軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第80話・芽姫

模擬戦を終えて修練場を出た、アウローラとセシリアの行動は早かった。

詰め所の水桶で手を洗い、訓練用の鎧を脱ぐ。汗を拭いながら簡素なチュニックに着替える。二人とも手際よく、戦場の人間が身に付ける無駄のない速さ。

そして二人は並んで小城の廊下を歩き出す。

二人の足取りは軽快だ。模擬戦の疲れなど微塵も感じさせていない。

そして何より――顔に笑みが。

堪えきれない笑み。急ぎたい気持ちを誤魔化しきれていない表情。王女と辺境伯令嬢が並んで廊下を歩く。

目指す先は「談話室」だ。ただ、そこへ向かうだけにしてはやけに足早である。

何かを待ちわびている顔。お互いに、その顔に気付く。

「……セシリア嬢、さっきから口角が上がっているぞ」

「殿下こそ。少しは感情を隠しませんと」

「私は王族だから、笑うのも仕事だ」

「どうみても仕事の笑みではございません」

二人とも軽口を叩きながら、歩みを止めない。むしろ早くなる一方で。

廊下の角を曲がるたびに、扉の数を数えてしまう。談話室まで、あと少し。

「殿下。歩みが速いです。廊下はもう少しゆっくり歩きませんと」

「セシリア嬢こそ。殆ど小走りじゃないか。駄目だぞそんな歩き方では」

軽口は止まらない。お互いに解って言っている。談話室に待っている「存在」に会いたくて会いたくて仕方がないのだ。

なので歩みが速まる。そして二人はほとんど同時に談話室の扉の前に辿り着く。

一切躊躇わず、扉を開けた。

途端に、空気がふわりと甘くなる。香木の匂い、温かい紅茶の湯気、焼き菓子の匂い。それらが混ざった穏やかな匂い。そして、その中心に――ソファの上でこちらを見た小さな存在が、ぱぁっと顔を明るくしていた。

クロエだ。

子猫ほどのサイズ。二頭身の丸っこい身体。ふわふわで、ぬいぐるみ然とした造形。目は大きく、表情は豊かで、そして何より――見ているだけで人間の理性が薄くなる類の可愛さを兼ね備えた、人型ゴーレム。

クロエは小さな身体をぴょこんと跳ねさせ、次の瞬間にはぽてぽてと駆け寄ってくる。両手を突き出して、まるで「抱っこ」を要求する幼児の動き。あまりにも分かりやすい愛らしさ。

アウローラが笑顔で迎える。

「ただいま、クロエ!」

「……クロエちゃん……!」

セシリアの声は、すでに崩れていた。顔が赤い。視線が泳ぐ。手がうずうずしている。可愛いものを前にした人間が見せる、最も無防備な挙動。

クロエはアウローラの足元まで辿り着くと、よじよじと登ろうとする。アウローラが慣れた手つきで抱き上げ、胸元に収めた。クロエは満足げに小さく胸を張り、アウローラの頬に顔を擦りつける。

同時に談話室の奥から、柔らかな笑い声がする。

「ふふ。クロエちゃんは、やっぱり殿下の傍が一番好きなのね」

セシリアの母――辺境伯夫人だった。

背筋の伸びた、落ち着いた所作。薄い香の匂い。戦場の城にあっても、品格は崩れない。けれど表情だけは、あまりにも穏やかだった。孫を見るような目でクロエを見つめる。

「わたくしの膝の上では、あんな笑顔浮かべませんでしたのに」

「えっ?」

セシリアが反射で振り返る。

「か、母様? クロエちゃんを膝の上に乗せたのですか?」

自分はまだやっていない。自分はまだ許可を得ていない。そんな顔である。辺境伯家の令嬢としての自制が、可愛いの前では紙になっていた。

夫人は悪戯っぽく微笑む。

「ええ。少しだけね。ふわふわで……とても可愛かったわよ」

「……っ」

セシリアが、目に見えて悔しそうに頬を膨らませて唇を噛んだ。

アウローラは笑いを堪えきれず、肩を震わせる。

「セシリア嬢。その顔を、兵に見せたら士気が上がるぞ」

「殿下! からかわないでください……っ!」

言いながらも、セシリアの視線はクロエから離れない。クロエはというと、アウローラの腕の中で得意げに「ふんす」と鼻息を鳴らし、次に夫人の方へ小さく手を振る。夫人も穏やかな笑みを浮かべて、クロエに手を振り返す。

