軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

22話 我が儘な神を利用しちゃいます

セドリックはエリアナと神から少し離れ、座り込んで二人を眺め始めた。

(あの様子だと、リアが勝つでしょうね⋯⋯。)

神が一生懸命にエリアナに話しかけている。

が、エリアナは顔を背けたままだ。

神が覗き込むと反対を向く、反対に神が覗き込めばエリアナはまた反対を向く⋯⋯。

終わらないやり取りをする二人が面白過ぎて、セドリックがクスクス笑い始めた。

「リア。話が進みませんよ。」

笑いながらエリアナに話しかけた。

笑われた事に少しムッとするが、セドリックの言う通りなので渋々と神に返事をした。

「質問だけど、私は物語に出て来ないモブよ?物語には関与せず、好きに動くけど本当にいいの?」

神が創った世界なら、勝手に動き回っていいのか確認をする。

『本当の物語の話も結末も知ってるから大丈夫。エリアナ達が作る物語を僕は楽しく見たいだけだからね。

リリアーヌと違って、エリアナの作る物語の方が楽しめそうだしね!』

神からリリアーヌの名前が出た事に驚いた。

「リリアーヌ様を知ってるの?」

『リリアーヌを転生させたのは僕だし、リリアーヌの知識が必要だったからね。

彼女の建築に関する知識は、あの時の辺境領には必要だと思ったんだ。』

神の答えに、世界を案じる気持ちに少しの好感が芽生えた。

『だって、悪役令嬢の領地が没落しかけるなんて物語が始まらないしね。』

エリアナは芽生えた好感を遥か彼方に放り投げた。

ジト目で神を見るエリアナの視線に気が付き、

『リリアーヌは転生を拒否したんだよ?乙女ゲームに興味ないから嫌だって。でも辺境領の話をしたら建築に携われると喜んで転生したんだ⋯⋯。』

ため息を吐きながら、神の説明は続く。

『やっと異世界の物語が見れると思っていたのに、リリアーヌのせいで乙女ゲームは始まらなかったんだ。

でも、リリアーヌを見て物語をそのまま見るより、同じ人物が違う物語を作るのも面白いかも?!って思ったんだよ。』

(神の我が儘で私達はこの世界に来たのか⋯⋯。)

話を聞いたエリアナは、大きなため息を吐いた。

そんなエリアナの気持ちが解らない神はキョトンとしている。

「物語通りでなくても文句を言われないなら、もう大丈夫です。私は私なりに生きていきますから。ダンジョンも攻略したのでもう良いです。」

神から早く離れたくて、結論を出した。

『あ!ダンジョン攻略の願いを僕が聞くよ?システムより豪華なお願いを聞いてあげるよ!』

ドヤ顔の神は、本当にイラッとする。

(一発で良い。殴りたい⋯⋯。)

でも神の提案は悪くない事に気が付いた。

「豪華なお願いをして良いなら、お願いしようかな?神様だから、きっと叶えてくれそうだし。」

エリアナの言葉に、

『そうだよ!神だからね。何でも叶えてあげるよ!』

(言質は貰ったわ!)

エリアナは心の中でガッツポーズをとる。

「学園のダンジョン攻略が始まるでしょう?でも、私達が先に攻略してしまいました。次にアイテムが出るのは、一年後になります。それだとヒロイン達に先に攻略した事がバレてしまいます。

ですから、偽物がドロップするようにして欲しいの。効果はなしで!」

一度ダンジョンを踏破すると、最終エリアのドロップ品が出るのは次の学年になるのだ。エリアナはヒロイン達の討伐にこっそりついて行き、偽物のアイテムを出すつもりだったのだ。

エリアナのお願いに神が頷いた。

『それくらい簡単だね。良いよ。』

「後は、鑑定スキルが欲しいの。私は薬剤師をしていたから、この世界でも薬草を使い薬を作りたいの。前世の薬草とこの世界の薬草の説明付きの鑑定スキルが欲しいかな?神様でも無理かな〜?」

エリアナは可愛くお願いしてみた。

セドリックは、笑ってはいけないとお腹を押さえつけ必死に笑いを堪えた。

『そんなの簡単だよ!』

そう言うとエリアナに神力をかけた。

エリアナがキラキラした光に包まれる。

『スキルを付けたから沢山薬を作れるよ。』

うんうんと頷いている。

「物語の強制力や補正機能があるなら、それも消して貰いたい。セドの意思を無理矢理捻じ曲げるような事はしないで欲しいの。」

エリアナはこの力だけは、存在するなら消したかった。

『セドリックが盗られるのが嫌なの?』

神の問いかけにエリアナが首を振る。

「セドの意思でヒロインを選ぶなら仕方ないけど、操られるのは違うと思う。強制力が切れたら、セドの意思は迷子になるわ。

人は自分の意思で選んで行くから、物語が楽しくなるのよ。辛い事があっても乗り越えて強くなる。自分で選ぶからこそ意味があるのよ。」

エリアナは神と目を合わせ、心からの気持ちで訴えた。

『お願いが多過ぎない?』

神は苦笑いしてエリアナに指摘する。

「ごめんなさい。神様でも沢山のお願いは叶えられないのね。神様は何でも出来るって勘違いした私がいけなかったわ。無理を言ってごめんなさい。」

しょんぼりしながら、神様に謝った。

『なっ!何を言ってるの?そのくらいの願いなら叶えられるよ!』

神の反論に、

「だって多過ぎるって⋯⋯。無理はして欲しくないから、大丈夫です。アイテムと鑑定スキルを叶えてくれただけで十分です。」

『文句を言っただけだよ!良いよ。全部叶えるから!』

神から放たれた光は、セドリックへと向かう。

セドリックは自分が輝き始めた事に驚いて固まっている。

『これでセドリックが強制力に引き込まれる事はないよ。』

エリアナの願いを全部叶えた神は、自慢気に腕を組み鼻息をフンッとした。

エリアナは(神様ってチョロい⋯⋯。)

不敬な言葉を心の中で吐いた⋯⋯。

でも、叶えてくれたのだから、きちんとお礼は伝える。

「神様。本当にありがとう。」

エリアナは深く頭を下げた。

エリアナから感謝された!

