軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第177話「新素材を確認する」

「これがわが村に伝わる『精神に反応する金属』だ」

エルフの長老は言った。

ここは、長老の屋敷。

大きな樹の根元に建っていて、まるで樹そのものと一体化しているようにも見える。

部屋いっぱいに葉擦れの音が響いているのはそのせいだろう。

スマホそっくりの『謎アイテム』を回収したあと、俺とメイベルはここに案内された。

到着後、長老は屋敷の奥から小さな箱を持って来た。

箱の中に入っていたのは、小さな金属片だ。

それがメイベルの言っていた『精神に反応する金属』らしい。

色は白。表面はツルツルしている。

先端は牙のように尖っている。

かなり小さい。大きさは、小指の爪くらい。

マジックアイテムの材料にするには、量が足りないけど……とにかく、調べてみよう。

「『 鑑定(かんてい) 』してもいいでしょうか?」

「うむ。それはもう、お主のものだ」

「では、失礼します」

俺は箱の中の金属に手をかざして、『 鑑定把握(かんていはあく) 』スキルを起動した。

それでわかったことは──

────────────────

『■■■の骨』

■■■の骨が、長い年月を経て結晶化したもの。

魔力や精神に感応する性質がある。

元の生物が高い防御力を持っていたため、その骨も、金属以上の硬度がある。

属性:地・水・火・風・光・闇。

────────────────

「……『カリハルコン』の名前は取り下げます」

俺は長老とメイベルに言った。

これは金属じゃない。生物の骨だ。

それが長い年月を経て、金属のように結晶化したものらしい。

しかも全属性を持ってる。すごいな。

となると、勇者世界の『オリハルコン』とはまったくの別物か……。

いや……待った。

勇者世界の『オリハルコン』が生物の骨ではないという確証もないんだよな。

やっぱりこれも『オリハルコン』と似ているという可能性もある。

でも、名前をどうしよう。

『カリハルコン』でも間違いじゃないかもしれないけど……。

……とりあえずは『精神感応素材』と呼ぶことにしよう。うん。

でも、これはどんな生物の骨なんだろう?

全属性と、強力な防御力を持つ生物となると、数は限られる。

しかも『鑑定把握』スキルをレジストできるわけだから、かなり強い生物で──

「どうされたのかな? 錬金術師どの」

気づくと、長老が不思議そうな顔で、俺を見ていた。

俺は長老の方に向き直ってから、

「エルフの伝承を否定するようで申し訳ありませんが、この素材は、金属ではないようです」

「なんと!?」

「これは生物の骨です。それが年月を経て、結晶化したものです。精神や魔力に感応する性質があるのは、お話のとおりですけど」

「我らエルフは、ずっと金属だと思っていたのだが……」

「もちろん、かなり貴重なものだということは確かです。俺のスキルでも 鑑定(かんてい) しきれなかったくらいですから」

どんな生物の骨か調べてみよう。

そうすれば、もっと大きなかけらを探すこともできるかもしれない。

「長老さま。この素材は『道に迷ったエルフの若者が、迷いの森の奥で見つけたもの』ですよね?」

ふと、メイベルが口を開いた。

長老はうなずいて、

「 伝承(でんしょう) では、そうなっておる」

「『迷いの森』は、大森林の奥にある 禁足地(きんそくち) ですよね……」

「禁足地? つまり、入ってはいけない場所ということ?」

「はい。トールさま。あの伝承は子どもたちに、近づいてはいけない場所を教えるためのものでもあるんです」

伝承では『若者が迷いの森の奥で、思考に反応する金属を見つけた』ことになっている。

でも、若者はその後、さらにひどい目に 遭(あ) うそうだ。

苦労したあげく、手に入ったのは小さな金属のかけらだけ。

使い道はない。売ろうにも、得体の知れないものだから、誰も買い取ってくれない。

つまり、骨折り損のくたびれもうけ。

──『迷いの森』に入るとろくな目にあいません。

──決して近づかないようにね。

エルフの伝承には、そんな教訓が込められているらしい。

「『迷いの森』に行けば、この素材の正体がわかるんでしょうか?」

「難しいな。あの地には、結界が張られているのだよ」

俺の言葉に、長老は首を横に振った。

「あの地には、人を惑わず結界がある。入った者は方向感覚を失い、道に迷ってしまう。森の中には見えない壁がある上に、進もうとすると、不思議な力で押し戻されてしまうことさえあるのだ」