その笑みを絶やさぬまま、夫人は続けた。

「皆が『 芽姫(めひめ) 』と呼んで可愛がる気持ちが、よく解ったわ」

芽姫。

要塞都市グラードラインで、クロエにつけられた渾名。

小さなゴーレム。ぽてぽて歩くお人形。ふわふわで、柔らかくて、妙に誇らしげ。誰がどう見ても「守りたくなる」外見をしているクロエに対して、自然と呼称された名前。

夫人が淡々と、しかし楽しげに報告する。

「初日でメイドたちがやられ、二日目に兵がやられ、三日目にわたくしの夫がやられてしまいました」

セシリアが、ゆっくりと父の方へ視線を向ける。

談話室の椅子に、歴戦の雰囲気を纏った男が座っていた。

バルドゥール・レオン・グラードライン辺境伯。

顔や腕に刻まれた傷が、戦いの歴史を語る。背は高く、肩幅が広い。椅子に座っていても、立っているような圧がある。

しかしその辺境伯が今――クロエを見て、目尻を下げていた。

ほんの僅かだが、確実に。

「この要塞を三日で陥落させた者は、歴史を紐解いてもクロエちゃんが初です」

くすくすと笑いながら、冗談めかして夫人が言う。

その言葉に、談話室の空気がさらに柔らかくなる。

柔らかさは、この要塞都市では救いであり癒しだ。ここは国境。いつでも硬く、いつでも張り詰めている。だからこそ息をつける瞬間と、癒してくれる存在を慈しむ。

……しかし。

その柔らかい空気を、ひとつの小さな咳払いが切り替えた。

「……芽姫が可愛いのは儂も認める」

辺境伯の声は低く、落ち着いている。笑みが消えたわけではないが、戦の顔に戻っている。

「だが、殿下。今は愛でる時間ではありませぬ。本日の『調査』を行いましょう」

辺境伯の言葉に、談話室の温度が少しだけ下がる。

茶菓子の匂いも、紅茶の湯気も残っているのに空気が締まる。

談話室のテーブルには地図が広げられている。辺境伯領一帯。河川、街道、見張り塔、砦。帝国側に通じる渡河点。魔物の出現頻度が高い草地。野盗の噂が出る村落。細かな書き込みがいくつもあり、そこに幾つもの線が追加されている。昨日の情報と今日の情報が重なり、地図は「紙」ではなく「現場」になる。

