軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

693.この世界に留まる者達~国王side

「ヴェヌシス。

ラビアンジェの創った世界この世界にいる限り、時間の際限はないわ。

もちろん、アヴォイドも」

「ああ。

ずっと一緒にいよう、ヴェヌシス」

ヒュシスとアヴォイドがヴェヌシスの前に立つ。

すると未だにリコリスに巻きつかれ、座りこんだままのヴェヌシスが、ボロボロと涙を溢し始めた。

「……ごめ、ん……ごめん……」

くしゃりと顔を歪ませたヴェヌシスは、搾り出すような声で、謝る。

今のヴェヌシスは、何百年も生きた悪魔からはほど遠い姿だ。

まるで外見と同じ、10才程の子供に見える。

何度も謝りながら涙するヴェヌシスの、頬を伝って落ちた雫が、巻きつくリコリスの上に落ちる。

するとリコリスは雫に触れた部分から、霞のように輪郭が揺らぎ、霧散していった。

世界は、ただ白いだけの、何もない空間へと変わっていく。

「あなた達が生き別れになった頃の姿で、あなたが望んだようにヒュシスとやり直してもいい。もしくは大人の姿に戻り、人だった頃に得られなかった、姉弟で語り合う時間を持つのもいいと思うわ。時間は無限にあるもの。

好きになさい」

「やり、直し……うっ、うっ……ラビアンジェ……ごめん……本当に……ごめんっ」

公女が幼い姿の姉弟とアヴォイドにそう伝えると、ヴェヌシスが公女に謝り始め、嗚咽を漏らす。

ロブール公子が報告した、初代ロベニア国王ヴェヌシスが悪魔になった原因。

それは姉のヒュシスと生き別れる前の、11才の頃に時間を戻そうとしたから。

そうか、公女は全てを計算して……。

「そうだ、アヴォイド。

私の記憶を覗いて、お手本を見せてあげたでしょう。

あなたにセコンド役を任命するわ」

……公女よ、清々しい声で、ムードを台無しに……。

「そうね、アヴォイド。

悪役レスラーもやってちょうだいね」

ヒュシスも、公女の話にしれっと乗りつつ、自分の要望を押しつけるでない。

しかし余は思う。

ヒュシス(この先祖) にして、 公女(この子孫) だと。

「そ、そんな……ヒュシスにまた……」

ヴェヌシスよ、また、何だ?

何故(なにゆえ) 潤んだ目で、それも頬をほんのり赤らめ、ヒュシスを上目遣いに見た?

「…………くっ……善処してみよう」

アヴォイドよ、苦渋の決断的な雰囲気を出しまくっておるな。

そこは断っても良いであ……ろ、う?

ん?

何故、ヒュシスと公女が余の方を見ておる……。

「ないわね」

「そうね」

再び公女の言葉に、ヒュシスが同意して、少女2人が揃って頭を振る。

くっ、何故だ?!

余の中に、訳のわからぬ悔しさが生じておる?!

「ふぅ、ラビアンジェ。

そろそろ出よう」

ライェビスト、情緒が死んだ、魔法馬鹿め。

しかし余は、悔しさに加え、いたたまれなさも感じ始めた。

故に、どうでも良さげにため息を吐いた、魔法馬鹿の発言に全力で乗ってくれる!

「そうだな。

公女よ、頼めるか」

「そうね。

それじゃあ、ヒュシス、アヴォイド。

そしてヴェヌシス。

良い余生を~」

良し!

公女が言うだけ言って、ヴェヌシスには手をヒラヒラ振って、余達の方へと踵を返した!

「ほら、ヴェヌシス。

立って」

「ヒュシス……」

するとヒュシスがヴェヌシスに手を差し出し、ヴェヌシスがその手を取る。

途端、姉弟を中心に、様々な紫色のアイリスが芽吹き、次の瞬間には、この世界全てにアイリスが咲き誇った。

風が吹き、小川が流れ、空に雲が浮かび、影が生まれる。公女が歩んだ後ろに、そして公女が歩を進める度、あぜ道ができる。

「あの3体からの、そしてピヴィエラからの、最期の餞別よ」

振り返らずに告げた公女の瞳は、透明感のある煌めく藍色。

あの3体とは、恐らく虎、蜘蛛、亀の聖獣達だろう。

そしてピヴィエラもまた、聖獣だ。

風、水、土、聖の様々な 非(・) なる魔力が生み出し、模した自然だ。

公女の瞳の変化から、公女にもロブール家特有の瞳の力があったのかと……いや、少し違和感がある。

「ほう、魔法でミハイルの力を複製したか」

「その通りよ、お父様。

さあ、ジルガリム、お父様。

行きましょう」

公女が余達に、それぞれの手を差し出し、余達も手を取った。

すると余の視界は白い光に包まれ……。

「「「「「「「ありがとう、ラビアンジェ」」」」」」」

公女の世界に留まる者達、全員の声が聞こえた気がした。