軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

707.本日の会議は延期~エメアロル国王

「はあ……ミハイル君は、いつの間に資料をベリード公爵に渡したのだか。

とわうせ妹ちゃんに会う為に逃走するなら、資料など机の上にでも放り出しておけば良いのに」

ニルティ公爵の口調は、呆れ半分、感心半分といったところだ。

「「貴公(誰かさん)と違い、根が真面目なのです(よ)」」

対して女性陣はニルティ公爵を見ながら、はっきりと主張する。

「実は突然、私の執務室に黒犬が転移して現れ、資料を置いてドアから走って出て行ってしまい。

あの黒犬は……いえ、それよりも資料を確認するれば、ロブール公爵の署名がされておりまして」

ベリード公爵が黒犬と言ったあたりで、僅かに言い淀む。

そんな彼女をそれとなく見つめると、いつも通り薄化粧ではあるものの、目元の化粧が少しばかり濃い事に気づく。

「今日は来月の法案可決の為、まずは私達三公家当主と陛下とで、細かな部分のすり合わせをする予定でしたでしょう。

会議がなくなってしまいかねないのではと、慌てて来てみたのですが……ロブール公爵の方は、遅かったようですね」

「来て正解ね、ベリード公爵」

「そのようですね」

ニルティ公爵を不真面目だと暗に告げていた女性陣が、再び頷き合う。

「でもね、ベリード公爵……ふふ、やっぱり」

かと思えば、ジェナがニルティ公爵の手にしている資料を隣に並んで盗み見してから、微かに笑った。

そこで、おや、と思う。

僕達だけの会議資料をジェナが盗み見するのを、ニルティ公爵が黙認した?

ニルティ公爵がそれとなく僕を流し見てから、ベリード公爵と視線を交わらせる。

そこで僕は、ジェナとニルティ公爵の意図を、それとなく察し始めた。

「ミハイル君のこの資料を読む限り、しっかりまとめられている。

つまり我々は、この資料を読むだけで事足りるという事だ」

「つまり?

まさかとは思いますが、サボり……」

「まあまあ、年長者の話は最後まで聞くものだよ」

ニルティ公爵はベリード公爵の話を飄々と遮り、続ける。

「更に制度改革を煮詰めるには、ミハイル君が妹ちゃんに助言をもらってからの方が良さそうだ。

これはサボりではなく、戦略的会議延期だ」

「ねえ、ベリード公爵。

ロブール公爵も気づいていたんじゃないかしら」

ニルティ公爵に加勢するかのように、いや、きっと加勢する為に、ジェナが口を開く。

「実は私の目から見てもね、ここ数ヶ月の三公家当主は、根を詰めて仕事をしすぎていたと思うの。

不真面目な誰かさんですら、真面目に全会議を出席していたのよ」

「それは……まあ、確かに?」

ジェナの言葉に、微妙な顔つきで同意するベリード公爵。

その表情は、「でも普通はサボらずに会議へ出席するものだけど」と、ニルティ公爵に対して思っているに違いない。

けれどジェナとのやり取りで、僕はジェナとニルティ公爵の意図を正確に掴んだ。

「そうだね、ベリード公爵。

ロブール公爵がいないのに、無理に進めるのも良くないね」

「ですが陛下……」

「うん、今日のところは解散だ。

それにね……」

反論しようとするベリード公爵を、言いながら横抱きに抱える。

「えっ、ちょっ、陛下?!

え、あの……」

慌てるベリード公爵の額に、自分の額をコツンと軽く当てる。

「やっぱり……少し熱があるね。

化粧で隠しているけれど、顔色も悪い。

仕事は緩急をつけて、最低限の睡眠時間は確保するようにって、前にロブール公爵から注意されたでしょう。

ロブール公爵も、妹のエイナ子爵に言われた事があるみたいだけれど」

「そ、それは……」

僕の行動で真っ赤になったベリード公爵は、いや、僕の婚約者は、二の句が継げられずに黙りこんでしまった。

「ではでは、お互いに婚約者同士で時間を過ごそうか。

行こう、ティナ」

ニルティ公爵が隣のジェナに声をかけると、ジェナが華奢な腕を絡めた。

「それではお兄様。

来年にはお姉様となるベリード公爵を、労って差し上げて」

「うん、ジェナも楽しんで。

ニルティ公爵、頼んだよ」

「もちろん」

去って行く2人を、顔を真っ赤にして見送るベリード公爵は、僕の2つ年下で、婚約者でもある。

僕の婚約者は、仕事ができる。

けれどこんな風に婚約者として接すると、途端に可愛くなって、ギャップ萌えが凄い。

「僕の愛しい人。

やっと2人の時間が取れたね。

行こうか」

「……はい」

相変わらずの赤い顔と、微かな声。

実に愛らしくて、早く来年になれ、結婚したいと胸が高鳴る。

内心では身悶えしつつ、少しでも年上らしく振る舞いつつ、その場を後にした。