「エルフの人でも、ですか?」

「そうだ。我らがこの地に来る前からあったものだからな。ゆえに、誰もあの地には近づかぬのだよ」

そりゃそうか。

ただの森なら、エルフの村の人たちが攻略してるだろうし。

伝承にある若者以外は、誰も『精神感応素材』がある場所にはたどりついていないってことか。

「『迷いの森』って、どのくらいの広さがあるんですか?」

「大森林の3分の1が『迷いの森』だな」

「めちゃくちゃ広いですね」

「うむ」

「仮に、素材の場所を見つけ出す手段があるとしたら、どうですか? 行って戻ってくるくらいなら、なんとかなるんじゃないでしょうか」

「難しいだろうな。道に迷うのはともかく、正しい手順を取らなければ前に進めない場所もあるらしい。伝承にある若者は、偶然突破できたらしいが」

「そうだったんですか……」

「だから我らエルフは200年もの間、『迷いの森』を攻略できずにいるのだよ」

「……なるほど」

不思議な結界か。

道に迷うのはともかく、押し戻されたり、正しい手順じゃないと通れない場所があるとなると……突破するのはかなり難しいな。

素材を見つけるだけなら『お掃除ロボット』が使えるんだけど。

中に『精神感応素材』を入れて、似た魔力のものを追跡させればいいからな。

そうすれば、素材……つまり、骨がある場所にたどりつけるはずだ。

でも、『迷いの森』は結界だ。

仮にそれが人や亜人だけを拒否するものなら、俺たちだけが前に進めず──『お掃除ロボット』だけが素材に向かって突っ走っていく可能性もある。

そうなったら『お掃除ロボット』も、中にいれた素材も回収できなくなる。

欲張ったせいで、持っているものも失うことになったら、それこそ教訓話だ。

俺の失敗談が、エルフの教訓になるのは嫌だなぁ。

「おっしゃる通り、今は、攻略は難しいようです」

俺は長老さんに向かって、うなずいた。

「それに、この『謎アイテム』のタイムリミットもありますからね」

俺は『超小型簡易倉庫』を開いて、スマホっぽい『謎アイテム』を見た。

あれから約1時間が経ち、その分だけカウントが減っている。

「ここにある数字がゼロになると、なにかが起きるんですよね? トールさま」

メイベルが『超小型簡易倉庫』をのぞき込みながら、つぶやいた。

俺はうなずいて、

「そうだね。それまでに魔王城に戻ろうと思ってる」

残りカウントは、8日と半日くらい。

それがゼロになると、おそらく、アイテムの内部にある情報が開示される。

その前に、俺は魔王城に戻らなきゃいけない。

『謎アイテム』が伝えようとしている情報を、ルキエや宰相ケルヴさんにも確認してもらう必要があるからだ。

あとは、役目を果たしたあとの『謎アイテム』を、ゆっくりと分解・改造したいというのもある。だから『迷いの森』を攻略する時間はない。

画期的な解決法があって、スムーズに行って戻ってこれるなら、話は別だけど。

欲張ってもしょうがないよな。

当初の目的の『精神反応素材』は手に入ったんだ。

その上、スマホっぽい『謎アイテム』も回収できた。これ以上を望むのはぜいたくだろう。

「長老さま。お話をありがとうございました」

「……ありがとうございました。長老さま」

俺とメイベルは、エルフの長老さんに頭を下げた。

「いやいや、錬金術師どのには相談に乗ってもらった恩義がある。お主がいなかったら、我々は異世界から来た『謎のアイテム』を前に、恐怖に震えておっただろう」

長老さんは、そう言って、笑った。

「それに、お主が『謎アイテム』の問題を解決してくれたことで、若いエルフたちも、自分たちの力と知識が不足していることを悟ったはずだ。そんなお主のためなら、これくらいなんでもないのだよ」

