軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

・37

「もう、関係のない人たちよ」

心からそう思っていることを伝えると、エーリヒも納得してくれた。

「そうだな」

目の前ではリーノに問い詰められたキリフと父が、見覚えがないと発言している。

「これはクロエ嬢が、失踪当時に身に付けていたものよ。王都の片隅に転がっていた遺体から剥ぎ取って売ったと、スラムの人から聞いたわ」

クロエの持ち物だと知って、キリフも父も、絶望していた。

それは魔女であるクロエが失われてしまったことを残念がるもので、婚約者の、娘の死を悲しむものではなかった。

「私たちの仲間が無残な最後を遂げる原因となった、ふたりの責任を追及します」

リーノがそう言うと、案の定ふたりは騒ぎ出した。

知らなかった。知っていたら、そんなことはしなかった。

そう喚いても、周囲の視線は冷たくなるばかりだ。

たとえクロエが魔女でなかったとしても、婚約者、そして娘を虐待していた事実は変わらない。

アダナーニ王国の国王が下した罰は、身分剥奪の上に、地方への追放だった。

キリフは呆然としたあと、その場に崩れ落ちる。

父は、メルティガル侯爵家の当主ではなくなることを受け入れられず、会場で暴れてとうとう捕縛されてしまった。

メルティガル侯爵家は、兄か異母弟が継ぐのだろうか。

ふたりが連れ出されたあと、国王がパーティの再開を宣言する。

気分を変えるように、明るい音楽が流れ出した。

王女カサンドラが魔力を失い、王子キリフが身分を剥奪された。

さらに、騎士団長であったメルティガル侯爵も、身分剥奪と追放刑を言い渡されている。

きっと誰もが動揺していただろうが、ここはジーナシス王国の魔女の歓迎パーティである。

無理にでも明るく笑うしかない。

リーノは先ほどとは打って変わって、明るい笑顔で周囲の人たちと談笑している。

若い人たちが何人か踊り出し、それを見ていると、エーリヒがクロエに手を差し伸べた。

「せっかく練習したんだ。俺たちも踊らないか?」

「ええ、そうね」

エーリヒがリーノと踊ってカサンドラを挑発する作戦だったが、彼女はそれよりも先に激高してしまったため、ダンスをする機会は訪れなかった。

エーリヒに手を取られて、クロエも会場の真ん中に歩いていく。

練習したので、エーリヒもなかなか様になっている。

むしろエーリヒの容貌なら、何をしてもそれなりに見えるだろう。

(ダンスが楽しいと思ったなんて、エーリヒと踊ってからだわ)

エーリヒにリードされながら、クロエは微笑む。

キリフとは婚約者として何回か踊ったことがあったと思うが、あまりよく思い出せない。きっと記憶に残るほどのことではなかったのだろう。

その後は何事もなく、パーティは無事に終わった。

アダナーニ王国の王族が、ふたりも離脱したこと。

そして、この国に生まれていた本物の魔女の死と、騎士団長であったメルティガル侯爵の身分剥奪と追放は、これから大きな話題になっていくだろう。

さすがにアリーシャも疲れ果てた顔をしていたが、カサンドラとキリフがいなくなったことで、王太子であるジェスタの地位は不動のものとなった。

これからは、国内の改革に力を注げるだろう。

この国の意識改革が、クロエの使命である。

これからも、アリーシャとジェスタに協力するつもりだ。

リーノは病気を治す魔法の研究のため、しばらくこの国に滞在することになった。

子どもの姿になったリーノを見たアリーシャは驚いていたが、この方が可愛いからと言うリーノに同意し、可愛い子ども服をたくさん取り寄せて、リーノとふたりでファッションショーを楽しんでいる。

アリーシャも可愛いものが好きらしく、ふたりはすっかり意気投合してしまった。

そしてリーノはときどき王都のスラムに行き、病気の人たちに魔法を使っているようだ。

スラムの教会で子どもたちの面倒を見ていたトリッドが、リーノの案内役をしている。

リーノが度々訪れるので、スラムも少しずつ綺麗になっていた。

キリフは平民になったあとに地方に追放され、教会に身を寄せているそうだ。

王家に縁の教会らしく、キリフはそれなりに暮らしていると聞く。

処遇が甘いとエーリヒやリーノは怒っていたが、キリフは身分を剥奪されただけでもかなり絶望したと思うので、それ以上は望まない。

静かに暮らせているのならば、それで良いと思っている。

父は身分剥奪に納得できず、投獄された牢でも暴れて、とうとう強制労働所に送られてしまったらしい。

メルティガル侯爵家は兄か異母弟が継ぐと思っていたが、兄は父が身分を剥奪されたと聞き、母とともに地方で隠棲することに決めていた。

異母弟は、父がカサンドラとの結婚を計画していると聞いて、とっくに自分の母と一緒にジーナシス王国に逃げてしまったらしい。

だからメルティガル侯爵家は、父の従兄弟が継ぐことになった。従兄弟は父と違って穏やかな人間らしいので、きっと大丈夫だろう。

兄が母を連れて行ったことも、異母弟がカサンドラを嫌って逃げ出したことにも驚いた。父の計画は、すべて失敗していたようだ。

カサンドラは魔力を失ったことですっかりと憔悴し、王家の離宮で静養しているようだ。もう表舞台に出てくることはないだろう。

たまにエーリヒの名前を呼んで泣いているらしいが、それだけ好きだったのなら、どうして大切にしなかったのだろうと思う。