいことに気づいたのか、メイベルが目を見開いた。
「つまり『レーザーポインター』の光に触れるように魔術を発射すると──」
「魔力の流れに乗って、まっすぐ目標に到達する、ってことだね」
「すさまじい能力ですね……」
「これなら魔獣とも安全に戦えると思うよ」
この『レーザーポインター』は、そもそも魔獣専用だからね。
勇者の世界ではこれを使って、魔獣を効率的に倒していたんだろうな。
「おそるべきは、勇者の世界のアイテムだよな……」
的確に「めあて」を伝えることができて。
指導者の指示で、騒がしい魔獣はすべて静かにさせられて。
人には決して向けてはいけない、 魔獣討伐(まじゅうとうばつ) 用の専用アイテム。
魔獣討伐専用ということは、勇者は魔王との戦いで、これを使っていなかったということになる。
それでも魔王に勝てたということは──やっぱりあいつらは 桁違(けたちが) いの存在なんだよな……。やっぱり怖いな。勇者って。
「じゃあ、これは 魔王陛下(まおうへいか) のところに持っていこう。宰相ケルヴさんにも話を通して、使ってもらえるかどうか聞いてみようよ」
「そうですね。では、まいりましょう。トールさま」
「その前に、訓練場の後片付けを──」
あれ?
いつの間にか、訓練場が静かになってる。
ミノタウロスさんたちとエルフさんたちは──無言で、こっちを見てるな。
びっくりさせちゃったか。まぁ、しょうがないよな。
「訓練場を使わせていただいて、ありがとうございました。これから後片付けを──」
ふるふるふるふるっ!
一斉に首を横に振る、ミノタウロスさんとエルフさん。
え? いいの?
「いいんですか?」
こくこくこくこくっ!
今度は一斉にうなずく、ミノタウロスさんとエルフさん。
いいのか。じゃあ、お言葉に甘えよう。
魔王ルキエも宰相ケルヴさんも忙しそうだからね。早めにアポを取って、『レーザーポインター』のことを伝えないと。
「お邪魔しました。それじゃ」
「失礼しますね。みなさま」
俺とメイベルはお辞儀をして、それから訓練場を離れたのだった。
──トールとメイベルが立ち去ったあとで──
「……われわれは、なんの話をしていたのでしたっけ」
「……お忘れですか? 前衛が魔獣に突撃して、その後、後衛が魔術で支援するという話です」
「……そうでしたね。忘れてました」
「……わかります。私たちも、今の光景を見たショックで忘れかけていました」
「問題はなんでしたか? 魔術部隊中隊長のエルフさん」
「魔術の射程についてでしたね。前衛部隊中隊長のミノタウロスさん」
「「…………」」
ミノタウロスたちとエルフたちは、顔を見合わせた。
「さきほど、魔術を使っていたのは、メイドのめぃべるさまですよね?」
「は、はい。以前は魔術が使えず、エルフの村の、心ない者たちにつまはじきにされていたようですが」
「魔術、使えるじゃないですか」
「ですねぇ。射程距離、すごいですねぇ」
「どうなっている、ですか?」
「あの、人間の錬金術師、トールさまが使っていたアイテムのおかげだと思います」
「魔王陛下直属の、とぉる・りぃがすさまですね」
「でも、魔術の射程距離が伸びるアイテムなんか、聞いたことないんですが……」
「とぉるさまならあり得ます」
「ありえるんですか」
「衛兵をやってるミノタウロスの仲間が言っていました。とぉる・りぃがすさまは、すごい力を持った錬金術師だと」
「と、とにかく、さっきのアイテムがあれば『魔獣ガルガロッサ』討伐が楽になりますね」
「われわれの話し合っていた問題ってなんでしたっけ」
「魔術の、射程距離の問題ですね……」
「問題、なくなっちゃいましたね……」
「どうしたらいいんでしょう……」
しばらく沈黙する、ミノタウロスたちとエルフたち。
それから彼らは、一斉に立ち上がり、歩き出す。
トールとメイベルは、魔王陛下か、宰相ケルヴのところに行って、アイテムの使用許可を取ると言っていた。
だったら、口添えをしなければ。
陛下に 謁見(えっけん) するには時間がかかる。宰相ケルヴなら、話ができるかもしれない。
そう考えた彼らは、宰相の執務室に向かって歩き出した。
十数分後。
「ま、待ちたまえ。なんの話かわからないのだが!? なに? トールどのとメイベル? ふたりは魔王陛下のところにいると思うが……え? アイテムの使用許可。いや、待って。本当に待って。まだ話を聞いていないから。落ち着いて、ちょ、え? あの……トール・リーガスどのー! ちょっとここに来て説明してください──っ!!」
宰相ケルヴは、兵士と魔術師たちから「トールどののアイテムの使用許可」について、熱のこもった話を聞かされることになるのだった。