軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

659.赤子への懺悔~モニカ先代王妃side

「ロゴ入り小説の文章と、トワの書く文章。

よく似ていたわ。

バルリーガ嬢を追えば、トワにも繋がるか、もしくはバルリーガ嬢がトワもしれないと思っていたけれど……ロブール公女と繋がっているなんて」

「怪しいわね、ブランジュ。

何せ公女は、社交の場に出ないわ」

「そうよね、モニカ。

なのに社交界では若者を牽引し、デザイナー月影のドレスを身につけるバルリーガ嬢と秘密裏に会うくらい、親密。

学園での公女も、バルリーガ嬢と親交はなかったはず……」

「ええ。

私も何度か影の報告書を読んでいるもの。

公女はバルリーガ嬢だけでなく、高位貴族との交流は、ほとんどなかったはず。

なのにいつの間にか、影響力のある貴族と交流しているなんて。

なんだかベル……いえ、何でもないわ」

つい、ベルジャンヌ王女を見ているかのようと口を滑らせかけて、やめる。

「モニカ。

私もそう思ってしまったわ。

きっと公女が生まれた日が、王女の生まれた日だったから……」

言い淀むブランジュに、結局、私の意図をブランジュが読み取ってしまったのね、と思わず苦笑してしまった。

ロブール公女が生まれた日は、ベルジャンヌ王女が生まれた日。

そしてブランジュは、あえて口にしなかったのでしょうけれど、王女が白灰になった日でもある。

公女が生まれた日は、ロベニア国始まって以来の悪天候だった。

あの日も例年通り、私とブランジュで王女が生前暮らしていた離宮へ赴き、花を手向けていたから覚えている。

ロブール家に誕生した公女が、王女と同じ日に生まれていたと知った時は、もしやと期待した。

王女(初恋) が帰ってきたのではないかと……。

実は内密に、シャローナ夫人と連絡を取り、生まれたばかりの公女に会いに行ったのだ。

確かめずにはいられなかった。

会ってみて、四大公爵家の令嬢でありながら、恐ろしいほど魔力の少ない赤子だとすぐにわかった。

四大公爵家に生まれたからこそ、そんな魔力量である赤子の行く末を、心配もした。

同時に、王女のような魔力量でなかった事で、落胆した自分もいた。

王女は生まれた時から、魔力量が多かったから……。

王女の魔力量については、一部の人間なら大抵は知っている。

だから無意識に公女と王女を比較して、王女との決定的な違いに落胆していた。

ただ1つ。

公女の藍色の瞳は、金環がなくとも王女と同じく澄んでいるように見えた。

公女の祖母(夫人) と同じ色なのに、不思議と王女の瞳を彷彿とさせて、魅入られていた。

公女が藍色の瞳で、私をじっと見つめてくる内に、落胆などという身勝手さを赤子に向けた自分が、恥ずかしくなってしまった。

あの時は、それを誤魔化したくなったのよね。

夫人が少しの間、私に公女を任せて席を外した時。

腕に抱いた公女に向かって、つい王女への初恋と懺悔を、そしてブランジュへの想いを口にしていた。

私が内密に、それも突然に近いタイミングで、ロブール家を訪れたのもあり、部屋は人払いして、誰もいなかった。

とはいえ夫人がいつ戻ってくるか、わからない。

だから王女の名前だけは出さなかったけれど。

私の言葉を理解できるはずがない 公女(赤子) は、終始無言。

まるで聞き入っているかのように、つぶらな瞳でじっと見ていた。

あの日からほどなくして、夫人により、公女が生まれたと公表された。

けれど……今にして思えば、公女の母親であるルシアナが、強く拒否したのね。

高位貴族ならやりそうな、公女の生誕祝いがロブール家で開かれる事もなく……。

更にロブール家には、誕生日を祝うという概念が、昔からほとんどない。

息子に代を譲った 先代当主夫妻(夫人達) も王都から離れてしまい、公女は今も、社交の場から最も遠い、尊い血筋扱い。

まるで王女のようだと、こんな環境まで王女と似なくとも、と公女を哀れに感じてしまうのは、赤子だった公女を腕に抱いたからかもしれない。

「ところで公女。

クリスタに何を渡しましたの?」

バルリーガ嬢が、不意に話を変えた。

先ほどまでの少女達は、たわいない挨拶から入り、学園再開の目処がたった等々と、主にバルリーガ嬢が朗らかに近況報告をしていたというのに。

けれど顔を見合わせた私とブランジュは、今からが今日の逢瀬の本題だろうと頷き合った。