軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第175話「エルフの村を訪ねる(2)」

エルフの墓地は、村外れの広場にあった。

深い森の中にぽっかりと空いた、花畑の 隣(となり) だ。

地面には石が並んでいて、そのひとつひとつに名前が刻まれている。

墓地の入り口には村長と、護衛のエルフたちがいる。

俺とメイベルの墓参りが終わるのを、待ってくれている。

終わったらすぐに用事を頼めるように、近くにいるだけかもしれないけれど。

俺たちは墓地をゆっくりと歩いている。

メイベルは俺を先導するように進んで──

そうして、隅の方にある、小さな墓の前で立ち止まった。

「……お父さん、お母さん」

メイベルはそう言って、目を閉じた。

まるで、見えない誰かと会話しようとしているようだった。

俺も、メイベルをまねて、目を閉じてみた。

視界を塞ぐと、ざわざわ──という音が大きくなる。

木々の枝が揺れる音だ。

こうしていると……まるで森に包み込まれたような気分になる。

しばらくして、俺とメイベルは目を開けた。

「トールさま」

「うん」

「ここにいると、森の一部になったような気がしませんか?」

「そうだね。なんだか、怖くなった」

「エルフはみんな、この音を聞いて育つんです。エルフにとっては、森の音は子守歌みたいなものなんです。だから、その音が一番よく聞こえる場所にお墓を建てるんです」

「亡くなった人たちが安らかに眠れるように?」

「はい。でも、その気持ちが……私には……よくわかりません」

メイベルは 頭(かぶり) を振った。

「両親が生きていた頃は……楽しいこともありました。でもその後は、嫌なことがあって……どちらの時も、私は森の音を聞いていました。だから私は、この音をどんな気分で聞けばいいのか、わからないんです……」

そう言ってメイベルは顔を上げて、

「す、すいません。変な話をしちゃいました」

「そんなことはないよ。なんでも話してくれていいんだ。そのために一緒に来たんだから」

「……トールさま」

「メイベルが満足するまで付き合うよ」

「ありがとうございます……」

そう言って、メイベルはお墓の前に膝をついた。

俺も同じようにする。

メイベルは墓石に触れて、

「お父さん、お母さん。メイベルは戻ってきました。ずっと怖かったこの村に……来ることができたのは、トールさまのおかげです。トールさまのお側が私の場所だってわかったから、安心して、ここに来ることができたんです」

メイベルは『帰る』とは言わなかった。

言ったのは、『この村に来る』という言葉だけ。

ここはもう、自分の帰る場所じゃない……そういう意味なのだと思う。

俺は「わかってる」って示すように、メイベルの手を握り返す。

メイベルは安心したような息をついて、

「トールさまと一緒にいると、すごく落ち着きます。胸の中が温かくなって、優しい気持ちになって……怖い思い出なんか、すべて忘れてしまいます。トールさまと出会うまでは、小さいころのことを夢に見ることもあったのですけれど、それもなくなりました」

「……メイベル」

「お母さんに 裁縫(さいほう) を教わったおかげで、トールさまの役にも立てました。羽妖精さんの『 魔織布(ましょくふ) 』の服をあげるとき、すぐに服を作ることができましたからね」

「うん。あのときは助かったよ」

「その技術を活かして、『トールさまのぬいぐるみ』も作れました」

「……ん?」

「も、もちろん、私がトールさまをひとりじめすることはできません。で、でもでも、夜、ご一緒すると、よく眠れるんです。も、もちろん、陛下の許可はいただいております」

「……んん?」

「陛下からも『余の分も作ってくれたおかげで、よく眠れるようになった』と、おほめの言葉をいただきました」

「…………ん、んんん?」

「耐火性のある『地の 魔織布(ましょくふ) 』のぬいぐるみも制作中です」

「………………んんんんんん?」

「だから、メイベルは大丈夫です。お父さん、お母さん」

そう言って、メイベルはお墓に手を合わせた。

俺もメイベルの 隣(となり) で同じようにする。

「安心してください。メイベルは、トールさまのお側で心安らかに生きています。トールさまを守り、その支えとなって……生きていくつもりですから」

そう言ってメイベルはまた、目を閉じた。

言いたいことを言って、すっきりした、そんな表情だった。

……なんだか不思議な話も、混じっていたような気がするけど。

「トールさま」

「う、うん」

「よろしければトールさまも、両親のお墓に、なにか言ってあげてください」

「うん。わかった」

俺はメイベルの両親の墓の前でおじぎをして、

「はじめまして。俺は錬金術師のトール・カナンと言います。帝国から魔王領に来ました。きっかけは追放されたことでしたたけど、今は、魔王領に骨をうずめるつもりでいます」

