軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

36話 学園での過ごし方。

「今は教室で学園の事や、今日一日の流れを説明されているはずだ。君達は先に色々と決めないといけない事が多いので、ここに来て貰った。」

そう説明するのは、ヨリ先生だ。

「午後からは、選択教科を数個選んで貰う。それに合わせて関わりを持たない方が良い者からは先に選択教科を聞いてあるので避ける事が出来る。」

(イザベルとエイミーや側近とは別にしてくれるって事かしら?それなら嬉しいけど、そんな簡単に優遇される訳ないし。それは無いか……。)

「優遇されるから聞いてるんだぞ。エリアナ。」

エルランドが呆れた視線を向けながら、エリアナに声をかけた。

「んにゃっ?!」

エリアナの言葉にならない声に、学長室が笑いに包まれる。

「なんて声をだすんですか……ククッ…。また心の声が…漏れてましたよ。」

セドリックが笑いながら状況を説明してくれた。

エリアナは顔を真っ赤にし、両手で顔を覆うと俯いてしまった。

「ククッ…。ふぅー。選択教科…ですよね。私は一学年の時は学園に通う予定では無かったので適当に決めましたが、リアはきちんと学びたい事を学んで下さいね。リアに合わせて私も決めますから。」

セドリックは笑いながら話しかける。

エリアナは顔をあげ、未だにニヤニヤするセドリックを睨んだ。

が、効果はある筈がない……。

テーブルには選択教科が書かれた紙が置かれていた。

エリアナは手に取り読み始める。

(選択教科が沢山あるのは知っていたけど、本当に多いわね。)

「先に伝えた方が決めやすいだろう。」

と、宰相が胸から封書を出した。

「これはエリアナ嬢が選択しない方が良い教科が書いてある。」

宰相はそう言うと、エリアナに封書を渡した。

セドリックに視線を向けると、頷いてくれた。

丁寧に封書を開けたエリアナの目が驚いて見開いている。

「有難いですが……。これを私が読んで良いのでしょうか……。」

書かれている内容に驚いてしまった。

(後でセドと話し合わないと……。)

「その封書は陛下からです。王妃様の事。それに母君であるエリザ夫人への謝罪も含まれています。それを存分に使って頂きたい。そしてアーノルド殿下を正しき道に進めるように。とも、仰っておいでです。」

宰相の言葉を聞いたエリアナは、顔面蒼白になってしまう。

(殿下を正しき道にって。意味が解らないわよっ!!)

