軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

632.乱入者

__コンコン。

「すみません、長。

あの……」

内心、オルバンスが保管していたというベルジャンヌの肖像画は、誰がいつ描いたのかと首を捻っていた時、ノックがして、部屋の外から遠慮がちな声が投げかけられた。

月影の正体は性別も含めて、基本的に隠しているわ。

あえて人払いをし、ベルシュリーと2人きりでいたから、遠慮するのも当然ね。

「邪魔するぞ、ベルシュリー」

遠慮がちな声を遮ると同時に、無遠慮な しわがれた(お年寄りの) 声がして、ドアが不躾に開く。

もう1人、別のお年寄りも連れ立って、許可なく入ってきた。

「……シーン族長、チャド族長」

ベルシュリーは、軽く咎めるような口調だから、予定外のお年寄りが2人、乱入してきたのね。

なるほど。

このお年寄り達は、リドゥール国三大部族である、シーン族とチャド族の長達。

ベルシュリーがそれぞれの名前を呼びながら、それぞれに顔を向けて呼んだお陰で、どちらが誰かわかったわ。

きっとわざとそうしてくれたのね。

気が利くオジサマ、素敵か!

嗄れた声のシーン族長は、ヒョロリとしているわ。

頭がツルリとしている。

チャド族長は、筋骨隆々なお年寄り。

髪は短髪で、元からなのか、加齢のせいかわからないけれど、真っ白。

「心配するな。

お前はそのまま外にいろ」

恐らくドアの向こうで、遠慮がちに声をかけたベルシュリーの部下は、オロオロしているのでしょうね。

部屋には絶対に入るなと命じていた部下に、ベルシュリーが軽く手を振り、自らドアを閉めに行く。

その間にも2人の族長達は私の対面に、テーブルを挟んで許可もなく座る。

「月影、2人は君の正体を明確には知らなかったが……」

「そうね?

今は認識阻害の魔法もかけていないし、確証を得たという事かしら。

さすがに私の髪色は目立つもの」

後から来た2人の長達は、私を厳しい目で見る。

ベルシュリーと違い、歓迎されているとはとても思えない。

「ふん、やはりな。

出来損ないと噂されるロブール公爵家の末娘が、月影だったか」

「あらあら。

はじめまして。

リュンヌォンブル商会より派遣された月影よ」

特に立ち上がる事もなく、筋骨隆々な方の長へと言葉だけの挨拶をする。

「平民の所作じゃな。

それは物を知らん、ロベニア国の公女故か。

それとも己がロベニア国では高い地位にあるからと、儂らを馬鹿にしておるのか」

「まあまあ。

今の私は月影として、フィルン族長に会いにきているわ。

基本的に正体は明かさず、デザインのみに専念するデザイナー。

それが月影であり、フィルン族長も同意して人払いをしてくれていた。

なのに突然、人が乱入してきたばかりか、挨拶も自己紹介もせず、乱入者が睨みつけてくる。

これでは対応に困るというものよ?」

言外に失礼なのは、そちらだろうとツルリな頭皮の長へ指摘し返す。

もちろん、どちらにも淑女らしい微笑みを投げておく。

「こちらがシーン族長。

そしてこちらがチャド族長だ。

月影。

我らが呼びつけておいて、すまなかった」

「ふん、デザイナーとして仕事を引き受けたんじゃろう。

なら月影の方が礼を尽くすべきじゃ」

「シーン族長。

彼女は月影としてここへ来ているし、条件つきとは言え我ら三大部族は、ロベニア国への留学者をリドゥール国より送り出すと決めたはず。

わかっているだろうが、月影は……」

私を睨む族長2人の間に、わざと割って入るベルシュリー。

族長達を紹介し、私への謝罪はもちろん、族長達へも注意していく。

イケオジ!?

好物よ!

帰ったらオジサマ推しの小説を書きたいわ!

思わずベルシュリーの勇姿に、うっとりとした目を向けてしまう。

ベルシュリーは祖父に似たのか、スラリとしながらも男性ならではの筋肉がついているの。

ベルジャンヌからすれば、異父弟!

つまり弟よ!

弟を推す姉になっても良いかしら!?

「月影、何故そんな狂気を感じる眼差しを……しかも興奮気味?」

「うふふ。

有り寄りな有りの考えに、ついうっかり支配されているだけよ」

ベルシュリーがそれとなく、腰掛けた椅子をテーブルから離したわ?

大部族の長なのだから、ここはズズイッと男らしく、いっそ 私(姉) の隣にでも座ってくれて構わないのよ?