軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

34話 とうとう始まりました?

アーネットとケイシーが子爵家に到着したのは、学園に入学する前日だった。

トリス侯爵家から、何やら夫人に報告があったらしい。

詳しい話はセリーヌ夫人と会う時にする事にした。

子爵家に到着した二人をエリアナとセドリックが出迎え、部屋に案内し夕食を一緒にする。

セドリックが子爵家に滞在している事に驚いていたが、婿入りする為父から執務の師事を仰いでいる事を説明すると納得していた。

明日はいよいよ学園に入学となる。

何も起こらない事を祈り、不安な気持ちを抱えたままエリアナは早目に就寝した。

朝日が窓から射し込み、晴天を告げている。

エリアナは真新しい制服に身を包み、姿見の前に立っていた。

(多分似合ってる……?前世で憧れたブレザータイプの制服だわ。)

前世で通った学校は、中学校はセーラー服。高校は私服だった。

街で見るブレザーの制服に、エリアナは憧れていたのだ。

エリアナは姿見の前で、スカートを広げてクルクル回る。

首元を飾るのは、赤いリボン。

一学年は赤色のリボン。

二学年は青色のリボン。

三学年は紫色のリボン。

「スカートの丈が長いのは仕方ないか…。異世界あるあるよね。」

前世で読んだ異世界の本に書かれていた話と同様に、この世界も女性が脚を見せることはない。

身支度を終え部屋を出ると、ブレザーの制服を着たセドリックがいた。

赤いネクタイが良く似合う。

貴族然りの衣装より、なんだか若く見える。

更に格好良さを増したセドリックは、エリアナの意識を飛ばしかけてしまうほどだった。

「おはよう。セド。」

笑顔で伝えるエリアナの挨拶に、

「おはよう。リア。制服が似合っていますね。とても可愛らしいですよ。」

セドリックが笑顔でエスコートの為に左手を差し出す。

エリアナは手を添えながら、

「セドも似合ってますよ。格好良さが倍増してます!」

お互いを褒め合いながら、ダイニングに向かう。

そこには、アーネットとケイシー。

それに、両親も席に着いていた。

「おはようございます。遅くなりました。」

エリアナとセドリックが席に着き、朝食が始まる。

「エリアナの制服姿を初めて見たが、とても似合っているよ。もう学園に入る年齢になったのだな。」

ギルバートがエリアナを見ながら、感慨深げに声をかける。

「学園で何があろうと、私達はエリアナの味方なのを絶対に忘れないでくれ。」

父の温かく強い視線と、母の優しく見守る視線にエリアナは姿勢を正した。

「ありがとうございます。私には心強い味方が沢山います。子爵家の後継として、恥じないように学び、学園生活を有意義なものにしたいと思います。」

エリアナの決意の言葉に、ギルバートが頷いた。

学園に入れば物語が始まるであろう……。

両親はそれを心配しているのだ。

「学年が違いますが、出来る限り一緒にいてリアを守ります。」

セドリックが子爵夫妻にそう告げた。

アーネットとケイシーは、学園に入るだけなのに物々しい緊張感にそわそわしている。

「子爵令嬢の婚約者が公爵家のセドリックでしょう?両親は私に学園で何か嫌な事があるのではと、心配しているのよ。」

エリアナはアーネット達にそう伝えた。

物語は別として、セドリックを狙う令嬢達がいるであろう事は事実だからだ。

「そうよね。高位貴族の令嬢方には気をつけた方が良いもの。」

アーネット達は、エリアナの説明で納得してくれたようだ。

四人で馬車に乗り込む。

少し経ったところで、兎姿の神様がエリアナの鞄から出て来た。

「神……ッじゃない!ラビっ!何で鞄にいるのよー!」

ラビ(神様)の脇に手を差し込み持ち上げた。

プラリプラリとした格好で、エリアナを無視している。

言葉が解りませんよ?

