軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

31話 神様は根に持つタイプ

エリアナの目の前でブーブー文句を言っている子供は、この世界を創る神様だ。

神様は自身の好きな物語に寄せて、世界を創り変えているらしい。

そんな凄い事をする神様が、おにぎりが食べたいとかお茶会の約束を破ったとか小さな事で文句を言っているのだ。

『夜会が終わったら、お茶会してくれるって約束したじゃないか!おにぎりも作ってくれるって。絶対、絶対だよって言ったよね?約束したよね!!』

神様はしつこく文句を言ってくる⋯⋯。

忘れていたエリアナ達は、神様に強く出れない⋯⋯。

しかし、エリアナは神様を扱うのが上手いのだ。

「忘れてはいないわよ?私達も、お茶会を楽しみにしていたもの!

ただ、人の命が関わるから急がないといけない。私は薬草で人を助けたいの。私の夢を神さまも知っているでしょう?

だから、お友達のお父様を早く治したかったのよ⋯⋯。」

エリアナは悲しそうに、申し訳なさそうに神様に伝えてみる。

神様は雷を受けたかのように、ピシリと固まったまま動かない⋯⋯。

「神様?大丈夫?」

エリアナが神様をツンツンすると、ハッと我に返ってくれた。

『そうだった⋯⋯。エリアナの夢は、薬草で人を救う事だったよね。

僕は自分の事ばかりだった⋯⋯。』

神様は、めちゃめちゃ落ち込んでしまった。

頭をガックリと、下げてしまった。

(神様は全く悪くないのに、落ち込ませてしまったわ⋯⋯。)

エリアナは、どうしようとセドリックに視線を向けた。

「神様も一緒に行きますか?時間があれば、あちらで作りましょう。お米を持って行って具材はあちらで調達すれば良いですし⋯⋯。姿を隠せば、一緒に行けますよね?」

セドリックが神様を誘ってみる。

エリアナもコクコク頷き、両手を組み神様からの返事を待った。

神様は何やら考えている⋯⋯。

『一緒に行くよ!姿を隠すより、変える方が良いから!』

と、神様が口にした瞬間。

目の前に、真っ白の毛足の長い兎が宙に浮いている。

耳は長く垂れて、瞳はブルートパーズの色だ。

エリアナはカバリと兎(神様)を抱きしめた。

「可愛い!ふわふわ!」

頰をスリスリして、モフモフを堪能する。

セドリックは顔を引き攣らせ、兎をエリアナから没収した。

「浮気ですか?リア。神様は子供でも男神ですよ?男性に抱きつくのですか?」

セドリックは首を傾げ、真顔で聞いてきた。

「えっと⋯⋯。」

エリアナは視線を一旦逸らすが、腑に落ちない⋯⋯。

「神様が男神なのを忘れていたけれど、兎のモフモフを堪能したいのは仕方ないと思います!モフモフに姿を変えた、神様が一番悪いわ!」

ビシッと神さまに人差し指を向けた。

その姿にセドリックがお腹を抱えて笑い出した。

エリアナは人差し指を向けたまま、キョトンとしている。

「冗談ですよ。半分ね。」

(半分は本気ですか⋯⋯。)

