軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

614.アシュリーの手紙〜ラルフside

『ねえ、君は何を恐れている?

エビアスが魔法呪になりかけている云々はともかく、悪魔が身近にうろついていたのは、実はずっと前から気づいていたんじゃない?

なのに君が何も手を打っていない。

どうして?』

『君は、あえて見逃した……違うな。

気づいた事自体、かなかった事にした?

ああ、もしかして君、悪魔の存在自体を感じ取ったのは……』

この後、国王は先代国王を通して悪魔の存在に気づいたと察せられたわけだが……国王が恐れて悪魔の存在を隠蔽した理由に思い当たる。

国王は最愛と呼んでいたアシュリーを、いわゆる生贄のように扱い、王位を得ようした。

それが露呈するのを恐れて……。

俺が流民達の船に乗る際、王女が目覚めさせるのを船の上から見ていた。

王女に記憶を封じられる前のアシュリーだ。

アシュリーは明らかに怯え、王女の存在を否定し、しかし王女に感情的にならないよう、なけなしの理性を働かせていたように思う。

酷い母親ではないかと、実は船の上で人知れずアシュリーを責めていた。

王女を傷つける手紙でも書いているのかと危惧し、目がかなり良いのもあって、書く内容を僅かに盗み見ていた。

もちろん普通の視力のミハイルには、文字を読めなかったと思う。

俺もハッキリ読めた訳じゃないが、手紙の内容はあらかた理解した。

【あなたの裏切りに気づいていました。

かつてあなたを愛した心は、同じだけの深い憎しみに変わってしまった。

あなたが憎い。

あなたを愛し、助けを待っていた私自身も、あなたに呼ばれて嬉しいと感じさせた私の名も……全てが憎い。

だから私は、全てを忘れます。

これまで生きてきた全てを。

あなたが呼んだ名も全て。

さようなら】

恐らく、こんな風に書かれていた。

今ならわかる。

アシュリーは無体を強いられただけでなく、愛していた 婚約者(国王) の裏切りに気づき、心を壊していたんだと思う。

王女と血の繋がった母親であっても、王女を愛するべきだと……俺は言えない。

「国王はスリアーダが率先してアシュリーを貶めたような体を取らせながら、隠れて共謀していたようなものよ。

アシュリーはきっと……気づいていたんじゃないかしら。

だから余計、病んでいったのでしょうね」

公女の口調も表情も、さっぱりとしている。

母親はもちろん、国王への恨みすら感じられない。

「うああ!

肩がっ、肩がぁっ!」

諸悪の根源たる国王が、大声で騒ぐ。

精神が弱体化しているからか、痛みを我慢する事ができないのだろう。

何かを蹴り飛ばしたようなモーションの王女を見て、国王の肩を思いきり蹴り飛ばしたようだ。

「お許しを!

父上、許して下さっ、んぐぅっ」

痛みに仰け反って露になった口元を塞ぐように、王女は再び踏みつける。

「んー、ふっ、ふっ……」

「自分の祝福名をベルジャンヌの祝福名へと捧げて、忠誠を誓え。

そうすれば お(・) 前(・) の地位を守るのを許してあげる」

王女が畳みかけるように、国王に強烈な威圧を放ちながら告げた。

確か時間がないと言っていた。

王女はこの後、きっとエビアスの元へ行き、エビアスに取り憑いた 全ての元凶(悪魔) を消滅させるつもりか?

だとすれば、阻止しなければ。

稀代の悪女は、悪魔を呼び出し、悪魔と共に滅せられた。

口伝と史実が違っていても、王女が死ぬ要因は悪魔。

これだけは間違いないはず。

だが……。

「王女はどうして真実を明らかにしろと言わない?」

生まれた疑問が口を突く。

これでは王女の虐げられてきた半生が報われない。

真実を知っているだろう公女を見る。

しかし苦笑するのみで、答えは教えてもらえない。

「うっ……本当に……」

「ああ、約束は守る。

お前が私への敗北を認めて祝福名を差し出すなら、お前の息子を悪魔から助けてあげる。

ただしお前は死ぬまで王として、健全な次代が育つまで王を止める事は許さない」

健全な次代……この時代の王太子、エビアスとは言わないのか。

俺の時代の国王、ジルガリム=ロベニア。

きっとあの人が、健全な次代に当たるのだろう。