「ありがとうございます」

「他に頼みがあったら言うがよい。できる限りの 便宜(べんぎ) を図ろう」

「『迷いの森』の探索許可をください」

「…………は?」

長老さんの目が点になった。

「錬金術師どのは、わしの話を聞いていなかったのかな?」

「いえ、しっかり聞いていました。暗唱できるくらい」

「説明が悪かったのか?」

「いいえ、すごくわかりやすかったです」

「ならばなぜ、探索許可など欲しがるのだ。あの場所が危険だということはわかったであろう?」

「はい。むやみに踏み込むのは危険だとわかりました。だから次に来たときに、しっかりと対策を立ててから探索したいんです」

『お掃除ロボット』なら、素材の位置を特定できる。

結界が人や亜人だけを惑わすものなら、自動で素材を回収してくるアイテムを作ればいい。

それくらいなら、時間をかければ作れると思う。

「今は時間がありませんけど、対策は必ず考えます。その時のために、探索の許可が欲しいんです。無断で『迷いの森』を調べるわけにはいきませんからね」

「そ、そうなのか?」

「というわけなので、探索の許可をいただきたいのです」

「安全対策をしてから踏み込むのだろうな?」

「はい。失敗して、エルフの村の子どもたちの教訓になるのは嫌ですから」

「……わかった。お主たちが帰るまでに、許可証を用意するとしよう」

「ありがとうございます!」

よっしゃ。 言質(げんち) 取った。

『謎アイテム』が片付いたら、探索の準備を整えて、またここに来よう。

楽しみだな……。

「というわけだから、またここに来ることになると思う。そのときはメイベルも付き合ってくれる?」

「はい。トールさま」

あれ?

メイベルが、笑いをこらえるみたいな顔をしてる。

「すいませんトールさま。なんだか、不思議な感じがして……」

メイベルは俺の耳に顔を近づけて、小さな声でささやいた。

「私にとって……この村は怖い場所でした。でも、トールさまと一緒に来てからは、ここは『墓参りをする場所』で『素材をもらいに来る場所』になりました」

「うん。そうだね」

「それから『謎アイテムを調べることで、村の人たちを助ける場所』になって……今度は『迷いの森の攻略拠点』になっちゃったんです」

メイベルは熱っぽい息をつきながら、照れた顔で、

「『エルフの村』のあり方がくるくる変わって……それで、気がついたんです。私にとって、昔のことなんか、もう、本当にどうでもよくなっちゃったんだ……って」

「そうなの?」

「トールさまのおかげです。トールさまが、私を変えてくださったんですよ?」

長老の屋敷に来てからも、メイベルは俺の手を握ってる。

でも、すごく、リラックスしている。

お墓参りをしていたときは、ぎゅっ、と力を込めていた手が、今はただ、指をからめるだけの、優しい握り方になってるから。

「……えへへ、です」

メイベルはことん、と俺に肩を寄せてくる。

いや、ここは長老さんの屋敷で……あれ? 長老さん、優しい顔をしてるな。「子どものころのメイベルには悪いことをした。この村にいる間は、自由にするがいい」……って。そうなの?