それからゆっくりと、思っていることを話し始めた。

「はじめて国境地帯に来たとき、メイベルが出迎えてくれました。本当はあのとき、逃げることも考えていたんです。帝国では、魔王領は未知の国で怖い場所だって聞かされていましたから。でも……メイベルが優しく出迎えてくれたから、俺は魔王領を信じることに決めました」

俺は話を続ける。

──魔王領に来てから、ずっと、メイベルが俺を支えてくれていること。

──メイベルが俺を信じて、マジックアイテムを使ってくれたことが、救いになったこと。

──いつの間にかメイベルが隣にいるのが、当たり前になったこと。

──そんな生活を、大切に思っていることを。

そんなことを、俺はお墓に向かって、報告した。

「エルフの長老さまからの依頼も、受けるつもりでいます」

最後に、俺はそう付け加えた。

「ここにはお墓参りのためと、錬金術師の素材探しのために来たんですけどね。でも、それは後回しです。この村はメイベルのご両親が眠る場所だから……メイベルが心安らかでいられるように、トラブルは解決しておきたいんです。だから、どうか見守っていてください」

やっぱり、むちゃくちゃ恥ずかしいな。こういう話は。

嘘はひとつも口にしていないんだけど。

……この森の雰囲気に飲まれてしまったみたいだ。

他の場所じゃ絶対に言えないよな。こんなこと。

「そ、それじゃメイベル。俺は長老さんの話を聞くけど、メイベルはどうする? もう少しここにいても──」

「…………」

メイベルは答えない。

ただ、真っ赤な顔で、じっとこっちを見てる。

というか、エルフ耳や、首筋まで真っ赤になってる。

「メイベル?」

「…………」

「えっと……一緒に来る?」

「…………」

こくこく。

メイベルは真っ赤な顔のまま、うなずいた。

手を引くと……素直に立ち上がる。

歩き出すと、手を繋いだまま、ついてくる。

……大丈夫かな。

「お待たせしました。長老さま」

「う、うむ」

「ご依頼の話について、聞かせていただけますか」

「よいのか? 欲しい素材があるのであろう。そちらが先でもいいのだが」

「さっきも言いましたけど、ここはメイベルの両親が眠る場所です。トラブルが起きているなら、その解決を優先します」

「そ、そうか」

長老さんはうなずいた。

それから彼は、メイベルを見て、

「メイベルは、村にすばらしいお方を連れてきてくれたのだな」

「長老さま。しかし、人間にわれらの失敗の結果を見せるのは──」

護衛のエルフたちが、かすれた声でつぶやく。

長老は彼らを、たしなめるように、

「もう、そんな状況ではあるまいよ」

「で、ですが──」

「……その凝り固まった考えが、今回のトラブルを招いたのであろう。違うか!?」

長老は護衛のエルフたちを 一喝(いっかつ) した。

「伝統を守るのは良い。だが、自分の意見のみに凝り固まっては、世の変化に対応できなくなる。今のわれらのようにな。違うか?」

「「「長老さま……」」」

「錬金術師どのがなさることをよく見て、学ぶのだ。われらエルフが知らないものがあるということを思い知るがいい。それは恥ずかしいことではない。そう心得よ」

「「「……はい」」」

「では錬金術師どの。こちらへ」

そうして長老たちは、俺を村の一角へと案内したのだった。

「これが、エルフの村を襲った異常事態だ」

地面を指さし、エルフの長老はそう言った。

俺たちが案内されたのは、村はずれにある広場だった。

魔術の練習をするための場所だそうで、あちこちに、石でできた 的(まと) がある。焼け焦げたり、切り刻まれたりしてる。エルフは強力な魔術が使えるから、的の 消耗(しょうもう) も早いらしい。

