軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

・21

どうせギルドに行くのなら魔石をいくつか買い取ってもらおうと、肩掛け鞄に入れておく。

何の変哲もない鞄のようだが、実はこの中はアイテムボックスに通じている。

(こういうの、ゲームにあったよね)

そう思って試しにやってみたが、なかなか便利だ。

それに何も知らない人が見れば、鞄から取り出したようにしか見えないだろう。

「水晶もいくつか持っていったほうがいい。その場で作ってみろと言われるかもしれない」

それを見ていたエーリヒが、アドバイスしてくれた。

「……そうね。目の前で、完璧に作って見せるわ」

戦闘モードでそう言うクロエを、エーリヒは笑って宥めてくれる。

「あまり気合を入れすぎて、暴走しないように」

「う、うん。わかっているわ」

魔力を込めすぎて、魔法ギルドで水晶を爆発させたら大変だ。

「気を付けて頑張る」

どんな状況だと笑うエーリヒの姿に、緊張が少しほぐれる。

「早速、登録しに行こう。どちらから行く?」

「エーリヒが先でも大丈夫? 勝手がわからないから、どんな感じなのか見てみたいわ」

「わかった。じゃあ冒険者ギルドから行こうか」

歩調を合わせてゆっくりと歩いてくれるエーリヒと一緒に、冒険者ギルドに向かう。

目的の建物は、王都の中心にあった。

(ここが冒険者ギルドかぁ。うん、イメージ通りね)

ゲームでおなじみの冒険者ギルドは、煉瓦造りの頑丈そうな三階建ての建物だった。

剣と盾を組み合わせたような看板が掲げられ、いかにも歴戦の戦士といった容貌の男が出入りしている。

(何だか雰囲気が怖いなぁ。ゲームとかだと、もっと初心者大歓迎みたいな感じだったけど)

現実では初心者らしき者など皆無で、がっちりとした体形のたくましい男ばかりだ。そんな中で、エーリヒのような優美な見かけの者はかなり目立っている。

しかも女性連れなのでなおさらだ。

(エーリヒ、大丈夫かしら……)

幼い頃から鍛えられ、剣の腕もたしかだと聞いているが、それも騎士としてだ。

こんな荒くれ者のような男達に交じって大丈夫なのか、かなり心配になってきた。

「ねえ、エーリヒ」

無理しなくても大丈夫だからと、告げるつもりだった。

魔石を売るだけで十分暮らしていけるだろうし、エーリヒが怪我でもしたら大変だ。

だが、それを言うよりも先に背後から腕を掴まれる。

「きゃっ」

驚いて振り返ると、おそらく冒険者らしき二人組の男が、値踏みするような視線をクロエに向けている。

「移民の女か。なかなか美人じゃないか」

「冒険者になりたいなら、そんな優男と組むより俺達と行こうぜ。楽に稼がせてやるよ」

うすら笑いを浮かべてそう言う男達に何か言う前に、エーリヒが割り込んできた。

「クロエを離せ」

「何だと。てめえ、俺達に……」

歯向かうのか。もしくは逆らうのか、と言いたかったのだろう。

だが男の言葉は、途中で悲鳴に変わった。

「い、いてえっ」

クロエの腕を掴んでいた男の手が緩んだ。

その隙に急いで逃げ出し、エーリヒの傍に駆け寄る。

それから振り返って何が起こったのかたしかめると、エーリヒがその男の腕を掴んでいた。

ただそれだけなのに、男は真っ赤な顔で悲鳴を上げている。

男の腕は丸太のように太く、エーリヒの手のひらでは掴み切れないほどだ。

それなのに男は情けない悲鳴を上げていた。

エーリヒの細い腕のどこに、そんな力があったのだろう。

「クロエ、大丈夫?」

「え、うん。もちろん大丈夫」

やや呆然としながら頷くと、エーリヒはにこりと笑った。

「じゃあ行こうか」

そう言うと、男の腕から手を離した。

男は腕を抑えたまま蹲り、彼の相棒らしき男は呆然とこちらを見ていた。

そんな男達をもう顧みることもなく、エーリヒがクロエの手を取って歩き出すと、自然と周囲の人達が避けていく。

先ほどまでこちらを侮り、値踏みするような視線を向けてきたのとは大違いだ。

ふたりのことを、世間知らずの獲物が来たとでも思っていたのだろう。

自由に生きられるという冒険者に憧れ、彼らのような者達の餌食になった人が、今までもたくさんいたのかもしれない。

たしかに自由ではあるが、弱肉強食の世界でもある。

(それにしても……)

クロエは自分の手を引いて歩くエーリヒを見て思う。

見た目に反した力に、あの父が認めたほどの剣の腕を持っている。自分の魔法の力もかなりチートだと思ったが、彼もそれに近いのではないか。

(何だかすごいことになりそうな……)

国籍を得るどころか、別の意味で目立ってしまうかもしれない。

(まぁ、いいか。私達が、誰も手が出せないくらいの実力者になればいい話だもの)

今から心配しても仕方がないと、先を歩くエーリヒに続いてギルドの扉をくぐった。