軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

If影虎~ありそうな王道設定①

「レジー、リー。

あなた達は、ここで待っていてちょうだい」

「「ワン!」」

犬姿の俺をレジー、元教皇となったリリをリーと呼ぶようになったラビアンジェが、取引先に入っていく。

「ワンワン、ワワワン――」

――大公。

このままで良いのですか?

ラビ様へ邪なるドス黒い独占欲を発揮していたあなたが、犬となってただ寄り添うに留めるとは。

何を企んでいるのです。

俺と張り合う形で犬になったリーが、犬語で語りかけてくる。

「……」

特に話してやる必要もないので、リーを無言で見やった。

確かに全てを思い出すまでは、ラビアンジェを拉致監禁も辞さない勢いで嫉妬にまみれていた。

だが……俺は全てを思い出してしまった。

自らの前世である、影虎だった事を。

何故、同じ魂が新旧で同じ時代に存在していたのか。

これは俺の推測にすぎない。

だが、正しいと確信している。

影虎だった俺の魂は、ラビアンジェの魂と紐づいたまま、アヴォイドの介入によって過去へと飛んだ。

ベルジャンヌが生きていた、何十年も前の過去に。

そして誓約からラビアンジェが解放された事で、飛ばされた過去の時間軸でラビアンジェと魂の繋がりが消え、輪廻の輪に入った。

やがて影虎の魂は、 レジルス(俺) へと転生。

ただし転生する前の、 影虎(前世) の記憶は失っていた。

俺が前世の記憶を思い出したのは、ラビアンジェがアヴォイドとの誓約を解除した頃からだ。

少しずつ、何年もかけて思い出していった。

だから今の俺は、影虎として物心ついた頃から現在に至るまで、100年以上生きた記憶を有している。

とはいえレジルスとして数十年生きた後に、後天的に思い出したにすぎない。

それまでの性格が激変してしまう程ではない。

ただ、だからこそ待ててはいるのだろう。

ラビアンジェがベルジャンヌだった頃の、ほぼ唯一の心残りである キャスケット(家族) 。

その家族へ、ベルジャンヌが死ぬ事で与えた喪失感と、ラビアンジェへの執着が和らぐのを。

――仕方ねえよ。

レジルスだけの記憶しかなかった頃ならいざ知らず、月和が 影虎(俺) と飼ってた ポチ(愛犬) を見る度、憂いた表情をしてんのをずっと見てた記憶を思い出したんだ。

絶対あの時の月和は、置いて逝ったキャスケットを想ってたんだなって、 今世(今) になって確信しちまったんだから。

「ワフ……」

思わずため息を吐いてしまう。

時折、 前世の自分(影虎) のような言葉遣いと感情が、顔を出す。

犬の姿の間は、人の言葉を話せないから誰にもばれていないが。

ラビアンジェに影虎の事を伝えるのは、果たしていつになるのか。

少なくとも犬の間は、ラビアンジェが気づく可能性は極めて低いが……キャスケットの反応を見る限り、もしかすると今世では難しいかもしれない。

まあ、いい。

ラビアンジェが犬となった俺の毛をモフり、ヤバイ変態顔で啜りついてくる苦行と引き換えに、俺は自分の魂をラビアンジェの魂に紐づけている。

俺は、魂に干渉できる特殊スキルを持ったアヴォイドの祝福を受けた王族。

だからこそキャスケットにすら気づかせず、人知れず魂を紐づけられるのだ。

今世が駄目でも、来世では聖獣達より早くラビアンジェを見つけ出し、即刻捕獲し、場合によっては俺だけの世界を創って軟禁、んんっ、共に過ごす。

今世を終えた後は、もう誰にも遠慮などしてやるつもりはない。