その練習場の地面に、穴が空いていた。

「誰かが地面に魔術でも放ったんですか?」

「違う。数日前の夜に、空中から奇妙なものが落ちてきた。それが地面に穴を空けたのだよ」

長老は言った。

「現場を見た者は『地面の上に小さな魔法陣が浮かんでいた』と申していた。その魔法陣の中心から、奇妙なものが落ちてきたらしい。それが、今のその穴の中にあるのだ」

「魔法陣から、奇妙なものが?」

……なんだか、引っかかるな。

「どのような魔法陣だったか、記録に残っていますか?」

「いや、一瞬のことだったのでな」

「もう一度見ればわかりますか?」

「……どうなのだ?」

長老は護衛のエルフを見た。

エルフの男性はためらいながら、

「は、はい。見れば……それとわかるかと」

「もうひとつうかがいます。俺がその魔法陣と似た資料を見せたとして、その内容を極秘にしてもらえますか?」

「エルフの誇りにかけて約束しよう」

「では、これを見てください」

俺は長老と護衛の男性に、 羊皮紙(ようひし) を見せた。

召喚魔術の魔法陣について描かれたものだ。

以前、国境地帯に巨大ムカデの魔獣が現れた。

その痕跡をたどると、召喚魔術の魔法陣を見つけた。

これは、その魔法陣を書き写したものだ。

西の砦からも正確な魔法陣を手に入れているけど、あれはルキエの許可がないと第三者には見せられないからね。仕方ないね。

「空に浮かんだのは、この魔法陣じゃないですか?」

「似ている……が、少し違うような気がする」

「そっくりではあるんですね?」

「う、うむ。ほとんど同じだ。だが、一部、術式のかたちが違うような……」

「わかりました。それじゃ、落ちてきたものを見せてもらいますね」

俺は穴に向かって歩き始める。

エルフの人たちが異世界からなにかを召喚したのかと思ったんだけど……違うみたいだ。

というか、あの反応を見ると、彼らは召喚魔術については知らないらしい。

それに、彼らが見たのは『似ているけど違う』魔法陣らしい。

召喚魔術以外でなにかを呼び出す魔術ってあったっけ。

……いや、違うな。

こちらから召喚したんじゃないとしたら──

「メイベル。ちょっと教えて欲しいんだけど」

「は、ひゃいっ!?」

「……どうしたのメイベル?」

「い、いえ。ちょっと……トールさまの息が、耳に当たって、くすぐったくて」

「? いつもと変わらない距離だと思うけど」

「そ、そうですよね。あれ? あれれ?」

メイベルは胸を押さえて、不思議そうな顔をしてる。

「す、すいません。お墓参りをしてから……不思議な感じで。ふわふわして、くすぐったくて……」

「大丈夫?」

「だ、だいじょぶです。それより、ご質問というのは?」

「勇者を異世界に送り返した魔術について、メイベルは知ってる?」

「 送還魔術(そうかんまじゅつ) ですね。別名、 派遣魔術(はけんまじゅつ) とも言います」

「こっちの世界から別世界へ、人やものを送る魔術だよね」

「そうですね。それを使って、帝国は勇者を元の世界へと送り返したと言われています。ただ、どんな魔術だったのか、魔王領に記録はありません」

「それって、 召喚魔術(しょうかんまじゅつ) の術式と似てると思う?」

「可能性はありますね。同じように、異世界への門を開く魔術ですから」

「そうだね。そして、勇者たちは元の世界に戻されるとき、その儀式を見ているはずなんだ」

「──あ」

メイベルが目を見開く。

俺の言いたいことがわかったみたいだ。

魔王との戦いが終わったあと、勇者たちは元の世界に送り返された。

しかも、勇者たちは人数が多かった。

全員をいっぺんに送り返すのは無理だろう。となると、数人ずつ、数回に分けて『送還魔術』が使われたはずだ。安全性を確認するためにも、勇者立ち会いの元で行われた可能性がある。