夫人も、セシリアも、アウローラも――表情を整え、地図へと歩み寄った。

そしてアウローラが腕の中のクロエを、テーブルの上に乗せる。クロエに抵抗する気配は無く、むしろ「任せて」と言わんばかりに胸を張っていた。

「よし。それじゃあクロエ。今日も頼むぞ」

【~~!】

アウローラの言葉に応えるように、ふんすと鼻息を荒くするクロエ。

自信満々だ。

夫人は孫を見るような眼差しで見つめ、セシリアは口元を押さえ、辺境伯は咳払いで自制する。

辺境伯の家族全員が、必死に我慢しているのが瞭然であった。

そんな一同の空気を吸い込みながら……クロエの身体が淡く光る。

ふわふわの身体に、ほんの一瞬だけ幾何学模様の線が見え隠れする。人では知覚し切れない高度な魔術式の線。ぬいぐるみのようなクロエの身体の内側に、別の規格が漏れる。

アウローラは、真面目な顔に切り替えて地図を覗き込む。セシリアも、背筋を伸ばす。辺境伯は腕を組み、地図から目を離さない。夫人も椅子に腰掛けて、静かに見守る。

談話室の空気が、温もりから緊張へ

あまりに自然な、笑いと戦支度の切り替え。

これこそが国境を護る要塞都市の日常。

そして……クロエの発光が収まる。

次いで、地図の上をぽてぽてと歩き出す。短い歩幅で、けれどしっかりと。

まるで見えない道を知っているかのように、地図の上の「国境線」を迷いなく辿っていく。

そして、ある一箇所でぴたりと止まった。

この要塞都市から東の地点。川の線を跨ぐように進み、草原地帯の記号が散る一帯。

そしてそこを――ぺしぺしと、小さな手で叩き始める。

「この地点は……明日、別隊が巡回に赴く地点です」

セシリアの声が低く出た。反射的に変わる軍人の声色。

境界狩猟軍の巡回ルート。草原に点在する監視地点。風向きと足跡が読める場所。野盗が潜みやすい小さな起伏。魔物が出やすい湿地の縁。彼女の頭の中には、地図の線がそのまま現地の匂いに変わっている。

普段なら、そこで想定されるのは散開しているコボルトか、ゴブリン。群れが固まる前なら、狩猟軍の中隊が動けば十分対処できる。むしろ新兵が初めて「怖さ」を学ぶ相手でもある。怖さを学び、隊列を学び、連携を学ぶ相手。

だからこそ……この地点を叩かれるのは、嫌な予感がした。

辺境伯バルドゥールは、顎をゆっくり撫でる。大柄な手が顎髭をなぞる仕草は、考える時の癖なのだろう。視線はクロエから地図へ、地図からクロエへ。戦場で何度も「最悪」を見てきた男の目。

やがて彼は、テーブルの端に置かれていた一冊の冊子を引き寄せた。

厚い紙。使い込まれ、角が少し擦れている。兵に共有される魔物図鑑――姿絵と特徴、行動、弱点、推定レベル。討伐履歴のメモまで挟まっている。

辺境伯は冊子を開き、クロエの前に差し出した。

「芽姫よ。どの魔物が居たか解るか?」

問いかける声は穏やかだ。けれど、その穏やかさは要塞の指揮官特有のもの。慌てず、焦らず、しかし一字一句を誤らない。

クロエは冊子をじっと見つめた。

ぱち、と瞬きをするように目が動き、絵と絵の間を辿る。クロエの大きな瞳が冊子の中を、すいと滑り……ひとつの頁で止まった。

そして、その魔物の姿絵を、ぺしぺしと叩く。

ぺしぺし、ぺしぺしと。

叩かれているのは――巨躯。隆起した筋肉。鈍い灰緑の皮膚。棍棒を握る怪物。

「……トロル!?」

セシリアの声が、思わず上擦った。夫人が息を呑む。辺境伯の目が鋭くなる。アウローラの表情から、柔らかい笑みが消える。

トロル。

再生能力。痛みに鈍い。力が強い。頭が悪い個体も多いが、逆に「悪知恵だけはつく」ものが混じることがある。何より――集団戦で厄介だ。一匹でも隊列を崩すに足りる。油断すれば骨が折れる。折れた骨が折れたままでも、トロルは襲い続ける。

推定レベルは二十から三十。軍が相手にできないわけではない。だが、それは「準備がある場合」だ。前情報なしで巡回隊が出会えば、負傷者が出る確率が跳ね上がる。新兵ならなおさらだ。