「とりあえず、神様はリアのペットとしましょう。飼い始めたばかりで離れたがらないので連れて来た。と、しましょうか。神様は絶対に話さないように気をつけて下さいね。」

セドリックの念押しに神様は了承した。

伯爵家でおにぎりを作る機会があるかは解らないけど、機会があれば絶対に作ると約束をさせられた。

就寝時間となり神様はエリアナと一緒に寝ようと寝台に潜り込んだ。

だが、セドリックに見つかりお説教をされ、神様はセドリックの部屋に連行されて行った。

翌朝、神様を部屋に残し朝食をとりにダイニングへ向かう。

セドリックと食事をしていると両親がやって来た。

挨拶をし、今日から伯爵家に向かう事を再度伝えた。

「気をつけて行くんだよ。伯爵様が回復する事を祈るが、エリアナもセドリック殿も無理はしないようにね。」

父がエリアナに優しく声をかける。

どれくらいの時間がかかるかは解らないが、やれるだけやってみようと思う。

朝食後荷物を確認し、喫茶店へと向かう。

お店の前にはアーネットとケイシーが待っていた。

「おはようございます。」

エリアナが挨拶すると、アーネットとケイシーも挨拶を返してくれる。

「おはようございます。エリアナ様、セドリック様。今日は父の為に、ありがとうございます。」

アーネットとケイシーが頭を下げてお礼を伝える。

「頭を下げないで!友達を助けたいと思うのは、当たり前でしょう?」

エリアナはアーネットとケイシーの手を取り、そう伝えた。

「友達と言って貰えるなんて⋯⋯。」

ケイシーは涙目でエリアナを見る。

フィデラ夫人のせいで、彼女達は貴族達から仲間外れにあっている。

侯爵家のお金を使い込むとか、娘を虐めるとか⋯⋯。

全部自分達がして来た事を、社交界では逆の話としているのだ。

思い出すと腹も立つが、仕方がない。

今は大人しくする事を選んだのだから。

伯爵家を救わない限り、侯爵家からは帰れない。

(よし!頑張るわ!)

エリアナは気合を入れなおし、ケイシーを優しく抱きしめる。

「伯爵様を助けれるかは、まだ解らない。でも、やれるだけやってみようと思うわ。」

四人はセドリックが用意した馬車に乗り込む。伯爵領には夕刻前には着く予定だ。

馬車に乗り込むと、エリアナが持つ籠から兎が顔を出した。

「か、可愛いです!」

アーネットとケイシーが可愛いを連呼する。満更ではない神様は、鼻をピクピクさせアーシアの膝に飛び乗った。

「エリアナ様⋯⋯兎さんを撫でても宜しいですか?」

アーネットがエリアナに許可をとる。

「大丈夫よ。好きに触ってね。」

エリアナから許可を貰うと、二人は兎に夢中になる。

「この子のお名前を聞いても?」

アーネットから名前を聞かれたエリアナだが、名前を考えてなどいなかった。

兎は神様なので、神様としか呼んでなかったからだ⋯⋯。

「ら、ラビよ?」

エリアナは咄嗟に浮かんだ、ラビットを捩り名前をつけた。

「ラビちゃんですね。可愛い名前です。」

エリアナは何とかばれずに名前をつけれた事にホッとした。

途中の街で昼食を取り、午後からは伯爵様の体調を詳しく聞く。

伯爵様は小さな頃から体調を崩す事があったらしい。

10年程前に高熱を出してから、体調が悪化したそうだ。

神殿から神官が来て治療魔法をしてくれるが、体調は悪くなるばかりでここ数年は治療魔法を行っていないと。

「体調が悪い時は、高熱に体の痛みが一番酷いそうです。定期的にその症状があるみたいです。」

アーネットから伯爵の病状の説明を聞くが、定期的な病気にエリアナが浮かべた病気は当て嵌まらない。

(前世のお医者様なら、何の病名か解ったのかしら⋯⋯。)