となると勇者たちは、送還魔術が行われるのを、はじめから終わりまで、じっと見ていたのかもしれない。

勇者は超絶の力を持つ者たちだ。

帝国の魔術師が送還魔術を使うのを見て、調べて、習得することもできるだろう。

と、いうことは──

「エルフの人たちが見たのは 送還魔術(そうかん) ・ 派遣魔術(はけんまじゅつ) の魔法陣で、落ちてきたのは、勇者世界から送られてきたものかもしれない」

「勇者が……送還魔術を……そんなこと可能なのでしょうか?」

「可能だと思う。ただ、物を送ってきたってことは、人間はまだ送還できないのかもしれない。勇者がこっちに戻ってきたという記録はないからね」

「こっちの世界のことを忘れている可能性もありますね」

「向こうには『ハード・クリーチャー』の問題があるからね」

「あんな魔獣と戦うんだから、戦力は集中しなきゃいけないですからね」

「こっちの世界に構っている余裕はないだろうね……」

問題は、帝国兵がこの世界に巨大蜘蛛の『魔獣ガルガロッサ』や、巨大サソリの『魔獣ノーゼリアス』を召喚したことだ。

あの魔獣たちが勇者世界から召喚されたとき、その現場を見ていた人間がいたかもしれない。

仮にそうだとすると、その人は『魔獣ガルガロッサ』たちが異世界へと消えていくところを見ていたことになる。

それは、勇者世界とこの世界の繋がりを、はっきりと示したはずだ。

「つまり、召喚魔術を使った帝国がみんな悪い」

「ト、トールさま?」

「勇者がこっちの世界に来てから、かなりの時間が経ってる。あっちの世界の人たちも『ハード・クリーチャー』対策で忙しくて、こっちの世界のことなんて忘れてた可能性だってあるんだ。それを、帝国が使った召喚魔術がだいなしにしたのかもしれない」

まぁ、仮説だけどね。

今の勇者世界のことなんかわからないんだから。

「というわけで、確かめてみようよ」

「は、はい。トールさま」

「ただし、危ないと思ったらメイベルは離れるように」

「それはお断りします」

「そうなの?」

「だって、さっき私は、お墓の前でお父さんとお母さんに……」

「あ、そういえばさっきの、『トール』のぬいぐるみを作っていたというお話だけど?」

「はい。そういえば、トールさまも私について……その」

「…………」

「…………」

「……とりあえず、落ちてきたものを確認してからにしようか?」

「……賛成です!」

俺たちは手を取って、魔術練習場の中央に。

そうして、地面に空いた小さな穴をのぞき込む。

そこには──

『8 14:22:59』

──謎の数字が表示された物体があった。

物体の大きさは、手の平と同じくらい。

具体的には、高さ十数センチで幅十センチ弱。厚さは1センチに足りないくらい。

見た目は、金属製の板っぽい。

表面はつるつるしていて、ぼんやりとした光を放っている。

表面に映っているのは、数字だった。

勇者が広めて、この世界にも定着したものだ。

それが1秒ごとに1ずつ、減っている。

一番下の位がゼロになると、上の位も減り始める。一番下の位の表示は0から59。

ということは、一番下が秒数で、次の位が分。その上が時間か。

となると、8というのは日数か?