「俺としては、メイベルが楽になったなら、それでいいよ」

「はい。トールさま」

それから俺は長老さんと、今後の打ち合わせをした。

俺たちは村に一泊した後で、魔王城に戻ることになる。

宿泊先としては、魔王城の魔術部隊隊長の家を借りることになっていたけど──長老さんは、別の家を手配してくれるそうだ。他の家からは離れた、静かで落ち着ける場所を。

せっかくの厚意だ。ありがたく受けることにしよう。

その後、長老さんは、村の外のことを聞いてきた。

俺は『魔獣ガルガロッサ』や、帝国との共同作戦について話した。

長老さんは興味深そうに聞いていた。

『謎アイテム』のことがあるからか、異世界から来た『ハード・クリーチャー』に興味があるみたいだ。

「やはり……村が 閉鎖的(へいさてき) なままでは、駄目なのだろうな」

話を聞き終えた長老は、今後の村の方針について話し始めた。

──国境地帯の交易所に、村のエルフを派遣したい。

──できれば『ノーザの町』に留学させて、外の世界のことを学ばせたい。

──そうしなければ、村のエルフは変化に対応できなくなってしまう。

そんなことを、長老さんは考えているようだった。

「知らない場所に行って、調べて学んで、経験を積むのはいいことですね」

「錬金術師どのの言葉には説得力があるな」

「俺は帝国から魔王領に来ていますからね」

「うむ」

「もちろん『迷いの森』のことも、調べて学ぶつもりでいます」

「念を押さずとも、許可証のことは忘れておらぬからな?」

そんな感じで、話は終わりになり、俺たちは長老の屋敷をあとにしたのだった。

「ご用事は済みましたか? 錬金術師さま」

「書状の用意ができたのでございます!」

村の入り口では、エルテさんと 羽妖精(ピクシー) のルネが待っていた。

ふたりは魔王城に送る報告書を書いていた。

エルフの村に着いたことと、『謎アイテム』について、ルキエに伝えるためだ。

「それはルネさま。お城に届けていただけますか?」

「承知いたしました。それでは!」

ルネは書状を手に、東に向かって飛び立った。

木々の間に隠れていた羽妖精たちがそれについていく。

やっぱり、何人かこっそりついて来てたんだね……。

『……わぅ』

ふと気づくと、森の方から金色の狼がやってくる。

『ご先祖さま』だ。

用事が済んだのを察したのかな。

「お待たせしました『ご先祖さま』。用事は済んだので、明日にはここを発ちます」

『わぅぅ』

俺の言葉にうなずく『ご先祖さま』。

やっぱり、こっちの言葉を理解しているみたいだ。

「……『ご先祖さま』と話ができればいいんですけどね」

俺はふと、そんなことを言ってみた。

「『ご先祖さま』は、魔王領が出来る前から、この土地に住んでるんですよね? だから、『迷いの森』の抜け方とかも知ってるかな……と、思って」

『わぅわぅわぅ』

「なんて、希望的観測ですけどね。『ご先祖さま』に道案内してもらえれば、『謎アイテム』が発動する前に素材を取ってこれますから。でも、いくらなんでも無理ですよね。だから、魔王城に戻ったら対策を立てます。その時に、一緒に来てもらえれば……」

『わぅわぅ、わぅ!』

……あれ? 『ご先祖さま』がうなずいてる。

尻尾を振りながら、何度も頭を縦に振ってるけど……。

「「……んん?」」

俺とメイベルは顔を見合わせた。

「『ご先祖さま』って、俺たちの話してることはわかるんだよね?」

「はい。そう言われています」

「旅の間も、俺たちを案内してくれてたもんな」

「ですね」

「それで今、俺は『ご先祖さま』に『迷いの森の抜け方を知ってる?』って聞いた」

「『ご先祖さま』はうなずきましたね……」

「ということは、知ってるってこと?」

俺とメイベルは、じーっと『ご先祖さま』を見た。

金色の狼の『ご先祖さま』はつぶらな 瞳(ひとみ) で、俺たちを見つめてる。

俺はしゃがんで、視線を合わせて、

「……えっと。『迷いの森』の奥まで、道案内をお願いしてもいいですか?」

しばらく、沈黙があった。

『ご先祖さま』は俺の問いにしっかりと、うなずいた。

でも、歩き出そうとはしない。

じれったそうに地面を引っ 掻(か) いたり、首を振ったりしている。

「森の抜け方を教えてくれるだけでもいいですよ?」

『わぅぅ』

なんだか悲しそうな声だった。

『ご先祖さま』は昔から、魔王領に住んでいる。

でもエルフの人たちは、『迷いの森』の抜け方を知らない。

それは教訓話のせいで、エルフの人たちが『迷いの森』に近づきたがらないってのもある。でも『ご先祖さま』なら、頼めば結界の抜け方を教えてくれるはず。

それをしていないということは……。

「結界を抜けるのには、すごく面倒な手順が必要で、説明するのが難しいとか?」

『わぅぅん!』

『ご先祖さま』は、勢いよくうなずいた。

どうも、そういうことらしい。

『ご先祖さま』は俺たちの言葉を理解しているけれど、俺たちには彼の言葉が分からない。

仮に『迷いの森』を抜けるのに、合い言葉や呪文の詠唱が必要だった場合、『ご先祖さま』にはそれを伝える手段がない。

だから、今まで誰も、あの森を抜けられなかったのかもしれない。

それに『ご先祖さま』に『素材を取ってこーい』って命じるのも失礼だもんな。

相手は魔王領の先住者なんだから。

「どうされたのですか? トールどの」

書き物の後片付けを終えたエルテさんがやってきた。

「『ご先祖さま』と見つめ合っていたようですが?」

「実は『ご先祖さま』が、俺が欲しい素材のありかを知っているようなんです。場所は、大森林の奥で、人がほとんど行ったことがない場所なんですけど」

「それはすごいですね!」

エルテさんは目を見開いている。

「ですが時間がありません。『謎アイテム』が発動するまでにお城に戻らなければ」

「はい。わかっています」

「わかっていただけて幸いです」

「俺は魔王陛下直属の錬金術師ですからね。陛下に復命するのが優先です」

まぁ、しょうがないよな。

素早く行って戻ってこれる方法があるなら話は別だけど。

でも、『迷いの森』の抜け方を知っている者に会えたんだ。時間があるときに──

「『ご先祖さま』とお話ができればいいのですが、さすがに無理でしょう」

「…………」

「例えば『ご先祖さま』の声を、ひとの言葉に翻訳するようなマジックアイテムがあればいいのですが、いくら錬金術師さまでもそれは……おや? どうして突然地面に座り込んでいらっしゃるのですか? すごい勢いで『通販カタログ』をめくっているのは……?」