心の中で悪態をつくエリアナだが、引きつる顔をなんとか戻し小さく微笑み頷いた。

「選択教科は、魔術科と騎士科と領地経営科……ですかね。」

エリアナが希望する科目を伝える。

「あ!騎士科はパトリック様がいますね。どうしましょう。でも、騎士科は受けたいな……。」

エリアナは封書の紙を確認し、パトリックの名前が騎士科にあるのを残念に思っていた。

落ち込むエリアナに、横から声がかかる。

「エリアナ嬢。大丈夫ですよ。パトリックは騎士科の学生は弱いからと、騎士科には全く来ていません。むしろ、エイミー嬢といたいが為に貴族科に入り浸っていますからね。」

そう教えてくれた。

魔法科には、魔法師団長子息エアハルトがいる。

聖典科には、神官長子息のカール。

貴族科と外国科には全員が名を連ねる。

エリアナが受けたい教科では無かったので、とりあえず安堵する。

「選択教科は魔術科、騎士科、領地経営科で良いかな?」

ヨリの言葉に、エリアナが「お願いします。」と、返事をする。

「午後から行われるもう一つの事は、魔力測定です。今年からは属性の数を隠す事は出来なくなりました。魔力量や属性、冒険者ランクを測定します。

通常は測定すると口頭で本人に伝えるのですが、それを行うと二人が大変な目にあいます。

今年からは、測定をし記録をするのみ。

口頭での通達はしない。

自身の魔力量や属性を知りたければ、届けを出し書面にて渡す事にする。」

ヨリ先生の説明は有難いが、私達のせいで……。と、エリアナは申し訳なく思う。

少しだけションボリするエリアナに、宰相が口を出した。

「エリアナ嬢は、自分のせいで通常行われていた事が変更されて申し訳なく思っていますか?」

宰相の問いかけに、

「はい……。属性を隠したい人もいるでしょうが、口頭での通達の方が早いです。

それに、書面をおこすのは手間がかかります。それを考えると……。」

益々ションボリするエリアナに、宰相がクスリと笑う。

「エリアナ嬢は噂通り、真面目で思い遣りのある人物のようです。

大丈夫ですよ。属性を確認出来れば良いだけの話で、それ以外に学園や国にとっては大事では無いのですから。

複数の属性を持つ者を護る為の測定です。それ以外に意味はありませんから。」

つまり……。

(国が囲い込みたい者を見付ける為の測定だと?宰相様はそう言いたいのかしら?)

眉間に皺を寄せ、考え込むエリアナに。

「国が膨大な魔力持ちや複数の属性持ちに対して、国に何かあれば助力してもらう交換条件ですね。

膨大な魔力持ちや複数属性持ちは狙われやすいのです。一個人で対処出来ない相手となる場合が多い。

平民や下位貴族は高位の者には逆らえない。自身を守る為でもあります。」

セドリックの説明にハッとなる。

ここは前世のような優しい世界ではないのだ。

絶対的身分制度に雁字搦めの世界なのだ。

ならば、自分が口にする言葉は一つしかない。

「色々と対応して頂き、ありがとうございます。」

と、座りながらではあるが学長や宰相達に頭を下げた。

「やはり良い子だな。ギルベルトとエリザ夫人の教育が良いようだな。」

宰相の言葉に、エリアナは嬉しくなり満面の笑みでニッコリ微笑んだ。

学長達ですら、エリアナの微笑みに魅入られる。

なんと、可愛らしいのだ!と。

そんな光景にセドリックがうんざり顔で、エリアナを引き寄せると胸元に顔を埋めさせ隠してしまった。

「セドリック殿は相変わらずだな。」

クスリと笑いエルランドがセドリックに声をかけた。

「毎度毎度。うんざりです。」

セドリックのため息交じりの返事に、エルランドが笑う。

「新学生が落ち着き長期休暇明けから、ダンジョンの授業が始まる。

二人が潜った後にAランクのヤヌス達に再度潜って貰った。報告には、通常の学園専用のダンジョンより強くなっているとあった。

以前はCランクでも行けたが、B以上でなければ難しいと結論が出た。

魔力測定で話すが、長期休暇中にランク上げをするように通達する事になる。

それに、ダンジョンが変化した理由は解らない。ダンジョンコアを扱える俺でも、ダンジョンの強さを下げる事は出来ない。

なので、エリアナとセドリックには各学年が潜る際の補助を頼む事になる。」

そんな話は以前なんとなく聞いていた。

「二人は各エリアの最終討伐に手を出してはならない。手を出した時点でその者達の攻略は無効とされる。

まぁー、雑魚をやって手助けしたり、人命救助を優先する事になるな。」

エルランドの説明にエリアナとセドリックが頷いた。

「殿下は科目を決めているのですか?」

セドリックが黙って座る殿下に声をかけた。

「私はセドリックと同じ選択教科になる。」

ニッコリ微笑んで返事をした。

殿下に懐かれたセドリックは、小さくため息を吐くと宰相に話しかける。

「陛下からの命はなんと?」

セドリックの意味不明の質問に、エリアナがキョトンとしている。

「例の一行を殿下に近づけない事。ですかね?」

「はぁー……。無理でしょうね……。」

セドリックが深いため息を吐いた。

「転生者であるあの女達は必ず殿下に接近しますよ?しかも、一人は殿下の婚約者でしょう。無理があり過ぎる。」

セドリックの言葉に、殿下が提案をする。

「そこでだ。エリアナ嬢とセドリックを生徒会の役員にしたい。二人は名前だけの在籍だから、仕事を振ることはない。それに、あの伯爵姉妹も生徒会にいれるよ。そうすれば、身を守る事が出来る。