リリアーヌとの違いに神は感動している。

感謝される喜びを噛み締めていた。

「用事も終わったし、帰りたいから帰してくれる?」

感動していた神が、あっさり帰ると言うエリアナにジト目を向ける。

「何時迄もここにはいれないし、帰って夕ご飯を作りたいし、アイテムを使って検証しなきゃいけないし⋯⋯。やる事が沢山あるのよ?」

素で答えるエリアナに神から提案される。

『ここでそれを全部やれば良いじゃないか。そして、エリアナのご飯を食べてみたい。昨日のスープが美味しそうだった。』

神の我が儘を聞いていたエリアナだが、ある言葉に引っかかる。

「ずっと見てたの⋯⋯?」

『ダンジョンと神殿では僕も自由に姿をだせるから、エリアナが来るなら会いたかったし、ずっと見てたよ?』

エリアナは昨日のセドリックに構い倒された事を思い出し、両手で顔を覆いしゃがみ込んだ。

耳まで真っ赤にしたエリアナの側にセドリックが来た。

エリアナの行動が解らない神に、セドリックが話しかけた。

「昨日の夜、私達が仲良くしていた姿も覗きましたか?」

神はセドリックの言葉に察した。

『そんな場面は覗かないよ。』

その言葉を聞きエリアナは安心した。

したのだが⋯⋯。

「変な場面を絶対に覗かないでよね!」

怒るエリアナに神は何度も頷いた。

エリアナは神様を敵に回すよりも、味方(餌付け)にした方が良いと考え神様の希望通りこの空間で野営する。

「時間もあるから、夕食はスープ以外に何か作りますね。その前に野営の準備をしないと。」

エリアナとセドリックはマジックバックから野営のアイテムを出した。

昨日見ていたアイテムを目の前にし、興味津々の神様はふわふわ浮いたまま、うろうろとエリアナについて回る。

「邪魔なんですけど⋯⋯。」

神様を邪魔者扱いするエリアナ⋯⋯。

『ごめん。珍しい物だから気になって⋯。』

神様は邪魔をするつもりは無かったので素直に謝った。

言い返して来ると思ったエリアナは、逆に罪悪感が芽生える。

「セドの隣で一緒に見てて下さい。」

エリアナがセドリックを指差し、神様を追いやる。

一人でテキパキ動くエリアナは、手慣れていて作業が早い。

『エリアナは優しくて良い子だけど、怖いと言うか⋯⋯短気?』

神様がヒソヒソとセドリックに耳打ちする。

「そうですね。短気と言うより無駄を嫌いますね。これ以上話をしても意味がないとか、領地の為にならないとか。決断が早いのです。

因みに私の家族がエリアナを気に入っているのは、見た目に反して喧嘩っ早いのが好きみたいですよ?」

神様は『見た目あんななのに?』

と、驚いている。

「覗いていなかったのですか?」

セドリックに聞かれ、

『いつも見ている訳ではない。まー過去を覗けるから見てみるよ。』

「それなら私と二人で初めて一緒にギルドに行った日と、リリアーヌ様と会った日がおすすめですよ。」

セドリックが教えてくれた。

「エリアナの周りも面白い人ばかりです。エリアナだけでなく、色んな人を見ると暇潰しになるかと。」

神様は長く生きる。寿命はないのだろうと、セドリックは考えた。

暇だからこの世界を創ったのだろうと。

「せっかく世界を作ったのなら、広い範囲を見れば楽しめると思いますよ。」

神様はセドリックの気遣いに感動している。

良い子だ⋯⋯。

「エリアナが覗かれるのは、神様であってもやはり嫌なので。」

最後の言葉に神様はガックリするが、それか全てでは無いとちゃんと理解している。

『セドリックは良い奴だな。良し!セドリックに特別な贈り物をしよう。』

神様がセドリックの額に口付けを落とした。セドリックは体を流れる温かな魔力に意識が集中する。

『神の加護を授ける。』

セドリックから離れると、体を流れていた魔力が自分の魔力に馴染んでいく。

「口付けなんかして、どうしたの?」

エリアナは夕食の準備も全て終わったのでセドリック達を呼ぶ為に振り向いた。

視線の先には、神様がセドリックの額に口付けていたのだ。

『セドリックに神の加護を授けただけだよ?』

エリアナはセドリックをバッと見た。

苦笑いのセドリックが、

「らしいよ?」

と、答えた⋯⋯。

エリアナはため息を吐き、

「夕食が出来たから呼びに来たの。」

夕食と聞いた神様が一目散に椅子に座る。

テーブルには初めて見る料理が並んでいた。

エリアナが邸や野営で良く作る料理だった。

昨日と同じ野菜スープを作り、炒飯とチキンソテーだ。

『このお米の料理は異世界で見た事がある。』

神様は炒飯の皿を手にして見ている。

「チキンの骨を焼いて乾燥させて粉末にした物で味付けしてるの。胡椒があると良いけど、高いから今日は無しで。」

三人での夕食が始まる。

神様は所作は綺麗だが、とんでもない量を食べた。

出した量では足らず、泣きそうだったので追加で作った。

エリアナの料理の虜になった神様から、料理を作る為に呼び出される事になるが、この時のエリアナはまだ知らない。

神様まで寝袋に入り一緒に寝る。

珍しい光景の中、ダンジョン最終日が終わった。