「ありがとうございます。エルテさん」

「え? え、えっ!?」

「宰相閣下と同じように、エルテさんも俺にアイテム作りのヒントをくれるんですね。さすがは宰相閣下のご一族です。おかげでいいことを思いつきました。なんとかなりそうです!」

「わ、わたしが錬金術師さまに、アイテム作りのヒントを……?」

やっぱり宰相家の人々はすごいな。

ケルヴさんもエルテさんも、アイテム作りのヒントをくれるんだから。

心から感謝してる。

勇者世界風に言えば、宰相閣下とご家族のますますの発展とご多幸を祈ってしまうくらいだ。

というか、翻訳については、俺もここに来るまでの間に考えていた。

『ご先祖さま』の言葉を翻訳するものがあればいい、って。

『謎アイテム』に気を取られて、すっかり忘れていた。

エルテさんがそれを、思い出させてくれたんだ。

「……これだ」

俺は『通販カタログ』をめくる手を止めた。

開いたページに掲載されていたのは──

────────────────────

『ワンニャン・仲良しトークペンダント』

ワンちゃんや猫ちゃんと、もっと仲良くなりませんか?

ペットは大切な家族です。

だからこそ、気持ちを通じ合わせなければいけません。

この『ワンニャン・仲良しトークペンダント』で、ワンちゃんや猫ちゃんの気持ちを確かめましょう!

使い方は簡単。ペットにマイクを向けて、スイッチを入れるだけ。

鳴き声を読み取り、わかるように伝えてくれます。

(文字の場合と、絵で表示される場合があります)

また、大人気の『マジカル☆ブレイブ・ブリーダー』第3期シリーズとのコラボレーションも実現しました。

ボタンを押すと、変身シーンの音楽が流れます。

色はレッドとブルーとピンクをご用意しています。

もちろん、 翻訳(ほんやく) の正確さも実証済み。

当社で一番動物好き (犬3匹、猫2匹を飼育中)の社員も、数多くのブリーダーたちも、その性能に大満足です!

(個人の感想です)

(専門家が効果を保証するものではありません)

この『ワンニャン・仲良しトークペンダント』で、楽しいペットライフを送りましょう!

────────────────────

『……わぅぅ? わぉん!』

「わかってます。『ご先祖さま』はペットじゃありません」

『わぅわぅ』

「でも俺はあなたと話がしたいんです」

俺は『ご先祖さま』をじっと見つめていた。

勇者世界には『マジカル☆ブレイブ・ブリーダー』という存在がいたらしい。

おそらくは魔獣使いのような存在だろう。

でも、こっちの世界の使役魔術とは違って、ちゃんと意思の疎通を行い、お互い納得の上で仕事をさせていたようだ。翻訳機があるということは、そういうことなんだろう。

超絶の力を持つ勇者だからこそ、魔獣を恐れることもなく、会話ができたんだろうな。

もしかしたら『ハード・クリーチャー』とも、会話を試みていたのかもしれない。

でも、俺はそうじゃない。

そもそも『ご先祖さま』を使役するつもりもない。

ただ、友だちみたいに話をしてみたいだけだ。

だから──

「『ワンニャン・仲良しトークペンダント』を試してもいいですか?」

『…………わぅ』

『ご先祖さま』はじっと俺を見ていた。

その後、しばらく時間をおいて、静かに「こくん」とうなずいた。

よっしゃ。

「すいませんエルテさん。ちょっとマジックアイテムを作ってきます」

「そのまま『迷いの森』に突入したりはしませんよね?」

「しません」

「そ、それならばいいのですが……」

「ありがとうございます。それじゃメイベル、手伝ってくれる?」

「はい。トールさま。お部屋の用意をしてきますね」

そう言ってメイベルは走り出す。

さっき長老さんに家を手配してもらったばかりだ。

そこでマジックアイテムを作ることにしよう。

「それじゃ、マジックアイテムを作ります。『ご先祖さま』も見ていてください」

『わぅわぅ』

そうして俺は、翻訳アイテムの製作に入ったのだった。