「このアイテムは……形が勇者世界の『スマホ』に似てるな」

「『スマホ』というと、勇者世界の万能アイテムですか?」

「うん。通販カタログにあった『スマホケース』にちょうど入りそうな大きさだ」

勇者の証言によると、『スマホ』とは、さまざまな能力を持つマジックアイテムらしい。

鳥のように高い視点から、地上を眺めたり──

遠くの人に言葉を届けたり──

対価を支払えば、世界中のものを手元に引き寄せたり──

──そういうことが、できたそうだ。

ひとつのアイテムが、それだけの能力を兼ねるのは不可能に近い。

だから『スマホ』とは、大規模な魔術儀式の中枢を担うアイテムだと、俺は推測している。

これは、それに近いものだ。

「……エルフの長老さんが『異常事態』だと言うのもわかるな」

勇者世界──いや、断定はまだできないから『異世界』としよう。

そんな場所から、この世界には存在しないものが送り込まれてきたんだ。

前代未聞の大事件に違いない。

「錬金術師どの! なにかわかりましたか!?」

エルフの長老さんと、護衛の人たちが近づいてくる。

「危ないですから離れていてください!」

俺は叫び返す。

長老さんたちは、おどろいたように足を止めて、

「……なにがあったのですかな」

「勇者世界の『スマホ』らしきものがあります。しかも、 稼働(かどう) しています」

「な、なんと」

「数日前に落ちてきたんですよね? 誰か、触れた人はいますか?」

「……おるのか?」

長老さんは護衛の人たちを見た。

そのうちの一人が、ばつが悪そうな顔で、手を挙げた。

「申し訳ありません。危険なものか調べるために……つい」

「気持ちはわかります」

村を守る立場としては、放置はできないよな。

というか俺だったら、問答無用で確保して分析してるだろうし。

「触れたら数字が動き出したんですか?」

「は、はい……」

「触れる前はどんな状態でしたか?」

「表面に文字が表示されていました。触れた直後……数字が減りはじめて……」

「いつ頃のことですか?」

「5日前です」

「わかりました。ありがとうございます」

人が触れたら動き出すアイテムか。

……そういう仕組みにした理由はなんだろう?

人がいる場所で発動するようにしたかった、とか?

だとすると、誰もいない場所で使っても仕方ないアイテムだということになる。

そもそも、この数字にはどういう意味があるんだろう?

数字がゼロになると、魔術が発動する? そんなことが可能なのか?

いや……勇者ならできるか。

あの人たち、高速詠唱魔術の他にも、 遅延魔術(ディレイ・マジック) とか使ってたからな。

7日と14時間、発動を遅延させる魔術くらい普通に使いそうだ。

「離れていてください。これから、この『謎アイテム』を調べてみます」

「だ、大丈夫なのか。錬金術師どの」

「触れたりはしません。『 鑑定(かんてい) 』スキルを使うだけです」

俺が声をあげると、長老さんと護衛の人たちは距離を取る。

それから、俺は隣にいるメイベルを見て、

「それじゃ、メイベルも気をつけて」

「はい! いざというときは、私がトールさまの盾になります!」

「できるだけ安全に鑑定するつもりなんだけど」

「それでも、危険はあるんですよね?」

「勇者世界のアイテムだからね。絶対安全とは言えないよ。でも、できる限りのことはするつもりだ。俺がメイベルの故郷を壊すわけにはいかないんだから」

「……トールさま」

「でも、メイベルの気持ちもわかるよ。だから、隣で見てて」

「はい。トールさま」

「じゃあ、安全策を取ることにしよう」

俺は『超小型簡易倉庫』を取り出した。

扉を開けて、戸口を下に向けて、と。

「えい」

ぱかん。

俺は『 超小型簡易倉庫(ちょうこがたかんいそうこ) 』を『謎アイテム』にかぶせた。

そのまま、まわりの土と一緒にすくい取って、『超小型簡易倉庫』に収納して、扉を閉めて、と。

「よし。これでかなり安全になった」

板状の『謎アイテム』──『スマホ (仮)』は『超小型簡易倉庫』の収納空間に入った。

収納空間は広いからね。

中で爆発が起きても、火が飛び散っても、外には影響がない。

収納空間でも抑えきれないほどの大爆発が起こったときは、爆風は入り口から吹き出すことになる。

そのときは、扉を誰もいない方向に向けておけばいい。

安全だ。

「あとは鑑定するときに、このアイテムを『超小型簡易倉庫』の入り口近くに移動させればいい。扉を開けて、手をかざせば、俺の『鑑定把握』スキルで鑑定できると思うよ」

「……『超小型簡易倉庫』に、こんな使い方があったなんて」

「俺も今、思いついたんだ」

「私……なにかあったらトールさまの盾になるつもりだったんですよ?」

「メイベルにそんなことさせられないよ」

墓参りをして、『メイベルが隣にいてくれてうれしい』と言ったばかりなんだ。

その直後に、メイベルを盾になんかできるもんか。

それに、後でメイベルからは『トールさまのぬいぐるみ』について、詳しく聞かなきゃいけないからね。

俺がどんなぬいぐるみになったのか、どんな使い方をしてるのか、ぜひ聞きたい。

メイベルの反応が楽しみだ。

「それじゃ、調べてみるよ。発動『 鑑定把握(かんていはあく) 』」

そして俺は、謎のアイテムの調査をはじめたのだった。