軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

645.渇望(欲)〜教皇side

『リリ、待っていて。

必ずまた会えるから』

姫様の幻影が私の為だけに紡いだ、 短い(最期の) 言葉。

変わる前と後で、私の 置いていかれた(捨てられた) という気持ちは、幾らか和らいだ。

置いていかれた(迎えに来てくれる) に変わったのだ。

一緒に 死のう(居よう) と言って貰えなかった事は、残念だったけれど。

だからと言って、姫様の 気持ち(言葉) を 知って(聞いて) も、自分は結局、姫様を求めて禁術に手を出している。

ただ……古い記憶のように、姫様に裏切られた気持ちは変わり、 会いたくて仕方なか(早く迎えに来て欲し) かった気持ちから、手を出していた。

もちろん更に心の根底にある、私から姫様を奪った人間達が、憎くて仕方なかった事は覆らなかったけれど。

そう、あの時までは……。

学園祭当日、ジャビが引き起こした事件。

ラビ様がどうやって丸く収めたのか、具体的には聞いていない。

しかし徐々に変わっていく過去の記憶に、ミハイルと黒犬、ラビ様のチームメイトが登場した事から、何をしたのかわからないまでも、過去に干渉した事を察するより他、なかった。

当然、結界の外で亡くなり、黒蛇に丸呑みされた国王が、まさか生き返ってくるだなどと、全くの予想外。

結界の外に避難していた者達の話から、国王以外にも死者が出ていたはずだった。

なのに事件が終わってみれば、死者は0。

国王も含め、死んだと思われた者達は、怪我すらしていない状態。

まあ、今はその事を記憶している者は、私を含めて国の中枢を担う、ごく少数しか覚えていないが。

何故なら事件の後、死者が蘇ったと歓喜する者達も、元死者だった者達も含めて、強制的に一箇所へと集められた。

ラビ様の無事な姿を確認したいと抵抗した私も結局、現れたアッシェ騎士団長に連行された。

そこに闇属性の魔力が豊富な 聖獣ドラゴレナ(親友) が現れ、その場にいる者達の記憶を書き換え、事件の核心部分を隠蔽したのだ。

私は 最恐の護衛(ハイヨ) のお陰か、親友の図らいかわからないが、記憶はしっかり残っている。

ラビ様と聖獣契約を結ぶ、藍色に金が散った瞳をした親友が介入した事で、ラビ様が事件の隠蔽を望んだ事、そしてラビ様の生存を察した私は、仕方なく教会へ戻った。

もちろん翌日にはラビ様がいるだろう、ロブール邸へ突撃訪問するつもりしかなかった。

最後に見た親友の瞳は、ラビ様の瞳の色。

だからラビ様は生きている。

しかしラビ様との別れ際に見た、華奢な体に走っていた白銀の聖印。

アレは姫様を白灰に変えた 元凶(聖印) と同じだった。

一夜だけでも待たねばならない状況に、深夜になっても寝られるはずがない。

あの日ほど、無心でハイヨに破廉恥本を読み聞かせた日もなかっただろう。

いつも通り、ハイヨが満足気に眠りにつこうとした時だ。

私の寝室のドアが静かに、眠っていれば聞き逃してしまうくらい控え目にノックされた。

『何事で……え……』

ドアを開けた私は、思わず戸惑いの声を漏らしてしまう。

当然だ。

ドアの向こうにいたのは……。

『遅くにごめんなさいね』

静かに微笑みながらも、申し訳なげな顔をして立つ……ラビ様だったのだから。

『ラビ、様……ご無事で……良かった……本当に……あ、聖印は!?

ラビ様、あの聖印は何です…………え……え?!』

ラビ様の無事な姿に安堵したものの、すぐに聖印を思い出した私は、ラビ様に詰め寄ろうとし、しかし一瞬で頭が真っ白になった。

ラビ様に……抱きつかれたのだ!

それも深夜だ!

深夜に若い姫様、いや、ラビ様が私の寝室に来て、ギュッと抱きついて、抱き締めてきたのだ!

どういう事、いや、どんな意味だ?!

まさか……まさか、ラビ様は私に夜ば……。

なんていう、不埒な考えが頭をよぎりかけた時。

『 た(・) だ(・) い(・) ま(・) 、リリ。

やっと言えたわ。

あなたは今も、私にとって可愛い 妹(・) のような存在よ。

長い間、待たせてごめんなさいね。

それから 最(・) 初(・) の(・) 時(・) に、待っていてと伝えられなかった事も、ごめんなさい』

こうして姫様と別れてから数十年間。

新旧の記憶を入れれば、もっと長く感じる期間、私の中で燻り続けたやるせなく、満たされなかった想いは、満たされた。

ラビ様の言った最初の時。

コレは恐らく、新たな記憶が出来上がる前の時間軸を指しているのだと思う。

どうせなら、姫様が死ぬ過去 を変えて(に抗って) 欲しかった。

けれどあの時の姫様が__ラビ様かもしれないが、変えたいと思ってくれた過去の、少なくとも1つに 私(リリ) へ伝える言葉があったのなら……。

「私は……姫様にとって 捨て置ける(価値のない) 存在ではなかった……」

想いを 形(言葉) にして発する。

もう、何度目かわからない。

口にする度、安堵と嬉しさが胸に広がる。

「これからは妹ではなく、頼りになる兄として……願わくば、男性として人生のパートナーに……」

以前は邪だからと律していた、ラビ様への 渇望(欲) 。

今後は欲を満たしていくと、こっそり心に誓っている。