と、言わんばかりの無視……。

「ラビちゃんは、エリアナと離れたくなかったのね!」

アーネットがそう言いながら、ラビの頭をなでなでする。

エリアナとアーネット達とは、お互い敬称無しで呼び合うようになっていた。

「ペットの持ち込みなんて、駄目よね……。でも、着いて来ちゃったからなぁー。」

頭を悩ますエリアナに、セドリックがある提案をする。

「ラビを冒険者のエリアナの従魔としましょう。Sランクの冒険者が、従魔を連れている事は偶にありますから。多分大丈夫だと思いますよ。そもそも、Sランクの者に意見する事はないですから。」

確かにテイマーや高ランクの人が従魔を連れている姿を見た事はあるけども……。

エリアナはラビに視線を向け、ポツリと

「弱そう。」

ついつい本音を呟いてしまった。

ラビはアーネット達に可愛がられながら、エリアナにジト目を向けた。

エリアナは、また心の声を漏らした事に気が付くと慌てて誤解を解こうとラビの頭を撫でながら伝える。

「ラビはとても可愛い兎だから、獰猛な従魔には見えないでしょう?」

慌てて説明するが、ラビのジト目は続いている。

「そうですね。ラビのその可愛さを利用しましょう。リアの魔力を抑える為に連れていると。Sランクでは、学生相手では幼子同然ですからね。その理由ならば、生徒達も納得するでしょう。」

セドリックの提案の全てを採用して話は纏まった。

しかし、ラビからのジト目は解除されないまま……。

(私が悪いのかしら?)

何となくモヤモヤするが、もうすぐ学園に到着する。エリアナは気持ちを切り替え引き締めた。

馬車がゆっくりとなり、正門に到着する。

扉が開くと、セドリックが先に降りてアーネット達に手を差し出し先に降ろした。

馬車の周りで騒ぐ生徒達の声が聞こえる。

公爵家のセドリックが現れたからだ。

セドリックは気にせず、最後にエリアナを降ろした、。

セドリックと二人が立ち並んだ瞬間、黄色の声が上がった。

「エリアナ様よ!」

「噂は聞いていたけれど、美しい方よね。」

「セドリック様とお似合いよ!」

「夜会のお姿はとても素敵でしたわよね。」

と、キャッキャと好意の言葉や声があちこちから聞こえた。

(え?私?)

黄色の声は、エリアナの名前を告げている。

エリアナの腰にセドリックが手を回そうとした瞬間、ラビが正門の中に飛んで行き走り出したのだ。

セドリックが慌てて走ってラビを追いかけた。

すると、セドリックのいた場所に誰かが滑り込んで来て、そのままエリアナの目の前に倒れ込んだ。

展開の速さに、周りの思考が暫し停止していた。

「いったぁ~い。セドリック様が受け止めてくれなかったわ……。」

小さな声で呟くその声の主は、ヒロインのエイミーだった。

エリアナ達は何故彼女が目の前で倒れているのか解らず、エイミーをじっと眺めていた。

視線に気が付いたエイミーが、態とらしく怯え震え始めた。

「申し訳ありません。男爵に過ぎない私が目の前にいるのは、不愉快ですよね……。直ぐに立ち去りますので、魔法で攻撃だけはしないで下さい……。」

怯えた表情と泣きそうな声をだし、エリアナへと頭を下げていた。

周りがそれを見て、ざわざわし始めたのだ。

夜会での真実を知る者は、エイミー嬢の行動に「またか」と、鬱陶しさを隠していなかった。

だが、エリアナと同じ新入生はあの夜会に参加している者が殆どいなかったのだ。

「なぁー。エリアナ嬢って噂と違うんじゃないか?あの令嬢があんなに怯えるなんて、おかしいだろ?」

一人の学生が、そう口にした。

「リボンが青色だわ。先輩に魔法で攻撃するなんて……。」

「魔法で攻撃って言ってたわよ?以前、攻撃されたからあんなに怯えてるのかしら?」

上の学年の生徒達は、エリアナ達相手に変に関わる事を当主から禁止されていた。

エイミーが現れたと同時に、関わりを避ける為に早々に学園へと入ってしまった。

今この場所には、あの夜会の真実を知らない者しか残っていなかった……。

(嵌められたのかしら。)