エリアナは考えても今は仕方ないと、伯爵家に着くまでは考えるのを止めた。

日が暮れる前に伯爵家に到着する。

玄関には、夫人のメイリー様がいた。

「遠いところを態々お越し下さり、ありがとうございます。メイリーと申します。」

夫人は、エリアナとセドリックに挨拶をする。

「セドリック・ハーマンです。こちらは婚約者のエリアナ・カーマイン子爵令嬢です。」

身分の高いセドリックが挨拶をし、エリアナを紹介する。

「エリアナと申します。アーネット様とケイシー様には仲良くさせて頂いております。」

メイリー夫人は皆をリビングに案内する。

「当主である夫は、ご存知の様に床に就いたままです。アーシアから、病気を治療出来るかもと聞いております。」

メイリー夫人は顔には出さないが、手を強く握り込んでいる。

期待なのか、不安なのか⋯⋯。感情を制御しているようだった。

「詳しくは話せませんが、私はあるスキルを持っています。それを使えば改善出来るのではと考えています。」

エリアナの言葉に、夫人の手が更にギュッと握られた⋯⋯。

「到着早々で申し訳ありませんが、伯爵様と対面させて頂いて宜しいでしょうか?」

エリアナが夫人に問いかけると、メイリー夫人はハッとして直ぐ様立ち上がる。

「主人の部屋に案内致します。」

気の所為ではない。夫人の歩くペースが早い。

夫人は伯爵様が心配なのだろう。私達を早く案内したいのが解る。

扉をノックし中に入ると、寝台には痩せ細り顔色の悪い伯爵様がいた⋯⋯。

「申し訳ない⋯⋯このような格好で⋯⋯。」

か細い声で謝罪される。

「体調が悪い中、申し訳ありません。早速お身体を診せて頂いても?」

エリアナが伯爵に聞くと、伯爵は頷かれた。

額に手を置くと、かなり高熱であるのが解る。目や口、脈を診る。

脈を診ると、前世で触れた事のない脈動があった。

じっと脈動を感じていると、エリアナの肩に兎(神様)が飛び乗ってきた。

『エリアナは解らないと思うよ。異界には無い病気だからね。魔力膨張だから。』

小さな声で、神様が教えてくれる。

エリアナは伯爵様の体を診ながら、神様の話に耳を傾ける。

『魔力膨張は魔力が体内に溜まる病気だよ。魔力を使えば使った分だけ戻る。

だけど、この病気の人は魔力を使うと倍に魔力が戻る。器に入りきらない魔力が行き場を無くして、体内を巡るんだ。それに耐えられず体調を崩す。』

神様の説明は解りやすく、エリアナにも直ぐに理解出来た。

では、治療方法は?

小さな声で神様に聞いてみる。

『魔力を放出させれば良いんだ。でも、魔力膨張者は上手く魔力を放出する事が出来ないんだ。今の状態だと、放出する事は難しいかな⋯⋯。体力無いしね。』

エリアナは神様の話を聞いて、頭の中で纏め上げる。

「伯爵様の病気は、魔力膨張です。魔力が身体中を巡り体調を崩す病です。」

エリアナの話に、メイリー夫人が問いかける。

「神官様は不治の病だと⋯⋯。病名があるならば、治療が出来るのですか?」

メイリー夫人はエリアナに詰め寄る。

「治療出来るかを少し調べたいので、時間を頂けますか?後、申し訳ありませんが一人になる場所が欲しいのです。」

(神様に色々聞かなきゃいけないし⋯⋯。)

「お部屋を準備してあります。そちらにご案内致します。」

侍女が呼ばれ、エリアナ達は一旦部屋から出て行く。

チラリと後ろに視線をやると、メイリー夫人とアーネット、ケイシーが伯爵様に縋りついていた。

エリアナの言葉に、僅かに見出した希望を喜んでいた⋯⋯。

部屋に案内され中に入ると、エリアナは神様に質問攻めをする。

『この国では余り知られていない病気だよ。この国って魔力に関して偏見が強いから、他国の魔力の研究とかに興味を持たいんだよねー。

属性にランク付けしてたりしてさ!

んで、魔力膨張者は魔法を使えば良いだけなんだけど、魔力過多なのに神官から自分の魔力じゃない魔力を注がれるでしょう?

他人の魔力って、放出出来ないんだ。だから、あの人には他人の魔力と自分の魔力が膨大にあるんだ!』

神様はエリアナの質問に答えをくれる。

「どう治療すれば良いの?」

エリアナの問いに、

『セドリックが神官の魔力だけを吸い取るんだよ。加護持ちだから、魔力操作は何でも出来るからね!』

神様が得意気に話す。が、可愛い兎の姿なので可愛いだけだ。

『セドリックが魔力を吸い取ったら、先ずは体力をつけなければいけないよ。そして、エリアナの薬草で体内の臓器を治療して。自分の魔力放出は、それからだね!』

エリアナは伯爵様を助ける手立てが出来た事にホッとする。

「神様。ありがとうございます。」

ニッコリ笑ってお礼を伝える。

兎(神様)はふわふわ浮いて、エリアナの前に来た。

『僕は役に立ったでしょう?

おにぎりを絶対に作ってね!たーっくさんね!!』

エリアナは呆れて口が開いたままだ。

セドリックが頰をツンツンして、エリアナの口を閉めさせる。

エリアナとセドリックの視線が会うと、神様のおにぎりへの執着が面白過ぎて笑い出した。

(伯爵様を助ける事が出来る。

神様には沢山おにぎりを作るからね!)

エリアナはアーネット達に吉報を伝えれる事に喜んでいた。