学園において、生徒会は絶対的な存在だからな。」

殿下の言葉を受け、セドリックは

「側近の入れ替えですね。」

殿下を見つめそう声をかけた。

殿下はそれに頷いた。

「謹慎されている間に、彼らは改心する事もなく側近としても、生徒会の役員としても何も動かなかった。

以前の私は流されるまま、皆の言葉を受け入れていた。

だが、両陛下の話を聞き我が身の愚かさを痛感したんだ。」

殿下は苦い顔をしたまま話を続ける。

「国を背負う者として一番してはいけない、他者からの意見で物事を見て、決断していた事を。

母上からの話で理解したんだ。」

母上とは王妃様の事。

エリアナは王妃様に喧嘩を売っていた事を思い出した。

エリアナが殿下の話でビクッと肩を揺らしたが、

「エリアナ嬢は何も気にされる必要はありません。陛下は逆に感謝していましたよ?エリアナ嬢は王妃様を守ったのですから。」

宰相の話す内容が理解出来ないが、セドリックが小さな声で「後で説明しますね。」

そう言ってくれた。

「私は王太子として真に学び直す事にしたんだ。それには、セドリックやエリアナ嬢と共に学ぶ事が一番だと陛下を始め全員がそう言っている。私もそう考えている。」

セドリックもエリアナも包囲網からは逃げれないと理解をし、全てを受け入れた。

「エリアナ君とセドリック君の学園での過ごし方は、一行を徹底的に避けてくれて良い。それに関してのいざこざは許容する。」

学園長の言葉で、話が纏まった。

エリアナとセドリックに殿下は頭を下げ、部屋を退室した。

一緒に付いてきたのはヨリ先生だ。

「保健室にいる生徒に話を聞きたいので、一緒に向かいます。」

そう言うと、ヨリ先生は一緒に保健室へと向かう。

保健室に向かう間に、殿下が学園の中の説明をしてくれた。

(あの人達と一緒にいない殿下は、どちらかと言うと有能なのね。好感度が上がるわね。)

エリアナは心の声を出した為、セドリックからの強い嫉妬の眼差しを受ける事になる。

帰ってからのセドリックが怖いが、殿下への感想は事実だから仕方ないのだ。

殿下が保健室の扉をノックし、中へと入って行く。

「誰も来なかったかい?」

殿下の声かけに、アーネットが「誰も来なかったです。」

そう返事をした。

「アーネット君とメレニー君は、選択教科は何を専攻しているかな?」

ヨリ先生が二学年のアーネットとメレニーに問いかけた。

(打たれた令嬢は、メレニー様と言うのね。)