エリアナが周りの騒ぐ声に耳を貸さず、セドリックに視線を向けた。

視線の先のセドリックは、右腕にラビを抱き左腕を少し広げてエリアナが来るのを待っていた。

エリアナは、エイミーや周りを無視して前に一歩踏み出した。

踏み出したと同時に、背後から聞き覚えのある声で話しかけられた。

「あら。またエリアナ様はエイミー様を攻撃したのですか?」

そう口にしたのは、公爵令嬢のイザベルだった。

周りは、

「やっぱり。」「エリアナ様って酷い人なのね!」

「イザベル様がまたって仰ったわ!」

野次馬から、エリアナを批判する声が上がり始めた。

「おはようございます。イザベル様。

エイミー様は勝手に転ばれたのです。私には関わり無い事です。」

凛とした姿でそう答えるエリアナは、セドリックの元へと向かう。

アーネットとケイシーは、エリアナを信じているのでエリアナの後を追った。

エイミー嬢の怯えた態度にイザベル公爵令嬢の言葉……。

新入生の半数が、エリアナに対して不快な感情を持ったのだった。

セドリックの前まで来ると、エリアナをそっと引き寄せ抱きしめた。

「大丈夫ですよ。リア?私達がついています。」

セドリックが優しく声をかけ励ます。

「私達はエリアナを信じているもの!あの人達はおかしいわ!

私達の恩人のエリアナを批判するなんて、絶対に許さない!!」

ケイシーがプリプリ怒り、エイミーとイザベルへの批判を口にした。

「大丈夫。何があっても負けないもの。」

ニッコリ微笑み

「ありがとうセド。それに、アーネットとケイシーも。」

エリアナは感謝を伝え、入学式のある講堂へと向かい正門を去って行った。

残された新入生は、余りにも堂々と立ち去るエリアナ達に呆然としていた。

「何をしている。早く新入生は講堂に行きなさい!」

正門の前に集まる人垣を前に声を張ったのは、アーノルド殿下だった。

「式に遅れてしまいます。急ぎ向かいなさい。」

殿下の言葉に、新入生達は急いで講堂の方へと向かった。

「ところで……。」

殿下が視線を向ける先には、地面に座り込んだままのエイミーと隣に立つイザベルを見た。

「エリアナ嬢に関わるな。そう言われているはずだが?」

殿下が確認の為に、二人に問いかけた。

「言われたけど、あの人は私を魔法で攻撃したのよ?そんな酷い人がチヤホヤされるなんて、許せないじゃない!」

エイミーは頬を膨らませ、殿下に答えた。

「エリアナ様は、学年も爵位も下ですわ。私が何をしようと、殿下に言われる筋合いはありませんことよ?」

イザベルも反論の意見を殿下に伝えた。

殿下は、深くため息を吐くと

「何があっても私は関与しない。その事を忘れないように。自分の行動に責任を持て。」

そう言い捨てる様に話すと、用はないとばかりに二人を置いて去って行った。

エイミーとイザベルは、呆然としながら立ち去ったアーノルド殿下の背を見つめていた。

呆然としていると。

「イザベル嬢。式に遅れますよ?

って、エイミーはどうして地面に座り込んでいるのですか!」

エイミーが地面に座り込んでいる事に気が付いたパトリックが急いでエイミーを立たせた。

「エリアナ様が……。」

その一言だけを口にした。

「またあの女か!!」

アーノルド殿下の側近達は、エリアナに対して怒りを持ってしまった。

エイミーはその様子に、顔を俯かせた。

側近達はエリアナに何かをされ、気落ちしていると勘違いをしてしまう。

エイミーが俯いたのは、笑いを堪える為だった。

(これで一先ずは何とかなったわね。)

エイミーは俯きながら、ほくそ笑んでいた……。

式が始まりる前に、エリアナに敵意を持つ者が出来た事を喜ぶエイミーとイザベル。

周りがどんどん騒がしくなりそうな気配……。

エリアナの学園生活はまだ始まってはいないのだ……。