軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

691.真実の名を告げる公女~国王side

「それじゃあ、アヴォイド」

公女の呼びかけに応じるように、アヴォイドと呼ばれた金色の粒子が、公女の2倍近くに大きく膨れ上がる。

かと思えば、その姿を露わにした。

アヴォイドは、毛の長い、立派な象牙を持った象であったのか。

アヴォイドは前へと進み、公女と向かい合う。

同時に、ジャビが動こうとしたが、公女が何かしら干渉したのであろう。

突如ジャビの足下に、白いリコリスが生える。

リコリスはジャビに絡みつくように伸びて、花開き、白銀の花粉を放つ。

途端、ジャビは口を 噤(つぐ) み、大人しくなった。

鑑定すると、花粉には聖獣の力を込めた浄化作用がある。

「ほう」

尚、隣のライェビストが魔法馬鹿らしい、愉悦の言葉を漏らした。

もちろん余は、見ざる、聞かざる、言わざるを貫く。

「良いのか?

お前だけは、ロベニア国建国より関わる、全ての者に復讐する権利があるはず」

「そもそも復讐になんて、興味ないわ。

そんな人生、楽しくないじゃない。

もしも最初から正してしまえるとしても、私は前世で旦那さんや家族と出会えなくなってしまうもの。

何よりベルジャンヌが自覚しないまま負っていた心の傷はね、月和の両親が癒してくれたのよ。

そしてベルジャンヌが得られなかった、誰かと人生を共に歩む経験は、影虎が生涯を通してさせてくれた。

家族を失って胸を痛める経験も、両親と影虎に教わった。

そんな月和を癒してくれたのもまた、月和の家族だったわ。

けれど魂を通じて【私】を支えて続けてくれたのは、アヴォイド。

あなたから始まり、ベルジャンヌからラビアンジェになった今に至るまで、聖獣であるあなた達よ。

そもそもベルジャンヌを直接虐げたオルバンスとスリアーダ、その他諸々には、ベルジャンヌだった【私】が言葉そのまま、鉄拳制裁しているわ。

ふふふ、今でもあの時の爽快感は忘れていないわ。

お兄様達が、いくらかの過去を変える前も、後もね」

公女が思い出したかのような、うっとりとした笑みを溢す。

確かに余も、アヴォイドが尋ねたのと同じ事を、かつて公女に問うた事がある。

あれはロブール公子達が、学園祭で過去に渡る前。

公女が異形の姿となった、自身の母親であるルシアナを浄化し、葬ったあの日だ。

あの日も公女は、余に同じ事を話しておった。

復讐は自分の手でしなければ、意味がないと。

そしてベルジャンヌは自ら、オルバンスとスリアーダを殴ったから、もう良いのだと。

ヒュシスは公女の笑みを見て、「そうでしょうとも。わかるわ」と言わんばかりの表情で、頷いた。

そうよな。

先程ジャビに何度も往復ビンタをして、公女から勝者を宣言されたのは、他ならぬヒュシスであったな。

「復讐心はそもそもないのだけれど、ベルジャンヌであり、ラビアンジェでもある私のご先祖様達のやり取りを見ていて、これはこれでスカッとはしたわね」

くすくすと笑う公女は、先程から口を開いて動こうとするジャビに、何かしら干渉しておる。

「だからね、アヴォイド。

後の事は、あなたとヒュシスに任せるわ。

どのみちもう二度と、あなた達は私の許可なくこの世界から出られない。

ここは私が創造した世界。

私こそが、この世界の神ですもの」

そう言って、公女はジャビの前に立った。

「ジャビ、いえ、ヴェヌシス」

公女がジャビの真実の名を口にする。

ジャビが驚きに目を瞠る。

それはそうだろう。

初代国王ヴェヌシスの名を封じ、ヒュシスを女神として祀った2代目のロベニア国王。

それらは全て、悪魔となった初代国王ヴェヌシスを弱体化させる為。

そして自らの魂ごとヴェヌシスを封じたヒュシスの力を増す為。

「そう、か……ヴェヌシス……俺の名は……ヴェヌシスだ」

ジャビは噛みしめるように、己の名を呟く。

しかし恐れていたような、つまり悪魔としての力を取り戻す、もしくは凶悪さを増す素振りは見られない。

公女の言う通り、この世界における公女が、絶対的な神故に、防いでおるのか?

それともヒュシスの魂が側に在る事が、何かしらの影響を与えておるのか?

いや、そのどちらもだと、余の勘は告げておる。