エリアナはメレニーの名前を初めて知った。

「私は貴族科に淑女科と領地経営科です。」

メレニーが答えた。

「私は領地経営科と貴族科になります。」

アーネットが答えた。

二人の答えに、ヨリ先生が

「相談なんだけど、今学年から選択教科を変更してもらいたいのだが。どうだろう。」

その言葉に

「イザベル様から私達を離した方が良いとの判断でしょうか。」

メレニーがヨリ先生に質問返しをした。

「ぶっちゃけて話すなら、そうだ。

君達三人は、イザベル君達から敵視される可能性が高い。彼女は公爵令嬢であり転生者でもある。それを周囲に振りかざせば、君達三人は潰されてしまう。

それを守れるのは、エリアナ君とセドリック君しかいないんだよ。」

アーネットとケイシーは、エリアナが国にとって重要な存在である予感はあった。

だが、メレニーはそれを知らない。

「解りました。選択教科の変更を受け入れます。」

メレニーは何も聞く事もなく、あっさりと了承したのだ。

「え!?そんなアッサリでいいの?」

逆にエリアナが焦ってしまう。

「私はこれでもトリス侯爵家の後継です。エリアナ様が子爵家の後継である事もSランクの冒険者であり、領地の為に尽くしている事も知っています。

今日お会いするまで、イザベル様から色々聞いていたので嫌っていました。ですが全く違う為人ですし、私は自身の間違いに気が付きました。

ならば、誰に付いていくのが侯爵家の為になるかを計算しただけです。気に病まないで下さい。」

メレニーの気遣いに、「ありがとうございます。」と、エリアナは笑顔でお礼を伝えた。

メレニーは可愛らしい笑顔に頬を赤らめた。

「ケイシー君は何か受けたい科目があったかい?」

ヨリ先生は新学生のケイシーに問いかけた。

「アーリン・トリスと違うなら、科目は何でも良かったので決めていません。」

そう。あのトリス侯爵家の令嬢も、私達と同じ新学生として入学していた。

「そうか……ならば、エリアナ君と同じ選択教科で構わないか?」

ヨリ先生の出した答えにケイシーは了承した。

「エリアナ君の選択教科は、魔術科と騎士科と領地経営科だよ。騎士科は無理そうなら、変更も出来るから。」

ヨリ先生がケイシーに伝えた。

「ダンジョン攻略の為に騎士科は少し考えていたので、逆に有難いです。」

意外や意外。女性三人は、騎士科を喜んで受け入れてくれた。

「エリアナ様を見ていて、領地を守る為には知識だけではなく武術も必要だと考えました。魔物に出くわした時に魔力が尽きていたら?領民がいたら?武術が出来れば守る範囲も広がるのだと、知る事が出来ましたもの。」

メレニーとアーネットは後継として、きちんと領地領民の事を考えていた。

「ありがとうございます。メレニー様とよんでも?私の事はエリアナと敬称無しでお呼び下さい。」

エリアナの申し出に、

「私の事もメレニーと。アーネット様達も敬称無しで呼び合いたいですわ!」

エリアナは、「友達が増えたわ!」

と、大喜び。

「友達が増えて良かったですね。リア。

ところで、殿下が三人に伝えたい事があるようですよ?」

と、殿下が声をかけやすいように話を振る。

「そうだった。君達三人を生徒会の役員に推薦したい。イザベル嬢達から身を守る為にも、役員になった方が良いし三人の学力は上位だから文句も出ないだろう。」

殿下は学力まで認識していた。

やはり有能なのよねー。と、エリアナはちゃんと心の中で呟いた。

「生徒会は今、少し歪な状態なんだ。それはまた今度説明する。受けて貰いたいが、どうだろう?」

殿下の誘いに、三人は喜んで受け入れた。

「生徒会の役員なんて、名誉を貰ったも同然。両親が喜ぶもの!」

と、アーネットとケイシーは手を取り合い喜んでいた。

「では選択教科も生徒会の参加も決まったね。そろそろ魔力測定が始まる。もう少ししたら、移動してくれ。殿下が案内してくれるから。

私は測定の会場に先に行っているが、何か問題があれば直ぐに教えてくれ。」

そう告げると保健室を出て行った。

エリアナが気になった事をアーネットに問いかけた。

「アーネット。ラビはどこに行ったの?」

そう。保健室に入ってから、ラビを見かけていない。話の妨げにならないようにアーネット達に聞かなかったのだ。

「ラビちゃんは寝てるわよ?」

ケイシーがベッドの方を指さす。

エリアナが近づき布団をそっとめくる。ラビは保健室のベッドの布団の中でスヤスヤ寝ていた……。

エリアナは地を這うような低い声で、

「ラービーっ……。」

そう呼びかけた。

ラビは天井近くまで跳ね上がりながら、起きた……。

驚き過ぎて跳び過ぎたのだ。

エリアナはラビの両脇に手を入れて持ち上げ、視線を合わせる。小さな声で。

「神様?寝るのが役目ですかね?」

そう耳元で囁いた。

『保健室に近づけない結界を張っていたから良いかなぁー?って……。』

神様は視線を泳がし、そう説明する。

「結界を張ってくれた事は感謝します。」

そう言うと、エリアナはラビを抱えて戻って行った。

「もう少ししたら移動しようか。」

殿下の言葉に、皆で移動の準備を始めた。

(魔力測定か……。)

ギフトとスキルは冒険者ギルドしか知らない。

魔力測定で全属性持ちも、魔力量が最大値なのも知られずに済む。

大人達の心遣いに感謝し、ラビを抱えたまま測定が行われる会場へと向かった。