「ここまで来たのか……!」

辺境伯が低く唸った。地図に指を置く。国境の線から、ほんのわずか内側。いや、内側というより「入り口」。ここを越えれば、魔物は領内に散る。

「数は解るか!?」

辺境伯の問いに、クロエは小さな指を一本立てた。

「一匹か……」

辺境伯の肩から、ほんの少し力が抜けた。最悪は群れ。トロルの群体を相手取る場合、新兵の実習など絶対に行えない。だが、一本指は最悪をひとつ減らしてくれる。

とはいえ、安心には遠い。

「逸れの個体か。あるいは――」

「……先日のゴブリンの群れ。もしや、このトロルから逃げて来たのでは?」

セシリアが言うと、辺境伯の視線が地図の別の印へ移る。数日前、狩猟軍が潰した小さなゴブリンの動き。妙に散っていた群れ。引き際が早かった連中。

「あり得るな。となれば、並みのトロルより力は上かもしれん」

辺境伯は手元のベルを鳴らした。ちりん、と小さく硬い音。

扉がすぐに開き、従者――軍装の青年が入室する。

状況の匂いを嗅ぎ取り、姿勢が最初から緊張している。

「伝令。芽姫からの知らせだ。明日の巡回ルートにトロルが居る可能性を考慮し、人員と装備の再確認を急がせよ。槍隊の比率を上げろ。回復役も一つ増やせ」

「はっ」

青年は一礼し、すぐ踵を返して飛び出していった。部屋の外で足音が増え、指示の声が連鎖していく。要塞都市が動く音。要塞は指揮官の一言で、瞬時に戦場に変わる。

そして――談話室に、ほっとした溜息が落ちた。

危険は消えていない。だが「知らない」より「知っている」ほうが、圧倒的に生存率が上がる。戦は情報で勝つ。戦は情報で避ける。国境は特にそうだ。

アウローラはクロエの頭を、指先でそっと撫でる。力を入れない、けれど確かな手つき。兵を褒める時と同じ、真っ直ぐな温度。

「偉いぞクロエ。予期せぬトロルを相手にするのは危険が大きい。倒せたとしても負傷者が出る可能性がある……お前は、その未来を救ったかもしれない。本当に偉い」

【~~♪】

クロエは嬉しそうに身をよじり、撫でる手にぎゅっとしがみついた。言葉がない分、感情がまっすぐだ。小さな身体の動きだけで「褒められた!」という感情が伝わる。

辺境伯夫人が、口元に手を当てて微笑む。セシリアは胸のあたりを押さえ、危うく「可愛い……」と漏らしかけて、なんとか飲み込んだ。今は戦の話。

けれどセシリアは堪えきれず、冗談めいた声にして吐き出した。

「それにしても……明日の巡回次第ですが、本当にトロルが居た場合、『五連続』で的中することになります。とんでもない探知範囲です。クロエちゃんひとりで、軍の斥候が皆泣いてしまいますよ」

五連続。

それは「偶然」を否定する数字。

アウローラがこの要塞都市へクロエを伴って来てから、既に一週間以上が経っている。その間、周辺の調査作業を行わせていたのは二つの理由から。

ひとつは、クロエの力の実測。

もうひとつは、この力を「内輪に知らしめる」ため。

最初の頃、皆がクロエを手放しに受け入れたわけではない。第二王女が傍にいるから表立って言う者がいなかっただけで、見た目が可愛いだけの未知のゴーレムは警戒の対象だった。

だが、結果が積み重なれば話は変わる。

否定的だった者が、表情を変える。

懐疑的だった者が、言葉を飲む。

好意的だった者が、誇らしげに笑う。

そして全員が気づく――この芽姫は「可愛い」だけではない、と。

「一度だけなら偶然」

辺境伯が低い声で言った。指を組み、地図とクロエを交互に見据える。

「二度続いても、偶々だと言い張れる。だが三度、四度……そして五度となれば、これは必然の能力だ。情報戦の道具――いや、戦そのものの形を変える」

言葉の重さが、談話室に落ちた。

辺境伯の視線は、地図の上を滑る。国境線。帝国領。草原。河川。街道。補給線。敵の砲兵が布陣し得る丘。潜伏できる森の縁。すべてが「情報」という形で戦力になることを、彼は骨身に染みて知っている。

「芽姫の存在は、他国に漏らす訳にはいかんな」

クロエは、ただの可愛いマスコットではない。可愛い顔で国家の背骨を支える力を持っている。手に入れたい者が出る。奪おうとする者も出る。最悪、芽姫を巡って戦が起きる。

だからこそ、次の問いは自然だった。

「なあクロエ」

アウローラが声を落とす。無意識に、いつもより真剣なトーンになる。

「クロエが本気で、全力で探索した場合……どこまで解りそうなんだ?」

クロエは首を傾げて……次の瞬間、ぽてぽてと歩き出した。

辺境伯領の枠線を越える。国境線を跨ぐ。帝国側の地図へ入る。

全員の背筋が反射的に固まった。

地図の上では線一本、紙の境目ひとつ。けれど現実では、そこは剣と砲と血で引かれた線だ。越えた瞬間、意味が変わる。

クロエは迷わない。まっすぐ進む。帝国領の要所を通り過ぎ、街道を越え、川を越え――最後に、帝国領の中央に大きく描かれた都市印の前で止まった。

帝国の首都――帝都ヴァリエント。

そこを、ぺし、と叩く。

ぺしぺし、ともう一度。

談話室が、音を失った。

辺境伯夫人が掠れた声で呟く。

「これは……想像以上ですわね。場合によっては、ここから帝国の内情が……丸裸ですか」

夫人は領の後方司令塔だ。帳簿と物資と教育と遺族支援を回す、要塞のもう一つの心臓。だからこそ分かる。距離を無にして情報が取れることの意味を。

兵站が変わる。奇襲が変わる。抑止が変わる。

そして、戦の理屈そのものが変わる。

「……ただし」

辺境伯が低く言った。

「相手に気づかれずに、という前提がある。帝国にも魔導師は居る。探知に反応する仕掛けがあれば、芽姫の視線そのものが「痕跡」になる可能性がある」

セシリアが頷く。

「こちらが見えるなら、向こうからも見返されるかもしれません。帝都を覗くのは……危険です」

アウローラはクロエを見つめた。可愛い顔。何も分かっていない顔――いや、分かっているのに問題視していない顔。どちらとも取れる。

クロエはただ、首を傾げている。自分が示した地点が、今の大人たちを凍らせた理由など知らない、と言いたげに。

辺境伯は深く息を吐き、結論を口にした。

「芽姫の警護は万全の態勢を維持する。最低でも、我らの内の誰かが常に傍に居る必要があるだろう。……この小城の中でさえ油断はできん」

夫人も、セシリアも、アウローラも異論を挟まない。

反対できるほど、これは軽い話ではない。

けれど――その緊迫の中。

クロエは、ふわりとした動きで地図の上に座り込んだ。ちょこん、と。まるで「やり切った」と言わんばかりに。

【~~……】

小さく、満足げな声ならぬ声。

その可愛さが、逆に可笑しかった。

こんな小さなぬいぐるみゴーレムが。

指先一本で帝国を示して。

大人たちが国家の未来を論じている。

最初に笑ったのは、辺境伯夫人だった。喉の奥で、ふふ、と。次いでセシリアが耐えきれず、口元を押さえながら肩を震わせる。アウローラも、息を吐いて笑った。

辺境伯は最初だけ眉をひそめたが、結局、咳払いで誤魔化しながら口の端を上げた。

「……まったく」

呆れたように言いながら、その視線は優しい。

芽姫の力は恐ろしい。

けれど可愛い。

この二つが同居している現実が、今の要塞都市だった。

アウローラはクロエをそっと抱き上げ、胸元に寄せた。クロエは安心したように身体を預ける。

「大丈夫。クロエは絶対に護るからな」

談話室の窓の外では、草原の風が変わらず吹いている。

大河は変わらず流れている。

けれど地図の上には、確かに「芽姫の指」が残した痕跡があった。